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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
3,0.プロローグ:シナリオ『神州に暗躍する影を討て』
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俺、神州上陸とともに新しいシステムを発見する

 島が見えてきた。

 明らかに富士山っぽいのとか、真っ赤ででかい鳥居が見えるので、まあ日本。

 つまりは神州到着なのだ。


「入り口からサービス精神旺盛だぜ……! 属性てんこもりじゃないか」

「スタンさん、石像が見えます。ここから見えるって、凄い大きさなんじゃないですか?」

「ありゃ仏像だな。神州はどこにでも、仏像と鳥居があるんだ」


 鳥居はトリイゲートと言い、神州の支配者にしてニニギ直系の子孫である神帝の威光を示している。

 それと同時に、魔なるものを寄せ付けない結界となっているのだ。

 これが多いから、異貌の神はおいそれとこの国に入れないのかも知れないな。


 俺が神州サプリメントブックから得た情報を話すと、仲間たちは「ほおー」と感心した。


「スタンは戦士のくせに、よくそんな知識あるわよねえ。あたしは全然知らなかったわー」

「うむ。ゴールが何も知らないのは日常茶飯事だからな。俺は全然驚かないし、イラッともしないぞ」

「なにぃーっ! 何を心が広そうな事言ってるのよー!!」


 むきーっと怒るヴァルキュリア。


「ま、それくらいの情報、グラムフォース本部に問い合わせればいつでも分かるんだけどね……!」


 ドヤ顔で可愛くないことを言うエルフの人。


「ただ、あまり頻繁に報告以外で通信すると上司がね、怒るのよ……」

「あっ、上司は怖いタイプなのか」

「怖いよう」

「気持ちは分かる」


 エリリンの肩を叩き、同情の意を示す俺。

 元の世界にいた頃の俺を思わせる。他人事とは思えん。

 エリリン、出世を諦めると、上司の言葉は聞き流せるようになるぞ!


「スタンさん! 到着しますよ!」


 そこへ、ソフィが弾んだ声を掛けてきた。

 彼女は船べりに身を乗り出して、神州への到着の様子を見つめている。

 この国は鎖国をしているから、俺たち外国人は基本的に自由には出歩けない。

 ごく一部の、外国人居留区域にいられる程度なのだ。


 無論、そんなルールを守っていてはゲームにならない。

 ラグナロク・ウォーでは、必ず事件が起きて、外国人に関する決まりはウヤムヤになる。

 今回も命題が働いているから、絶対に事件が起こるぞ。


 外国人居留区……つまり出島だ。

 出島のでかいやつだな。

 色んな人種が、わーっと出島に降りていく。

 こいつらの多くは労働者。船に乗ってた商人が召抱えている連中だ。

 一部は、金持ちが道楽で観光に来たようなのが混じってる。

 俺らもそれの同類扱いだ。


「おほー! 異国情緒!!」


 エリリンが文字通り飛び上がった。

 懐から、何か怪しい機械を取り出した。

 それカメラだろ。


「ねえ、このエルフ何してるの?」

「珍しい風景を撮影してるんだろ。この世界では現像技術とかどうなってるんだろうなあ。っていうか絶対あれデジカメだし」

「でじかめ?」

「うむ。この辺り、珍しい建物が並んでるだろ? 神州の建築物だ。これは大陸には無いから、絵に書いたりしておけば、戻った時に自慢したり、高く売ったりできるかもしれない。その絵を一瞬で書いてくれる機械みたいなもんだ」

「へえー! エリリンさん、凄いんですね!」

「へ!?」


 いきなり背後から褒められて、エリリンが挙動不審になる。

 褒められ慣れてない人の動作だ。

 なんて親近感を覚えるエルフだ。


「あ、ねーねーみんな、あっちから美味しそうな匂いするんだけど」


 ゴールが鼻をひくひくさせて、何かに気付いたようだ。

 ほう、この匂いは、蕎麦かな?

