不安定なこの気持ち
さらに地下深い道を着実に進んでいった私たち、ご主人様と、ヒカリ。罠の道はそこまで長くは続いておらず、すぐに壁にたどり着いた。
「ドアがないな。」
ご主人様が壁を指でつーと、撫でながら訳が分からない、というふうに眉をひそめた。
目を閉じて、壁もコンコン、とノックをしてみた。
「何をしているんだ?」
何をしているかだなんて、みていたらわかるだろうに。ああ、やっぱり高校生ってまだ子供なのね。
「ご主人様は、探偵になりたいんでしたっけ?」
確か、事前に読んだ資料にはそう書いてあったはず。探偵になりたいのなら、このくらいの知識はないとやっていられないだろう。
「そうだが、何か?」
むすっとした顔でご主人様はそう返してきた。さっきのことで少しは私のことを認めてくれたかも、なんて思っていたが、どうやらご主人様はまだ私を軽蔑し、嫌っているらしい。まあ、人殺しの私がどうこう言えた筋合いはないので、放っておくしかないのだが。
「こういう部屋には、大抵……っと、あったあった。」
壁の一番下をじーっとみていると、うまく隠された押せそうなボタンを見つけることができた。人差し指で、カチッとそのボタンを押す。
すると、ゴゴゴゴ……ゴゴゴゴ……と、音を立てて、壁が持ち上がった。その先には、階段がある。
「仕掛けがあるものなんですよ。」
誰かより先をいくのは、やっぱり楽しいものだ。たとえその相手が、人間だったとしても。なんだかご主人様に勝てたような気がして、少し嬉しい。どうしてだろう?ざまあみろだなんて、思ってはいけないことなのに、どうして思うのだろうか?私は、アンドロイドのはずなのに。ああ、なんだか最近、アンドロイド、という単語に振り回されすぎだなあ。
「ゆり?」
「はい。」
後ろで一つに束ねられた髪を、くるくると巻く。どうしてだか、不安な気持ちになってくる。あはは。なんでだろうな。早く、家族に会いたくなってくる。不安だ。その中に悲しみも隠れていて、恐怖がひっそりと顔をだしていた。
「さっさと行くぞ。」
「はい。」
開けたのは私なのに、どうしてご主人様が先に入るかな?罠が仕掛けられていたら大変なのに。
「私が先導します。危険ですので。」
走ってご主人様の前に出ると、ご主人様は嫌そうな顔をしながらも従ってくれた。
さっきから気持ちが不安定だ。本当に勘弁して欲しいものだ。が、不安になるのはあとだ。今はこの人を守らないと。そう思えると、なんだか少し前向きになれた気がした。




