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炎の少女  作者: たからだから
―1st―
2/2

(1)バンフィールド




 毎朝不思議な気分で目覚める事はもう数えれない。何度も経験し今や慣れてしまった眠たい朝を迎える。寝惚ねぼけた表情の少女は、カレン・バンフィールド。その名を知らない者は居ない有名な、バンフィールド家の人間。

少女は17歳という若さで華麗(かれい)なる戦士こう呼ばれている。



 母は剣道"静寂(せいじゃく)の剣士"、父は截拳道(ジークンドー)"破壊(はかい)の戦士"、兄はクラヴマガとキックボクシング"最強の戦士"。


 戦士の異名を持つ家柄で、その名通り武闘に長ける。



 カレンは空手の名手で、カレンの住む街フィレンツェ優勝者でありこの国ローノ代表である。



「大会まで後半年…頑張らないと。私はバンフィールドの人間なんだから」



 暗めな緋色(ひいろ)を腰まで長く伸ばしてある髪を頭の高い位置で結ゆったカレンは、静かにしかし気合いの入った力強さで呟く。毛先には軽くウェーブが掛かっており、戦士と呼ばれる彼女も年頃の乙女だ。



 バンフィールドはカレンにとって(ほこ)りであり、大切な居場所である。



 その名を汚す事も、負ける事も許されない。幼き頃からそう、固く決心していたカレンにとって大会一つ一つが重要で、緊張するものだった。



「あ、カレン朝食出来てるわよー!」



「はーい!」



 母の声に元気良く返事をしたのと同時に1階のリビングへと駆け下りる。右眼みぎめに眼帯がんたいを着けた母に微笑み、朝の挨拶を交わす。



「あれ?お父さんとお兄ちゃんは?」



 いつも朝食の取り合いで騒がしい朝なのにテーブルを囲むのは二人だけ。その光景を不思議に思ったカレンは、バターの溶けたトーストを口に運びながら問い掛ける。



 ――まあ、静かでいいんだけど。居なかったら居なかったで、寂しいんだよなあ。



「ああ、あの二人今日も部隊に呼ばれちゃってね。昨日の夜から出てるわよ」



 バンフィールド家の人間は国の戦力部隊に駆り出される事が多く、どうやら何かあったのだろう。母の回答に素直に納得したカレンは朝食を母と過ごし、戦場へ赴おもむく父と兄の背中を思い浮かべた。



 勿論カレンも若いながらに部隊経験はある。あの、危険で血生臭(ちなまぐさ)い戦場の経験を。



 バンフィールド家は国すら頼りにする戦力の持ち主であり、この国に存在する絶対的力を持つ反乱者を制圧する事に大統領は力を入れている。国民の為、これが大統領の意思。



「じゃあ、私行ってくるねー!」




 食べ終えた皿をキッチンへと運んだかと思えば、言葉と同時に玄関へと足を動かす。



 目的地は大親友、アリシアの所だ。



 背に母の声が聞こえたがそれは知らないふり。それには母も気付いているだろう。カレンの耳と目は超人とも言われる程、優れた物なのだから。



「あー、もう。またサラダのブロッコリー残してるんだからー!ちゃんと食べなさーい!」




 だってブロッコリー嫌いなんだもーん。駆け足に家を出たカレンは誰に言うでもなく、心の中で悪態をつく。



 やはり中身は立派な17歳の少女である。




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