 俺たちは匂いのする方向へやって来る。

 そこには、外国人向けの店があり、蕎麦を出していた。


「いらっしゃい!」


 神州語で出迎えてくれる、蕎麦屋のおっちゃん。

 彼も、居留区への出入りを許された選ばれた蕎麦屋であろう。

 きっと只者ではない。


「おいみんな。食べられないものはあるか?」


 注文するに至り、仲間たちに好き嫌いを尋ねる。

 蕎麦初体験であろう彼女たちに、いきなり嫌いなものを食べさせ、和食に悪いイメージを抱かせてはいけないからな……!


「何でも食べるわよ!」


 ゴールはそうだと思った。


「ええと、私、あんまり色々な食べ物って口にしたことが無いので……」


 ソフィは常に味覚の冒険状態だからよし、と。


「神州の食事!? えっと、えっと、じゃあ、サシミ!」


 エリリンは何か勘違いしてやしないかね?

 とりあえず全員大丈夫そうだ。

 では、ちょっと豪勢に行くとしよう。


「おやじ、かき揚げそば四人前だ。それと山菜」


 俺が告げると、蕎麦屋の親父の目が見開かれた。


「おめえ……蕎麦が初めてじゃねえな?」

「仕事明けによく食ったもんだ……」

「いいだろう。外人にも通がいるってこったな。だが、おめえが今まで食った蕎麦よりも、ずっと美味え蕎麦があるってことを分からせてやるぜ!」


 蕎麦屋の親父、目をギラつかせる。

 ほう、凄まじい気迫だ。

 この男、蕎麦屋としてはレベル10を遥かに越えている可能性がある。

 上級冒険者クラスの蕎麦屋だな……!

 この店は当たりだ。


「ねえ、座んなさいよスタン」

「あ、すまん」


 上がりが出てきたので、こいつをふうふうやりながら飲むことにする。

 俺たちの目の前で、親父は蕎麦を掴んで湯の中にくぐらせる。

 豊かな蕎麦の香り。


「……おい、まさか……まさかこれは」

「へっ、分かったかよ。十割蕎麦だ」

「なん……だと……!?」


 衝撃を受ける俺。

 それって現実で食べると、ちょっとお高い上に、なかなか売ってないやつじゃないですかー!

 ワクワクのドキドキだ。


「スタンが興奮してるってことは、これって何か凄く美味しいものが出てくるってことよね! んじゃ、あたしも期待するわ!」

「美味しいもの……美味しいもの……」

「神州料理! ワンダホー!」


 三者三様の反応だな。

 だが、期待するだけの価値はありそうだぞ。

 俺たちは、蕎麦の茹で上がりをじっと待つ……。


 その瞬間。

 世界の色が変わった。

 灰色の世界が背後から展開してきて、世界を埋め尽くす。

 親父の動きが止まった。


「なにっ!? こ、これは……」


 蕎麦屋の客も、誰も動いてはいない。


「スタンさん、これって、もしかして!」

「いるわね、何か」

「蕎麦を茹でている最中にか……!!」


 俺は怒りながら立ち上がる。

 ゴール、ソフィも続いた。

 だが、エリリンは立ち上がらない。

 っていうか固まってる。


 おいぃ!!

 お前NPCなんかよ!


 っていうか、この反応。

 NPCを行動不能にし、擬似的に世界を停止させてしまうこれは、覚えがある。


 特殊なウィルスに侵され、超能力者として覚醒した人間たちの戦いを描くTRPG、『パンデミック・チルドレン』

 そこに登場する、超能力者は『覚醒者(アウェイカー)』と呼ばれ、覚醒者ではない存在を無条件で無力化できる。

 世界を塗り替える力、ワールディングだ。


 何者かがワールディングを使ったな?


「行くぞ、ゴール、ソフィ。蕎麦が伸びる前に、状況を片付ける!」


 時は、一刻を争うのだ……!

※フジヤマ 仏像 鳥居

間違った日本観満載である。


※外国人居留区

つまり、出島


※蕎麦屋の親父

この男……できる……!


※パンデミック・チルドレン

それは裏切りを意味する言葉……! な世界の冒険の始まりです。


※NPC

まさかの!!

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