9 いざ、冒険者ギルドへ2
村を抜けると、しばらくは危険の少ない草原が続く。
私達が向かっているのは、ここらではそこそこ大きな町《リジェール》だ。
地方都市といった言葉が似あう町だと私は思う。
私が息を切らして下を向いている横では、同じく蒼い少女が空を見ていた。
村を出てからしばらく走ったが、どうやら、疲れているのは私だけらしい。
そこで私は、疑問に思っていたことをアクアに問う。
「そういえば、アクアは母さんと何を話してたの?」
「ん、お転婆な子だから、よろしくねって」
お母さんか!
って思わず突っ込みそうになるけどお母さんだった。
でも心配されることに対して悪い気はしない。
「私のお母さん心配性なのよね」
「でも、優しい」
その通りだなと思っていると、アクアと目が合って、私達は思わず吹き出してしまう。
「じゃあアクア、これから私の事をよろしくね」
「ん、まかせといて」
そんな風に話しつつ、どんどん歩いていると、どうやら道は半分を過ぎたようだ。
遥か彼方ではあるが、件の町と思われる姿が確認できる。
あれが《リジェール》かぁ。
まだほとんど見えていないが、私はそう感銘を受ける。
実は、私は村から出たことがないのであった。
だから、この瞬間に胸を躍らせて呆けてしまうのも、当然と言えば当然なのだ。
そんな気を抜いたときにこそ、危機は訪れるものだ。
「お姉ちゃん、危ない!」
アクアは咄嗟に私に飛びつき、私を守った。
何が起こったのかと疑問に思う暇もなく、私にはそれが理解できた。
草原に生息しているD級モンスター、メタルホーンラビットが私の前を通り過ぎたのだ。
角だけでなく、全身が銀色に、不気味に光る魔物だ。
モンスターは別名マモノとも呼ばれ、その危険度はSからFで分けられている。
それぞれの冒険者による討伐適正は、F~Eが駆け出し冒険者、D~Bが一人前冒険者、A~Sが一流冒険者といった具合だ。
中にはSS級やEX級といったマモノも存在するが、どれも神話や噂話の域を出ないので割愛しよう。
ところで、私がいま対峙しているメタルホーンラビットは、レアモンスターなのだ。
得られる経験値も多いし、取れる素材も有用なものが多い。
出会うこと自体は幸運だが、この魔物は肉食で、戦闘力が高い。
決して駆け出しの冒険者が手を出してよい魔物ではないのだ。
新人冒険者が草原で、好戦的なコイツに胸を一突きされ、即絶命するなんてことはよくある。
この魔物の一番憎らしいところは、初撃を奇襲してくるというところだ。
現に、私もアクアがいなければ、胸に穴が開いていただろう。
さて、どうしようか。
アクアの方が強いだろうが、彼女は魔法攻撃を主体としているようなので、あのウサギとの相性は最悪と言え、まして私達は戦い慣れしていないのだ。
彼女を連れて逃げるべきか?
それとも、初めてだけどやれるのだろうか。
「アクア、やれる?」
「ん、まかせて」
そういうと彼女は手を前に出すと氷柱をいくつも生成し、敵にめがけて射出する。
長さはおよそ50cmくらいで、その先端はもはや美しいと思えるほど尖っている。
なるほど、その手があったか。
氷魔法や水魔法ではこのウサギにダメージを負わせることはできないが、一度生成してしまった氷ならば、それは物体と言えるだろう。
つまり、彼女はいま、鋭利な氷で物理攻撃をしているのだ。
メタルホーンラビットは特性として、驚異的な速さと魔法無効、高い防御力があるのだが、流石にこの氷柱をくらって無傷というわけにはいくまい。
そう思えるほど彼女の攻撃は壮絶だった。
だが、当たらない。
10秒ほど交戦を続けただろうか、依然として例のウサギはアクアの攻撃を避け続けていた。
時折、彼女をあざ笑うかのように挑発しているのが見える。
ラビット系モンスターは動きが素早い。
それに加えて、メタル系モンスターも動作が素早い。
つまり、ラビットでありメタルでもあるこのモンスターは、ものすごく素早い魔物なのだ。
「う……あたんない」
「ね、ねえ。やばいわよこれ! どうしよう!」
私は焦っていた。
まさかこんな風に冒険の出鼻をくじかれるとは思っていなかったからだ。
アクアは強い。
モンスターで例えるなら、間違いなくB~A級の強さはあるだろう。
だが、今回の敵に対しては相性が悪いのも事実だ。
このままでは私達はやられてしまうだろう。
早急になにか作戦を立てなければいけない。
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