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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
3,5.ミドルフェイズ:シナリオ『神州に暗躍する影を討て』
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英雄の弟子、仲間たちと顔合わせする

 暮撫刃五郎。

 かつて沙州藩に仕えていた剣術指南役である。

 あやかしに取り憑かれた先代藩主を斬り捨て、その後は自刃したと伝えられるが、その様子を見たものはいないという。


(まさか、こんな南国の果てで見ることになるとはな)


 薬売りの衣装に身を包んだ男は、刃五郎をじっと、編笠の下から観察していた。

 彼は、忍びの者。

 鴎州藩の山奥にある、迷賀(まよいが)の里は、彼のような忍びが集まって暮らす場所である。

 そこで忍びたちは、忍びの技と心得、心根のあり方を学ぶ。

 中でも才能がある者は、忍術と呼ばれる超常の技を身につけるに至るのだ。

 彼は、その、忍びの一人であった。

 天より、命題と呼ばれる言霊を受け、主には仕えず、ただ天にのみ従う彼らを人は誅魔の忍びと呼ぶ。


(あやつも、おれと同じ誅魔の力に目覚めたと見てよかろう。そして、この鎧武者と女も……むむっ)


 彼の目が細められた。

 布で顔を覆った、年若い娘が一行の中に混じっている。

 一人、あきらかに唐人と見える女がいたが、その者の耳は尖っていることから、時折神州を訪れる特別な旅人、会留府(エルフ)であると分かる。

 だが、顔を覆った娘は違った。

 僅かに見える肌色が、神州の人のものとは全く違う。


「唐人ですね」


 巫女が呟いた。

 腰に太刀を佩いた巫女である。

 彼女は、布に隠れた娘を見、次いで、彼と刃五郎を見た。


「この四名が、この度の命題に選ばれた誅魔にございますね」


「そうそう、神州じゃ、探索者の事を誅魔って言うんだよな。やっぱりワールドガイドの通りだぜ……」


 鎧武者が意味のわからないことを言った。

 さては、この武者も唐人ではあるまいか。

 だが、唐人にしては恐ろしく腕が立つ。


 暮撫刃五郎は一地方の剣術指南役でしかなかったが、その剣の冴えは、神州の剣客の間に広まっている。

 彼との立ち会いを求めて、沙州藩までやって来る者がいるほどである。

 事実、刃五郎が鎧武者に仕掛けた動きは、彼は目で追いきれなかった。

 神速の踏み込み。

 人混みを一瞬で抜け、肉薄した相手を抜刀と共に断つ。

 太刀筋すら見えぬ、斬魔の剣であった。

 だが、それをこの鎧武者、あろうことがその(かいな)で受け止めた。

 鋼すら断つと言われる、刃五郎の一撃をだ。


(無視はできんが……敵意も感じぬ。よほどの使い手か、それともただの馬鹿か……)


 できれば後者であってくれと、彼は願った。


「あの、それじゃあ、皆さんよろしくお願いします。私はソフィです」


 布で顔を隠した娘が名乗ったのは、一同で入った茶屋でのことだった。

 流暢な神州の言葉で、東国の訛りがある。

 東国は、今や神州の中心だ。

 ニニギより執政を任された、将軍の一族が都を築き、そこから神州を治めている。


(なるほど、東国訛りは役人も話す。覚えておけば間違いはない)


 ソフィと名乗った娘は覆いを外す。

 その下にあったのは、まだあどけなさを残す、年若き唐人の少女だった。


(それがし)は、暮撫刃五郎。旅の武芸者にござる」


「誅魔の巫女、梔子(くちなし)と申します」


「それっぽい……!」


 また鎧武者が口を挟んできた。

 なんであろうか。

 この男、いちいち何事にも感激している。

 ちなみに彼はスタンの助というふざけた名前で、明らかに偽名である。


(こいつ絶対唐人だろ)


 彼はそう思った。

 そして、彼の名乗る番だ。

 真の名などとうに捨てている。

 故に、彼は今纏う薬売りの姿に見合った名を、即興で名乗った。


又佐(またざ)だ」


 あえて、自分が何者であるかは名乗らない。

 自ら名乗り出る忍びなど、悪い冗談だ。


「うんうん、誅魔の忍びは名乗らないよな。あれだろ、忍術使えるんだろ?」


 又佐は危うく、椅子から転げ落ちるところだった。

 

「な、な、な、な────!?」


 なぜそこまで知っている、と口からでかけて、慌てて止める。

 自分もまだ修行が足りない。

 熟練の忍びならば、次の瞬間には、鎧武者の口を封じていることであろう……。

 いや、むしろ、下手に彼に仕掛けた後、返り討ちにされていたかもしれない。


「気にしないで。こいつ、普通に何でも知ってるだけだから。無害よ無害」


 霧亜と名乗った婦人が、鎧武者の腹を手の甲で何度か叩いて笑う。

 この女も、見た目通りの存在ではない。

 奇抜な柄の着物は、普段着にするようなものではない。

 そして、作り物めいた美貌。


(変装か。だが、神州の民に紛れるための変装ではあるまい。目立ちすぎる……! 恐らく、この女も唐人と見ていい。さては、二名とも外国より来た誅魔か)


 又佐はそう当たりをつけた。

 ちなみに会留府が名乗ったが、それは特段、気になることもなかったのでそのままにしておく。


「では……皆、同じ命題を受けているだろう」


 又座はあえて口を開いた。

 この場で、警戒の必要はあるまい。

 同じ命題を受けた誅魔は、間違いなく信頼できる相手となる。

 誰もが、神州を害する魔の者を倒すために存在しているからだ。そこに私情などは無い。

 そして、ここにいる面々を見回した時、


 無口で剣を振るうことしか考えておらぬような剣客。

 訳知り顔だが、浮世離れした風で自分からは動かない巫女。

 神州のことを何も知らぬであろう、唐人の娘。

 着物姿の、わけの分からぬ女。

 何から何まで意味が分からない鎧武者スタンの助。


(おれが主導せねば、これ、場が動かんよな……!?)


 内心で溜め息を吐きながら、又座は続けた。


「この地に巣食う、魔の者を排除せねばならん。彼奴らは唐人を勝手に招き入れ、領主を傀儡として国政を壟断している。なに、国の行く末などに興味は無いが……」


「国を好き勝手にさせるわけにはいかんな。小国と言えど、神州を崩す足がかりとなりえるだろう」


 刃五郎が口を開く。


「乗った」


 乗るも反るもない。

 同じ命題を受けているのだから、仕事を果たすことが同じ誅魔としての役割である。

 何を言っているんだこいつ。


「では、お互いに情報を集めましょう。あとは、持っている情報を開示致しましょう?」


 梔子が手を叩き、提案した。


「スタンの助、全部教えたらだめよ」


「おう、他のプレイヤーの楽しみを奪うのは下の下だぜ」


「あっ、私お団子おかわり!! お茶もー!!」


 ……着物と甲冑と会留府、こいつら、本当に同じ命題を受けているのか……?

※誅魔の忍び

 対魔忍(


※梔子

 花の名前とかよく付けますよねッ


※転げ落ちる

 ノリのいい忍びである。


※命題を受けているのか?

 鋭い。

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