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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
3,5.ミドルフェイズ:シナリオ『神州に暗躍する影を討て』
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英雄の弟子、正気に戻った人々から話を聞く

「おれは、しょうきに、もどった!」


 町人たちが、魔の者の支配から逃れたようだ。

 次々と我に返る彼らに、ソフィが駆け寄った。

 彼女がなにか呟くと、町人たちが負っている傷が次々に癒えていく。


「魔法か。お主は幾つもの魔法を使えるようだな」


「はい! 皆さんの助けになればと、頑張って使いこなせるようになりました!」


 少女の表情は明るい。

 謙遜の口ぶりだが、このソフィという娘、見た目通りの実力ではない。

 歴戦の忍びである又佐には分かった。

 身のこなし、攻撃への耐久力からして、素人ではありえない。

 誅魔としても上位に食い込む実力があると見ていいだろう。


「皆さん、大丈夫だったらお話を聞かせてもらっていいですか?」


「ヒャア、唐人の娘さんだ! 珍しいなあ!」


 そして、正気に返った町人の男たちが、物珍しさでソフィの周りに集まってくる。


「こらこら。唐人と言えども年頃の娘だ。触るな触るな」


「なんだこの薬売り」


「引っ込めー」


 こめかみに青筋が浮かぶ又佐である。


「はいはーい。踊り子さんに触れないで下さーい」


 そこへ、全身甲冑の巨漢が割って入る。

 スタンの助が尻とか腹で町人を押しのけた。


「うわーっ」


「なんだこいつーっ、ひぃー」


 町人たちが一気に弱気になる。

 スタンの助は腕組みをして、ソフィの背後にどっしりと構えた。


「スタンさん、あの、穏便に……」


「うむ。怪我はさせないように気をつけている。さあソフィ、仕事をするのだ」


「はい! ええと、皆さんは、怪しい術を使う男に操られていたのですけれど、覚えている方はいますか?」


 ソフィの問いに、町人たちは顔を見合わせた。

 さては、記憶を消されているか。

 そう思ったら、一人の男が手を上げた。


「ぼんやりとだけど、覚えてるよ」


「おお!」


 貴重な情報である。


「パンデミック・チルドレンでは、モブを操るアビリティがあったけど、操られたモブの記憶が消えるとは書いてなかったもんな。そこはフレーバーテキストに無いことは再現されないってことか」


「? スタンの助、どういうことだ」


「ここにいる町人たちは、大なり小なり記憶があるってことだ。情報を繋ぎ合わせていくと、敵の姿が見えてくるぞ」


「本当か!」


 又佐はこの鎧武者の底知れなさを思う。

 常に意味の分からないことを言っているが、あれも又佐が理解できないだけで、状況の真実を語っている言葉なのかもしれない。


「よし、ソフィ、聞き込みをしてみるぞ」


「はい!」


 又佐とソフィは、町人たちの証言を集めることにした。


「ざんばら髪の太めの男とすれ違ってから、身体の自由が利かなくなった」


「妙に甘ったるいにおいが常にしていた気がする」


「操られてから、城の中に閉じ込められていた。だんだん身体の自由がなくなっていった。完全に自分の意思で動けなくなってから、外に出された」


 などの情報が集まる。

 

