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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
3,0.プロローグ:シナリオ『神州に暗躍する影を討て』
60/72

俺、蕎麦が伸びる前にデュミナスを撃退する

 パンデミック・チルドレンに出てくるPCは、バイオティクスと呼ばれ、ウィルスに感染して得た超能力を良いことに使う。

 逆に悪いことに使うのはキャンサーと呼ばれ、大体シナリオの悪玉になるんだな。

 蕎麦屋から外に出た所、そのどちらかと見られる男が、居留地の真ん中に立っていた。


「ンンー! 素晴らしい……! ワールディングの力で、この日本モドキですら俺の手中に収めることができるんだ。あいつらは臆病過ぎる。俺たちはバイオティクスの力を使えば無敵だぞ? この国の軍隊なんて恐るるに足らない!」

「えっ、バイオティクスなのか。お前やってることがめっちゃくちゃキャンサーじゃん」


 俺が突っ込むと、彼はびくっと震えた。

 そして、俺を、「えっ、なんで動いているのがいるの?」みたいな顔で見る。


「俺たちが動けているのは、ワールディングはPCには通じないからだ。あるいは同じバイオティクスやキャンサーには通じないな」

「こ、このキャンサーどもめ!!」


 いきなり、その男はこっちに攻撃を仕掛けてきた。

 一見して印象が薄い、チェックのシャツののっぺりしたメガネ男である。

 俺は彼の罵倒をスルーして、ソフィに振り返った。


「ソフィ、この国での戦いは、ああいう手合が相手になる。これからあいつらの特徴を教えるから、よく見てるんだぞ。多分、現地の探索者とまたパーティを組んで、君は冒険することになると思うからな」

「はい、スタンさん!」

「ちょっとスタン。なんであたしには何も言わないわけ? あたしだっていたいけな乙女なのよー」

「ハハハ、素手でエインヘリヤルを殴り倒す豪腕ヴァルキュリアが乙女とか。ヘソでインスタントコーヒーが沸きますなあ」

「きちゃまー!!」


 ゴールがぽかぽかと殴りかかってきた。

 パンチ一発一発が、ゴブリンレベルなら蒸発する駄々っ子パンチである。

 俺がこれをぴしぱしと受け流していると、無視されていた眼鏡のバイオティクスが何か喚いた。


「何かね」

「何かねじゃない!! 俺を無視するなっ!! くそっ、俺の力を見せてやるぞ、キャンサーどもめ! 空気操作と風の刃を組み合わせて……」


 俺は彼の仕草を見て呆れてしまった。


「おい、お前は自分が何をしているのか分かっているのか?」


 ゴールの額を渾身のデコピンで弾き飛ばし、「ぎょえーっ」俺はフリーになる。

 そしてバイオティクスに向き合った。


「喰らえ! 俺のコンボ、魔風の(シルフィード)弾丸(ビュレット)!!」


 バイオティクスの超能力は、組み合わせてオリジナルコンボにできる。

 その時、コンボに自分の好きな名前をつけるものだ。俺も昔よくやった。

 だけどこいつはいけない。

 俺は向かってきた不可視の矢を、素の防護点で受け止めた。

 刺属性か。


「いいか。パンデミック・チルドレンも他のTRPGに漏れず、パーティで遊ぶゲームだぞ。なのに、もし俺たちがキャンサーだったとしてソロで立ち向かってどうする。単独戦闘は卓の遊び方としてもだめでしょー」


「な、何をTRPGみたいなことを……はっ」


 彼は目を見開いた。


「ま、まさかお前も、バイオティクス」

「残念、システムが違うんだ。じゃあ終わらせてもらうぞ」

「相変わらずスタンは何言ってるんだかさっぱり分かんないわね!」


 ブツブツ言うゴールとともに、メガネくんと戦うのだ。


「ゴール。あいつ、何回か復活するから複数行動特技で一気に復活回数を消費させるぞ。攻撃は最弱のでいい」

「……? 意味分かんないんだけど。そうなの?」


 不思議そうな顔をしながら、ゴールは俺の指示に従う。

 俺が使用するのは、戦王の10レベル特技、連続行動である。

 これは戦王のクラスレベルが上がるほど行動回数が増える。ただし、行動する俺の行動値というものを消費するので、重い鎧を着ていると三回攻撃まではできなかったりする。


「そいっ」


 俺のパンチがメガネくんに決まった。


「ギェピィ!」


 メガネくん、水が詰まった風船みたいに破裂する。

 そしてすぐに、時間を巻き戻すようにして再生した。

 これがバイオティクスの、ワールディングに並ぶ基本能力、リジェネレーションである。

 横からゴールが槍で殴る。

 明らかにオーバーキルだ。メガネくんが跡形もなく消滅した。

 そしてまた、時間を巻き戻すようにして再生する。

 これを、再行動した俺がデコピンで弾く。

 メガネくんの頭が消し飛んだ。

 そしてまた、再生。

 ゴールがヤクザキックをかます。

 メガネくんの胴体が消し飛んだ。

 そしてまた、再生。

 俺がその辺の石を拾って振り上げ……。


「待ってー!! こ、これ以上は死んじゃう!! もう感染率が100%越えたんだー!!」


 メガネくんは尻もちをつき、甲高い声で叫んだ。


「もう再生できないねえ」

「そ、そうだ! 再生できないんだ! PK行為は良くないんだぞ!」

「それは分かる。ところでお前、こんな町中で、蕎麦を茹でてる最中にワールディング使うとか何を考えていたんだ?」

「はっ! 知れたことじゃないか。パンデミック・チルドレンの力を得て異世界に来たんだぞ! まずはNPCで試さなきゃ……」


 これを後ろで聞いていたソフィが、むっとした。


「その人、悪い人です!」

「そうだな。ジモティであるソフィからしたら困るもんなあ」


 俺は再び石を振り上げる。


「ま、待ってくれえええ!! 何が悪いんだ! NPCなんか幾ら潰してもいいだろ!? この世界は俺たちPCのためにあるんだぞ!!」

「PCに十割蕎麦は打てない。俺の蕎麦のためにご退場願おう」


 俺は握った石でメガネくんをぶん殴った。


「アジャパーッ」


 メガネくんがその衝撃に耐えられず、爆散する。

 全身が、特殊なウィルスに分解され、そして世界に溶けて消えていった。

 ここまで2分間ほどである。


「急いで戻るぞ!! 今なら蕎麦が伸びてない頃合いだ!!」

「こんなに必死なスタン初めて見たわねえ」

「ソバって、そんなにおいしいんでしょうか?」


 かくして初戦をやっつけた俺たちは、蕎麦にありつくのである。

※バイオティクスとキャンサー

 良性腫瘍と悪性腫瘍ですな。世界に巣食う病巣なのだ!


※このキャンサーどもめ!

 思い込み、よくない。


※コンボ

 中2な名前をつけて盛り上がろう!


※刺属性

 他のゲームの攻撃も、別のゲームのキャラに加えられると、受ける側のシステムにコンバートされる。


※攻撃は最弱でいい

 再生すると、1d10しかHPがないのです。


※感染率が100%

 感染率は超能力を使っても増えるし、再生しても増える。増えすぎると再生できなくなって、しかもゲーム終了時も100%超えたままだとキャンサーになってしまうのだ!

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