優しさの種類
穴に落ちず、取り残された俺たち3人は、少しの間、そこで休憩を取ることにした。なんて呼べばいいのかよく分からないこの女の子が大声を上げて泣いていて、とても前に進める状況ではないからだ。
「大丈夫か?えーと、あー。」
本当になんて呼べばいいのか、俺にはよく分からない。そもそも、女性と接する機会なんて家族以外今までほとんどなかったし、女の子の名前を呼ぶ機会なんてもっとない。どうやって接すればいいのかも、全然分からなかった。優しくしろって姉貴に言われたのに、これじゃあこの先大変だな。
「楓……です。楓って……呼んで、ください。」
途切れ途切れになりながらも、かえではそう話してくれた。名前が楓なのは知っているんだがなあ。
「あー、わかった、楓。それよりそろそろ泣き止んでくれないか?」
突然変なところに連れてこられて、幼なじみもいなくなって、しかも、落としてしまったのは自分で、そのうえ暗殺者と名高い奴らと一緒、だなんて、そりゃ泣きたくもなるわな。気持ちはわかる。けれど、敵地で泣くのはできるだけやめてもらいたいし、こんなところで時間を食っていたら姉貴に怒られちまう。でも、まあ。優しくしろって言ったのは姉貴だから、許されるかもしれないけれど。俺としてはさっさとこんなところおさらばしたいわけで。そんなにうまくいかないかもしれないのはわかってたけど、こんな理由で足止めは嫌だな。
「楓様。泣き止んでください。」
そういうセイの顔は厳しい。おいおい、優しくしろってさっき言われたばっかりなのによ。
「ここは敵地です。泣いている場合ではありません。」
セイはそう続けた。楓の肩がびくっと上がる。そりゃ怖いだろう。暗殺者に怒られるなんて、そんなにない経験だろうし。
「おい。セイ、その辺に…。」
「ありがとうございます。すみません。」
驚いて楓の方を見ると、楓は地面をぐいっとけって立ち上がっていた。溢れ、こぼれおちる涙を必死に拭って、楓は底に小さくも堂々と立っていた。
「兄さん。優しさには、いろいろあるのですよ。」
確かにそうかもしれないけど。俺にはよく分からないな。厳しさも優しさってことか?つまり、親が怒るのは愛してるから、みたいな?うん。なんとなくわかる気がしてきた。……わからない気も、するが。




