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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
3,0.プロローグ:シナリオ『神州に暗躍する影を討て』
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俺、内地に赴き、現地探索者と遭遇する

 変装したからと言って、居留地を抜け出せるわけではない。

 何しろ、入り口というか出口には、検問所が設けられているのだ。

 こいつを通過するのは難しかろう。

 賄賂を握らせればいける、とワールドガイドには書いてあったが、それだって後々バレてしまう可能性がある。

 かと言って、地元の人間を手に掛けるのもよろしくないよな。

 奴らは普通に仕事をしてるだけである。


「ってことで、屋根を飛び越えて行くぞ」

「はあ。……は?」


 エリリンが目を見開いた。

 彼女は変装のつもりか、メガネを掛けて、世にも珍しいメガネエルフになっている。

 そんな彼女を小脇に抱え、ソフィをもう片方に抱え、


「ひゃっ」

「ぎえーっ」


 汚い方の悲鳴がエリリンだな。

 俺は居留地の屋根へと飛び上がった。

 もたもたしていたら、誰かに目撃されてしまう。


「行くぞ、ゴール」

「あたしは今ではあんたのご主人さまのはずだけどー」

「行きますよ奥様」

「おほほほほ、よろしくってよ」


 設定に凝るやつだ。

 俺の横へと、彼女はふわりと舞い上がった。着物の裾が広がる。


「きれい……」


 ソフィがそれに見とれている。

 そうか、和服は未知のものなんだよな。

 この連中、北欧圏の人間や存在だって事をすっかり忘れてた。


「後でソフィも着るか?」

「えっ、いいんですか!?」


 ソフィが年相応の表情になった。

 まだまだミドルティーンの娘さんは、そういう顔をしてるのがらしいってものだ。

 じゃあ、さっさと状況を片付けて、神州観光と洒落込みたいな。


 俺とゴールで、並んで居留地から本土へと跳ぶ。

 ゴールはヴァルキュリアの飛行で、俺は能力に任せた跳躍だ。

 そのスピードだけは、恐らく時速200kmを超えてるわけだが。


 居留地は、まさに出島だった。

 ってことで、間には橋の他は海があるわけで。

 超高速で海を飛び越える俺たち。

 下の方に漁師の船がいて、頭上を猛烈な速度で跳ぶ何かを見て、目をぱちくりさせていた。

 理解できんだろうなあ。


 さて、到着。

 対面にあった、瓦屋根の上に着地する俺たちなのだ。

 派手に瓦が砕け散った。

 おっと、注目を集めちまうか?


 そろりと屋根の下を見てみた。

 すると、そこは行き交う人々で賑わう市になっている。

 人の喧騒で、聞こえちゃいないだろう。

 いやあ、何人かはこちらを見上げてるな。


 明らかにこの辺りを歩く人々は、南国風の服装。

 地形的には日本の長崎か。

 だけど、関東圏から来たと見えるような侍がいるな。

 鋭い目で俺を見た。


「あの人……探索者です」

「ほう、じゃあ、あれが地元で合流するご同輩だろうよ」


 探索者同士は惹かれ合うのだ。

 何せ、同じ命題を受け取っている。

 目的地めがけて彼らは集まってくるわけだ。


 もう一人。

 あれは……編笠を被り、風呂敷に包まれた大きな荷物を背負った……富山の薬売り?

 ああ、忍者だな。

 ってことは、最後の一人はどういうクラスなのか、推測する必要もない。


 凛とした佇まいの女性がこちらを見上げていた。

 ただの町娘らしき着物を纏っているが、醸し出す気迫は隠せない。

 あれ、巫女だろう。


「侍、忍者、巫女!! お約束だなあ……!」

「スタンさん、嬉しそうですね?」

「そりゃあ嬉しいに決まってるよ。あいつら、神州の基本三大クラスだぞ。得物一振りで、攻めから守りまでこなし、実体なきエネミーだって斬り倒す侍。忍術による魔法援護と、隠密行動の使い手である忍者。自らに神を下ろして、前衛も後衛もこなす巫女。……ソフィが後衛だから、ちょっとクラスが偏ってるかもな」

「んー?」


 ソフィが混乱しているようだ。

 いかんな、まくし立ててしまった。


「ねえスタン、狙われてるみたいだけどやっつけていいの?」

「ダメ。あいつら仲間だから」

「なんか投げてくるけど?」

「手裏剣だろ?」


 忍者がその素振りも見せないまま、棒手裏剣を投げてきた。

 いや、俺には丸見えだけどな。

 俺はこいつに向かって首を動かし、兜についた仮面の隙間に誘導する。

 そして、歯でキャッチ。


 無表情な忍者が、一瞬口をぽかんと開けた。

 侍が無言で、腰に佩いた刀に手を掛ける。

 巫女は俺じゃない。ゴールを見ている。

 ヴァルキュリアだってことに気付いてるな、こいつ。


「よし、降りるぞ」


 俺は宣言すると、二人を抱えたまま屋根から飛び降りた。

 土煙を上げて着地すると、周囲は騒然だ。

 その横に、何食わぬ顔をしてゴールが降り立つ。


「シッ……!!」


 すぐ間近に侍がいた。

 この状況で仕掛けてくるかあ。

 戦意が高い。

 あとは、今まで見てきた探索者の中でトップクラスに練度が高いな。

 手にする刀は、業魔刀。侍のクラスだけが装備できる専用装備だ。1シナリオで三回ダメージアップができるんだよな。

 そのためのトリガーが柄に付いている。


「おぉあああっ!!」


 裂帛の気合とともに振り下ろされたそいつを、俺はエリリンを振り落としながら「ぎえーっ」篭手を振り上げつつ受け止めた。

 正確には、この鎧は俺のフレーバーテキストだ。

 つまり、俺は素の防護点で攻撃を止めている。


「ぬうっ!?」


 刀を振り切る前に止められた経験が無いのだろう。

 侍は血走った目で俺を見た。

 トリガーに指が伸びる。

 俺は篭手ごと刀を跳ね上げると、彼の手をしっかり掴んだ。


「待て。俺は味方だ。君と同じ探索者だ。ここはその取っておきを使う時じゃない」

「何っ……!?」


 侍は俺を睨みつけた後、すぐに全身に纏っていた殺気を和らげた。

 俺の横で、ソフィがこくこくと頷いているのを見たからだろう。


唐人(からびと)……! まきな帝国から来た輩か」

「まあそんなもんだ。正確には、この子がお前さんの仲間な」

「ソフィです。あの、よろしくお願いします」

暮撫刃五郎(くれないじんごろう)


 かっけえ!!

 俺、大興奮である。

 兜に仮面がついてて良かったわあ。


「……? そこの鎧武者は、どうして浮かれておるのだ」


 いけねえ、見抜かれた。

 この鎧はフレーバーテキストだから、普通に感情とか見抜かれるんだった。

※賄賂

 長い平和の中で、神州もまあまあ弛んで来ているのである。


※汚い方の悲鳴

 エリリンがヒロインになれぬ理由である。


※おほほほ

 神州の貴婦人はそんな笑い方しない。


※探索者同士は惹かれ合う

 スタ◯ド使い同士は(略)


※唐人

 神州における外国人は、このように呼ばれる。

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