可愛らしいお嬢様
疲れ切ってしまっているお嬢様に合わせて、少しゆっくり歩く。お嬢様の歩くスピードが速くなってきた頃には、ご主人様の家まであと少し、というところまで来ていた。
「もう少しで着きますね。どこか寄る場所などはありませんか?」
お嬢様の方を向くと、庭に植っている木と、お嬢様が重なって見えた。今日のお嬢様は緑のワンピースを見に纏われているからだろうか?なんだか見入ってしまう。
「そうですねー。……うん、特にないです。」
お嬢様は元気な声でそう言って笑った。その足取りは軽やかで、どこか楽しそうだ。お嬢様が楽しそうにのは喜ばしいことなのだが、一体なにがそんなに楽しいのだろうか?
「どうかなさいましたか?」
穏やかな声に聞こえるよう、声を調節しながらお嬢様に話しかける。お嬢様はこちらを向いて、反応してくれたものの、どこか様子がおかしい。なんだか、もじもじしているというか……何かを恥ずかしがっているようなのだ。何か、話しづらいことをきいてしまったのだろうか?
「あの、その……え、へへ。」
話そうとしているけれど、話せない。見ている方も、少しもどかしくなる。
「じ、実は、そのお……。」
なんとか話そうと頑張ってくれているようだ。必ず話さなければならないほど必要なことではないのなら、別に話さなくてもいいのではないのだろうか?私ならきっと……。
「ゆ、ゆりさんに探との友情を認めてもらったようで嬉しかったといいますか……。」
認めてもらった?ああ、さっきのことか。さっき、私がお嬢様はご主人様に信頼されている、と言ったことか。そんな言葉が嬉しかったということは、お嬢様は相当ご主人様のことが好きと見た。まあ、暗殺者と分かっている私達に会うのについて行ったくらいだ。ご主人様のことが大切なのは間違い無いだろう。
「じゃあ、お嬢様の大好きなご主人様に会いに行きましょうか!」
私がそう言ってにかっと笑うと、お嬢様は顔を真っ赤にして固まってしまった。
「ゆ、ゆりさん!」
やっと声を発したかと思うと、今度は私に向かって頬を膨らませてきた。なんで可愛いんだろうか、なんて心の中で悶えながら、足を前に進める。
「だって、好きでしょう?ご主人様のこと。」
私がそういうと、お嬢様はさらに顔を赤くしたかと思うと、その可愛い顔を隠してしまった。
「す、好きですけどお……。」
写真を撮って、ご主人様にも見せてあげたいわね。