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黒のメイド  作者: 藤本 寛那
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報告

 だんだんと足音が近づいてくるのがわかる。私達3人のアンドロイドは、五感が人間より非常に優れているため、小さな音でも聞き取ることができる。足音もそのうちだ。この足音は走りながらこちらに向かっている。けれど、警戒する必要はないだろう。この足音は、聞き覚えのある足音だ。

 鍵をかけておいたはずの玄関の扉がバタンと大きな音を立てて開いた。

「姉貴!」

大きな声を荒げながら入ってきたのは、私の弟、ヤミだ。ヤミやセイの足音はほとんどしない。聞こえてくるのは、空気をうまくかいて早く前に進もうとしている音だけだ。

ガタン、という音がして振り返ると、ご主人様が椅子から転げ落ちていた。知らない男が飛び込んできて、驚いたのだろう。

「お、お前……怪盗の悪魔、か?」

腰を抜かしたご主人様が震える手でヤミを指差す。こんなことで腰を抜かしていてはこの先どうやってやっていけばいいのやら……。

「お、この間の探偵もどきか。」

そういうヤミの息は、きちんと整っていた。これも私たちが人間でない証拠だ。そういう証拠は隠せ、といつも言っているのに。

「……た、探偵もどきじゃない!」

いまだに立ち上がれないまま、ご主人様はヤミに文句を言ったが、

「それより、姉貴。」

ヤミはそれを無視して話し始めた。

「俺の護衛対象がさらわれた可能性がある。」

冷静な、いや、少し冷たい声だった。さらわれたことに対して、なんとも思っていないような。ここまで急いできたのも、義務感があったから。そんな気がする。まあ、昨日初めて会った人間だ。対して大切に思っていなくても仕方がないのだが。

「護衛対象?誰のことだ?」

やっと落ち着いてきたご主人様には、私たちが何を言っているのかが分からないようだ。

伝えてやるべきなのだろうか?伝えずに、私たちだけでご主人様の両親の救出を行うのも、また良いのかもしれないが。

「教えてくれ。」

……巻き込んでやるべきなのかもしれない。ご主人様が、この青年が、それを望むのなら。教えてくれ、と望むのなら。一緒に進みたいのだと、望むのなら。

「……良いでしょう。」

私がそう言って、ご主人様に向き直った時、ご主人様はごくりと唾液を飲み込んだ。緊張しているのだろうか?

「さらわれたかもしれないのは……ご主人様のお父様でございます。」

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