ライオンの牙
まだ少し心配は残るが、警戒しながらであれば姉貴たちを通してもいいだろう。セイもおそらくそう判断したのだろう。セイはライオンに背を向け、ドアを開けた。
「皆様、ライオンが通ってもいいと言っているので、行きましょうか。」
ライオンを警戒しながら、ぞろぞろと入ってくる姉貴たちに庇うように背を向ける。最後に、姉貴がこの部屋に入ってきた時だった。ライオンが大きな口を開けて姉貴に向かって飛びかかって行ったのだ。そのスピードは速く、それに咄嗟のことだったのもあって、俺が足を一歩踏み出したときには姉貴の目の前まで来ていた。
姉貴とライオンが重なって見えた。その時、大きな銃声が響いた。
そして、ライオンが壁に突っ込んだかも思うと、その横に姉貴が立っていた。倒れたライオンの額には、穴が開いていた。
「すごいです、姉さん!襲いかかってきたライオンを撃ち、その上避けれるなんて!」
セイが手を揃えて満面の笑みで姉貴を褒めた。姉貴はそれに答えるようにセイの頭を撫でた。
いや、これは本当に予想外だった。姉貴があそこまで成長していたなんて。姉貴に近づけたようで嬉しいが、力を過信して危ない目に遭わないといいが。俺が心配なのはそこだけだ。
「大丈夫か、姉貴。」
セイもまだまだだな。褒める前に心配をしてやらないといけないというのに。
「ええ。大丈夫よ。ありがとう。」
姉貴のもとへ駆け寄ると、姉貴は俺の頭も優しく撫でできた。少し恥ずかしいが、見られていても姉貴に優しくしてもらえるのは幸せだ。
「それにしても、大丈夫なんじゃなかったの?」
姉貴が不思議そうにライオンの前に立って首を傾げだ。それに関しては俺の判断ミスだ。ライオンを先に倒して仕舞えば良かったものを。
「すまなかった。」
「え、大丈夫よ。気にしてないわ。」
俺たちが会話を繰り広げる中、他の人間たちは意味がわからない、とでも言いたげにポカーンと口を開けていた。
ライオンの頭からは赤い何かが漏れ出していた。こんなところまで再現してあるのか?リアルだなあ。こういうリアルさは別に求めていないのだが。
「お嬢様、服は汚れていませんか?」
先ほどまで言葉が出なかったくせに、ウメはまたヘラヘラと笑って姉貴に話しかけていた。
「あー。うん。大丈夫そう。」
それに姉貴も笑顔で答えた。




