目覚めた女の子
足音を立てないようにしながら転がっている女の子に近づく。あと2歩、というところまで来て、ようやく女の子は私に気がついたようだった。
「ようやくお目覚めかしら?」
なるべく恐怖を与えないよう、冷たい目にならないよう注意したらしいが、無駄だったらしい。その女の子はもがき、私から逃げようとした。
「な、なんでも話す!なんでも話すからあ!」
ああ、これでは私が悪役ではないか。本当に悪いのは、全てお前たち悪なのに。だから、敵と話すのは嫌いなのだ。
「話す必要はないわ。私は知っている。あなた達の正体ぐらい、簡単に分かったわよ?」
顔を真っ青にして、恐怖で私の方を見れない哀れなお人形。私たちはアンドロイドというお人形でも、心はお人形ではないと思っている。けれど、可哀想に。この子はホワイトのお人形なのね。私たちに殺されてもいいと思われている、哀れなお人形。まあ、もしかしたら私たちに勝てるだなんて……ふふふ、思っていたのかもしれないけれど。あら、勝てないとは言っていないわよ。言ってはいないけれど、人間には少し無理があるかもね。あ、集団でなら可能性があるかも。
「それ、ゆりがやったのか?」
振り返ると、ご主人様が呆れたような顔をして女の子を指差していた。
「そうですね。正確には双子の人形が、ですが。」
別にそんな呆れたような顔をしなくても。おかしなことはしていないのだし。
後ろからかちゃり、と音がした。鉄が擦れ合う音だ。後ろの女の子が暗器でも触っているのだろう。ヒュッという音がして、私の背中に向かってナイフが投げられた。それと同時に私は振り返り、小さなナイフを受け取る。こんなもので私を殺そうだなんて、なめられているのかしら?
どうやら口を使って投げたらしい。ナイフの持ち手にわずかにだが唾液が付着していた。
「何がしたいのかしら?」
今度はしっかり睨んだ。もうニ度と反撃しようなんて思わないように。私だけならまだしも、ご主人様もいるのだからあまりおかしなことはしないで欲しいものだ。
「本当にな。」
ご主人様の低い声がこの白い部屋に似合わず響いた。
「ゆりは俺の物だ。手を出すな。」
メイドである以上、確かに私はご主人様の使用人だが、給料ももらっていないし、そもそも物扱いされたこと自体に腹が立ってくる。でも、私を庇ってくれたことには変わりない。今回は許してやるとしよう。
「さあ、行きましょう、ご主人様。」
先に進もうと、足を踏み出した時。女の子が、
「待って!」
と大きな声で叫んだ。
「……え?」




