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黒のメイド  作者: 藤本 寛那
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過去

 やっぱりおかしい。この私がミスをするなんて。どこかに異常があったとしか考えられない。

用意した朝食を片付けながらヤミとセイに通信を図る。

「聞こえる?」

口を動かすことなくそう発する。通信機は、体内に内蔵されているのだ。

「聞こえますよ。」

「おう。どうした?」

返事は思ったよりもすぐに返ってきた。自分に何が起こっているのかもよくわからないまま、ゆっくりと何があったのかを話す。

「感情の機能に何か問題があったのかもしれませんね。すぐに直しましょう。」

「治せんのか?いま、3人とも忙しいだろう?」

2人の間で会議が繰り広げられる。それはまるで言い争っているかのようにも聞こえた。

「とにかく、セイ。こっちに来れる?」

直せるのなら直しておかないと。

「はい。すぐ行きます。」

私たちは故障すれば直せる、機械、アンドロイドなのだから。


 私達の記憶は、地球が生まれたところから始まる。この記憶は、おそらく後から付け加えられたものだろう。本当の私はただの女の子だった。けれど、それはもう100年以上昔の話だ。

 私は普通の家庭に、普通の女の子として誕生した。普通に生活し、15歳になったある日。2人、セイとヤミと出会った。2人は、1年前に作られたというアンドロイドだった。その時代の科学では考えられないほど2人は素晴らしい出来だった。どれだけ見つめても、人間にしか見えなかった。

 2人は言った。

「2人目の主人になってほしい。」

2人を作った主人は2人を作り終えた後、息絶えたらしい。私がいいよ、と答えると同時に、私の意識は途絶えた。気絶させられたのだ。

 目が覚めると、すでに私はアンドロイドにされていた。人間の部分が残っている部分は、一つとしてない。記憶も移されているだけで、脳さえも、ない。なぜなら、私はコピーだから。本体は、人間として、普通に暮らしている。2人は言った。もう二度と主人を失いたくないのだと。2人の記憶が頭の中に植え付けられた私には、2人に何もいうことができなくなっていた。

それ以来、2人は私のことを姉と呼び慕ってくれるようになった。もう家族や友達と一緒にいられなくなったのは寂しかったが、本体がいることによって家族や友達が悲しむ羽目にならなかったのはせめてもの救いだろうか?

そして私は正義に生きるため、自分を見失わないため、世界中の警察達の協力者として活動し始めた。もちろん、それなりの報酬はもらう。怪盗や双子の人形も、警察に協力するために必要な姿だったのだ。

「ゆりさん?」

おっと。回想もこの辺りにしておきましょうか。

「どうぞ、ゆりとお呼びください。」

胸元の黄色いリボンを指に巻きながら、私はにっこりと優しい笑顔を作った。

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