「間違いなく、城に奴らは潜んでいるということか」


「そうみたい。あと、女の子は別に連れて行かれて、天守閣にいるって」


「なんだと!? 許せん、下衆め……!」


 又佐は怒る。

 忍びではあるが、命題のみに従う誅魔の忍びが彼である。

 任務に徹して感情を殺す、他の忍びとは違う。

 悪に対しては、激しい怒りの炎を燃やすのである。


「こうしてはいられぬ……! 一刻も早く救いに行かねば!」


「待つのだ。独断専行してはセッションが崩壊するぞ……!」


 走り出そうとした又佐の前に、スタンの助がスススっと横移動してきて立ちふさがった。

 不気味な移動方法だが、恐ろしく速い。

 これは騎士の特技である、ブロッキングという技なのだが、異世界人ならぬ又佐には知る由も無かった。


「邪魔をするな、スタンの助! まだ城には囚われている者がいるのだ!」


「その情報だけを頼りに少人数で突っ込んではいけない。まずは仲間と合流し、情報を集めるんだ。そしてみんなで突撃するのだ。人数が増えたほうが、戦いは有利になるぞ」


「むっ、確かに……!」


 頭から水を掛けられた思いである。

 カッカしていた又佐の頭が、すっと冷えた。


「又佐さん、みんなと合流しましょう!」


「ああ、そうしよう!」


 先ほど戦った魔の者は、恐るべき術を使う相手だった。

 あのような者が複数いるならば、単身で城に突っ込んだところで何ができよう。

 刃五郎と梔子の手も借りるべきだ。

 冷静になった又佐はそう考えた。

 全く、この状況で、先々の事を見据えて行動できるとは、スタンの助は只者ではない。

 不思議な男だが、信頼できるかも知れない。

 そう又佐は考えた。






 一旦、城の近くの裏通りに集合した一行。

 聴けば、刃五郎も梔子も、魔の者からの襲撃を受け、一戦交えたところだった。


「恐ろしい相手でした。私の神降ろしで、刃五郎様を強化していなければ危ないところでした」


「ああ。我が刀で、何度切っても倒れぬ相手は初めてだ。流石の拙者も肝が冷えたが、そこはやはり拙者。敵が突然腹に大穴が空き、動きが鈍ったところを斬り捨てた」


 刃五郎、冷静そうな顔を保とうとしているが、己の事を語りだした瞬間、口の端が緩んでいる。

 自分の活躍が大好きな人らしい。

 出会った当初から、又佐の中で刃五郎の株がどんどん下落する。


「うん、そうかそうか」


 言いたいことは色々あったが、とりあえずそうやって流すことにした。

 そして、又佐側、刃五郎側で得られた情報を合わせてみる。

 又佐側に現れた魔の者は、怪しい香りと光の輪で人心を操り、攻撃してくる。

 刃五郎側に現れた魔の者は、雷を纏って、銃を使ってきたとか。


「ライトニングのクラスだな。機械と電撃を操るやつだ。それ以外に何か動きはあった?」


「やたら広範囲に攻撃しようとするから参ったわよ。周りを守ろうとしたら、あたしが暴れられないじゃない。面倒だから攻撃しようとする度に腕を潰してやったわ」


「それでリジェネレーションを使わせたんだなー。しっかし、パンデミック・チルドレン側は何を考えてるんだ? パーティ組まないで単身とか自殺行為じゃないか。それに誰も、エモーションやディスティニーを取ってないっぽい」


「何、それ?」


「パンデミック・チルドレンでな、登場するキャラクターに感情を抱くと取れるのがエモーション。で、これを使うと色々有利な効果が得られる。ディスティニーはエモーションの取得枠を消費して取る、特殊能力な」


「スタン詳しいのねえ。そう言えば、なんかめちゃくちゃ変な銃を使ってきたけど」


「あ、じゃあそいつディスティニー持ちだな」


 相変わらず、スタンの助と霧亜が訳のわからない会話をしている。

 だが、又佐はこれを無視する気になれなかった。

 この二人は間違いなく、相手が何者なのかを知っている。


「知っているのか、スタンの助」


「初プレイの人にネタバレはしない主義なのだが……」


「頼む、教えてくれ!」


 スタンの助が、腕組みをしてうごごごご、と唸った。


「じゃあ、ヒントだけ……。向こうは力を使いこなせてないから、一人ひとりに集中攻撃してリジェネレーション……あの復活するやつを使い切らせるといい。回数制限がある」


「なるほど……!」


「それと、みんなくっつかずにそこそこ距離を保った方がいい。連中がひとまとまりだと判断した対象は、まとめて攻撃される。そういう能力を持っている」


 皆、真剣な顔をしてスタンの助の話を聞いている。

 そもそも、どうして知ってるんだという疑問はあるが、それはこの際、横に置いておく。

 まず重要なのは、謎の敵である魔の者を知らねばならないのである。


 ということで、スタンの助によるパンデミック・チルドレンのルール講座が行われるのだった。 

※幾つもの魔法

 装備している魔法と、魔法的な効果がある特技の話。

 ソフィも特技が増えてきた。


※ヒャア、唐人の娘さんだ

 人種の垣根を超えて、みんなキュートな女の子が大好き!


※踊り子さんに触れないで

 スタンの中の人、そういうお店に行った経験があるのかもしれない。


※フレーバーテキストに無いことは

 ゲームと現実の差異が生じているようである。


※女の子は別に連れて行かれて

 ゴッドスレイヤー・俺は全年齢対象です!


※エモーション

 消費すると、ダイスが増えたり、クリティカル値が変わったり、アビリティの使いすぎで暴走になりかけてるのから戻ってこれたりするぞ。

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