8 いざ、冒険者ギルドへ1
「ちょっと、あの子めちゃめちゃ強いじゃないの」
「レジェンドスキルだから、当たり前だなァ?」
私のそばで、事の顛末を見ていたグリモ。
その顔には当然だといったような表情が読み取れる。
ふとアクアに目線を向けると、彼女はひたむきに白い蝶々を追いかけていた。
……、まあアクアは可愛いからいいけど。
「今度からは、私の確認を取ってからスキルを作ってよね」
「ご主人様の心の深層、つまり無意識ではすぐにでも製造しろと言っていたぜ?」
私は無意識にも、そんなこと思うかしら?
いや、きっと思うわね。
「確かに、それじゃあ仕方ないわね。でもきちんと次からは……」
「へいへい、わかりやした。じゃあ次も何かあれば呼べよな?」
私の話を遮ると、グリモはそのまま消えていった。
まあいいわ。
ちょっと癖があるけど、彼も私の大切な仲間なんだからね!
アクアには手加減を覚えてもらう必要があるな。
そう思いつつ、私は次の目標を確認する。
ええと次は、早速冒険者ギルドへ登録しちゃおうかしら。
冒険者ギルドとは冒険者が集まる、国家から独立した組織で、機能はいくつかあるが、主なものはこれら3つだろう。
1、ギルドが依頼主からの依頼を斡旋し、冒険者がそれを解決する。
2、冒険者やギルド同士の情報交換場所。
3、冒険者が持ち込む鉱石や薬草、マモノの素材や遺跡の遺物の買い取り。
いずれも、冒険者にとって便利なので登録しておくに越したことはない。
年会費や登録費があり、かつ冒険者はカードでランク分けされており、自分の分不相応な依頼は受けられないようになっていて、だから冒険者ランクの高い者たちは色々な国や村から一定の信頼や特典を受ける。
例えば、冒険者カードを持っているだけで国家間の関税が免除されたり、高ランクの冒険者は立ち入り禁止の遺跡やダンジョンへ入る許可を貰えたりするのだ。
「よし、冒険者ギルドへ向かうわよ!」
「おー」
アクアが横で、私に合わせて拳を高く上げた。
そういえばアクアって、召喚したままでいいのかしら?
「アクアは召喚したままでいいの?」
「ん、私もよくわかんないけど、たぶん大丈夫だと思う。だけど、こっちだと霊力を回復できないから長くいるのは無理かも」
霊力ってなんだろう。
それに、こっちっていうことは、アクアは別の世界から来たのかな。
「霊力?」
「霊力は精霊の命の源。お姉ちゃんでいうところの生命力」
なるほど、精霊と私たちはそう分かれているのね。
「私達精霊は普段、精霊界という別の世界にいる。そこは霊力に満ち溢れていて、心地よい場所。ずっとこっちの世界にいることはできないから、夜に返してもらえばいい」
「じゃあ、私が寝ているときはアクアを返せばいいのね?」
「ん、そういうこと」
要するに、アクアが霊力を使いすぎたり、変に怪我をしたりしない限りは日中ずっと一緒にいられるって事ね、理解したわ。
ブルーエレメンタル召喚の本は、大切にアイテムボックスへと収納しておいた。
私はアクアと手をつないでかがみ、彼女と目線を合わせる。
「アクア、早速出発しましょ」
「わかった」
彼女は幸せそうな顔をしている。
いや、きっと私だって同じような顔をしているに違いないわ!
気を引き締めていかないと。
冒険者は夢のある仕事だけど、常に危険が付きまとうものでもあるからね。
そう思うと、私達は早速村の外へ向かう。
十数分がたち、村から少し出た辺りで、私は荷物を何も持っていないことに気づいた。
あ、昨日のうちに荷造りしたのに、おうちに置いたままだ。
それに、母さんへ別れの挨拶をしていない。
周りのことが見えなくなるのは私の悪い癖だな。
それに母さんにはアクアのことも紹介したいし、丁度いいだろう。
一度帰宅しよう。
私たちはいそいそと自宅へ向かった。
母さんは、この時間帯には、いつも通りに洗濯をしている。
「お母さん、ただいま!」
「お帰りなさい。まあ、そんな可愛い子を連れて、どうしたの?」
私はその場で、今までの出来事を軽く説明する。
スキルブック製造のことははぐらかして、精霊使役のスキルを貰ったと話した。
「じゃあ、あの巨大な、あなたの氷像はその子が作ったのね」
「げ、お母さん見てたの」
ふふふと笑うお母さん。
私は顔を赤らめながらも、荷物を取りに行く。
その間お母さんとアクアはなにやら話をしているようだった。
私はアイテムボックスを持っているから、予定よりも多くを持っていけそうだ。
食料とお金を詰めた小さなリュックを背負って、あとはアイテムボックスへ収納。
リュックも収納すればいいと思う?
甘いわ。アイテムボックス持ちは野盗や同業者から、色々な意味で狙われやすいからね。
あまり周囲にバレちゃいけないのよ。
私が家の玄関へ向かうと、アクアも丁度話を終えたようだった。
アクアのほんのり冷たい小さな手を握って、私は玄関の扉をすぎる。
「じゃあお母さん、行ってきます! たぶんその内帰ってこれるだろうし、手紙も書くからね!」
「あらあら、親孝行な娘だこと。頑張ってらっしゃい」
私はそう言って母さんに手を数回振ると、冒険へ向かって走り出した。
母さんは私の姿が見えなくなるまで手を振ってくれたみたいだった。
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