表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒のメイド  作者: 藤本 寛那
35/80

お礼と謝罪

 空間はまっすぐ続いている。どこにつながっているのかは、私にもわからない。音の反響で、かなり奥があることくらいはわかるが。

「行きましょうか、ご主人様。」

私が安心してもらおうと笑顔でそう声をかけるが、ご主人様は返事をしてくれることはなかった。それでも、ご主人様が危険な目に遭わないように先導する。人の手で仕掛けられたものは、たいてい音で分かるものだ。少し空洞があったりして、すこし音の反響が違う。

「あ、もう少しこちらに。罠があります。ああ、そのボタン、押さないでくださいね。」

人にあれこれ言われるのは性格に合わないのか、

「ああ。」

とだけ言って下を向いてしまった。まあ、これでも最初に比べれば丸くなった方だろう。ずっと私を睨んでいて、今にも噛みつかんとしていた頃よりは、ね。

罠は至る所に仕掛けてあった。これならいちいち声をかけながら歩くよりも、ご主人様を抱えて歩いた方が早いのだろうが、そんなことでご主人様のプライドを傷つけるわけにはいかない。私も丸くなったものだ。昔なら、人のことなんて気にせず、ちゃんと無事なら、私の正義が果たされるならそれでいいと思っていた。それで私の存在意義が満たされるのなら、それでいいと。そんな私が、誰かを守りたいと心から思えただなんて、角が取れてきた証拠なのだろう。

が、それは私がアンドロイドであるということに反している。私がアンドロイドなら、こんなこと思ったりしないはずなのに。一体、私は何者なんだろう?アンドロイド?人間?……アンドロイドである、はずなのに。

「……ゆり。」

ご主人様が私に声をかけてくるなんて。また、文句がないかだろうか?上から落ちたとき、うまく受け止めてあげられなかったからなあ。

「……ありがとう。そして、すまなかった。」

「……え?」

ご主人様の口から、そんな言葉が出てくるとは、夢にも思わなかった。ご主人様は私を軽蔑している。それが全てだと思っていたから。

「ご主人様は、私を軽蔑していらっしゃるのでしょう?どうしてお礼なんかいう必要があるというのですか?」

疑問でならなかった。ご主人様が私を軽蔑しているのなら、お礼を言う必要も、謝る必要もないのに。どうして私なんかに謝るのだろうか?正義のために人を殺した、私達に。私、私達は……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