4 スキルを試してみる
私は緊張とも焦燥とも思える心を決めて、スキル名を発する。
「スキルブック製造!」
すると、私の目の前に紫色で不気味な模様の分厚い本が現れた。
1000ページはあるだろうか?
って、これくっついてて全然開かないじゃない!
私が必死に開けようとしていると、突然本の表紙部分に不気味な目玉が二つ現れた。
「きゃっ! なにこれ気持ち悪い!」
思わず本を手放してしまい、そのまま本は地面へと衝突する。
「ケケケ……、ひどいなあご主人様は。乱暴しちゃあいけませんぜ?」
「ほ、本が喋った!?」
私は夢を見ているのではないかと自分自身を疑ってしまう。
本日二度目のほっぺムニーである。
うん、やっぱり痛い。
ということはつまり、この本は生きているってことだよね。
大丈夫なのかな、危なくない?
よく見たら口もあるみたいだし、歯とかすっごい鋭いよ。
べろもなっがいし。
やっぱり、まずはお互いのことを知ることから始めないといけないわよね。
私が召喚したことに間違いはないんだから。
「あのー、もしかしてモンスターさんですか?」
「ケケ、そうといえばそうだが、違うと言えば違うぜ」
結局どっちだよと思いつつも私は声に出せず、その場で黙ってしまう。
「丸聞こえだぜご主人様。召喚者と使い魔は一心同体、心の声もシェアされちまうんだぜ?」
なにい、使い魔だったのかこの本!
ていうかこれも聞こえちゃってるわけだよね。
なら普通に話すのが一番いいかな。
「それがいいぜ」
いちいち心を読んでくるのが鬱陶しいけど、これはこういうものなんだろうな。
まあいろいろと聞きたいことはあるし、このまま聞いてみよう。
「えっと……、私にはあなたの声が聞こえてこないんだけど、どうなってるの?」
「そんなの簡単。オレサマ自身の心の声が漏れないようにスキルを使っているからだぜ」
「え、本なのにってスキル持ってるの?」
「ケケケ、そうだな。簡単に説明をしてやるぜ」
不気味な本はそう言うと、魔力を高め始めた。
すると突風が吹いたかのように、本が開いてページが沢山めくれる。
「オレサマは、この世のスキルの全てを行使することができる。例えば、ここを見てみろ」
そういうと、とあるページで動きが止まる。
「ここに、コモンスキル【ウォーター】と書いてあるだろ?」
「ほんとだ、書いてあるけど、本当に使えるの?」
【ウォーター】というスキル自体は、決して強力なものではない。
破壊力はないけど、どこでもいつでも飲み水を出せるから便利スキルとして有名なのよね。
「ケケ、いま使ってやるから。まあ見とけって」
彼はそういうと、ウォーターと唱えた。
ただそれだけ。
なにも起こらないじゃないと思ったが、ふと気づくと私の前には拳大の水球が浮かんでいた。
まさか、本当に【ウォーター】を使えるだなんて……。
す、すごい。
「つまり、あなたが言っていることは真実」
「そういうことになるなァ……」
「これから私の冒険を手伝ってくれるの?」
「手伝うといえば手伝うが、手伝わないと言えば手伝わないぜ、ケケケ」
もう、本当に冗長な言い回ししかできないのねこの本は。
「どういうことなの?」
「俺自身はもう魔法を使わない。俺はレジェンドスキルをいくつも持っているんだぜ? 絶対的な力の前ではお前が成長することはない。そんなのは面白くないからな」
「なによ、意外と優しいのね。じゃあ、何を手伝うっていうの?」
「そうだなァ、お前、オレサマを呼んだスキルは覚えているか?」
「ええ、【スキルブック製造】でしょ、覚えているわよ」
「じゃあ、その言葉の通りだぜ」
つまり、どういうこと?
「お前が然るべき素材を持ってきたら、オレサマがスキルブックを作ってやる。ああ、スキルブックというのはな、手に持ったまま魔力を込めると魔法を行使できる魔道具みたいなもんだ」
「いっぱいスキルブックを作ったら、私もいっぱいスキルを使えるっていうこと!?」
「努力次第で、な。ケケケ」
やった!
これなら冒険者としてやっていけるじゃない!
「ちなみに、一度作ったスキルブックは消せないから注意しろよ。好きな時に好きな本を出して使う!なんてことはできないのさ。……おっと、お前はアイテムボックス持ちだったな。なら、これに関して気にすることはねえなァ?」
「うん。ようするに、いろんな本を作ってアイテムボックスに入れておけば、使いたいときに取り出して、使いたいスキルを使えるってことでしょ!」
「ちがいねえ」
なによこれ、ほんとにチートすぎるでしょ!
……いや、面白くなってきたわ。
「ちなみに私達が作ったスキルブックって、他の人でも使えるの?」
「ああ、使えるぜ。だがお前と同じように使うんじゃないんだなァこれが。他の奴がスキルブックに魔力を通すと、追加でスキルを習得しちまうんだ」
「え、どういうこと?」
「人間は3つだけスキルを持っているだろ? だがお前さんのスキルブックを使えばそれに加えて3つまで、追加スキルを習得できるってことだ」
え、え、なによそれ。
世界の常識が崩れるわよそれ。
スキルブックのことは誰にもバレちゃいけないじゃない。
「スリルのない冒険なんて、つまらねェだろ? それも含めて楽しもうぜ」
「そ、そうよね。ふふん、全力で楽しんでやるわ!」
やってやるわ。
刺激的な毎日ってのにも憧れてたし。
「じゃあ私は材料集め頑張るから、これからよろしくね、グリモ」
「ケケ……、グリモ?」
「名前くらいあった方がいいでしょ」
「厳密にいうと俺は魔導書じゃねえんだが、まあいいか。よろしくな」
こうして私の冒険に、使い魔(不気味に笑う本)が加わった!
一緒に戦ったりはしてくれないみたいだけどね。
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