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グラムフォース、英雄について聞き込みを行う。

特別編!

 私の名はエリリン・マンデー。

 有能なるグラムフォース所属のエージェントにしてエルフだ。

 偉大なるハイ・エルフ、ゲルズの命を受け、今私ははぐれヴァルキュリアとはぐれエインヘリヤルを追っていた。


 彼らの痕跡を追い、途中で立ち寄ったのは湖のある街だった。

 果たして、エインヘリヤルがこの街で何を行ったというのか。

 私は街の人々にインタビューしてみることにした。


「ちょっといいですかー?」


「はいはい。ひええ、綺麗な人だあ。俺に何か用かい」


 ふふふ、エルフである私は、人間を超越した美貌を持っている。

 年齢だって、エルフの中ではピチピチの134歳だから、これはまだ乙女と呼んで差し支えあるまい。

 私は小躍りする気分を抑えつつ、彼に質問を続けた。


「あのー、この街で最近、異変が起こったりしてました? あ、異変って言うのはですね、例えば異貌の神ィーッ! っていう感じのヘンテコなのがわーっと押し寄せてきたりとか」


 うまい言い回しが見つからない。

 もっと分かりやすい言葉は無いものか……。


「ああ、あったあった!」


「あったの!?」


「あったぜー! もうね、湖から街を埋め尽くすほどの魚人間が飛び出してきてなー。あの時はもう駄目かと思ったよお」


「ふむふむ、それでそれで?」


 私は聴き込んだ情報を、レセプターに記録していく。

 私たちエルフのレセプターは、額とは行かずに腕についている。

 本物ほどの性能はなく、デミ・レセプターとでも言おうか。


「そこにやって来たのが、あの騎士さ! 遊歴の騎士スタン! いやー、すごかった! 痺れたねえ!」


 彼は腕組みをして、うんうんと頷く。


「群がってくる魚人間を、斬って斬って叩き斬り、まるで踊るみたいな光景だったぜ!!」


「名乗ったんですねえ。ほえー」


「そうさ! フールでは、すっかりあいつの話でもちきりさ! 話を集めてる吟遊詩人が嬉しそうにこの話を書き留めてたよ」


 その後、街の様々な人間たちに聞き込みを行ったが、誰もがあのエインヘリヤル、スタンを褒め称えた。

 まるで、街の人間が集まった所で、見せつけるようにエネミーを倒したようだ。

 それに、例え下等なエネミーである深淵のものとは言え、たった一人でそこまでの短時間で全滅させるとは……。

 話半分としても、スタンは十秒間で二十体の深淵のものを片付けていた計算になる。

 それを三十分ほど続けたそうだから、休み休みとしてもたった一人で三千匹のエネミーを討滅したと。


「エインヘリヤルとしても尋常な強さではないわねえ」


 最後にインタビューしたのは、漁師の男の子。

 正直、私の好みな感じのワイルドな少年だったんだけど……どうやら探索者として目覚めているみたい。

 ああ、探索者じゃなかったらご飯に誘うのに!

 探索者相手だと仕事になっちゃうじゃーん!


「? 俺になんか用? え? スタン? いや、知らねえけど……。あ、ソフィが言ってたあいつの師匠か! ちょっとだけ見た。っていうか、あの邪神をぶっ倒した矛を片手で受け止めて消しちまうんだよ。もうあいつ一人でいいんじゃないかな。ところでソフィってのが俺と同い年くらいなのに頑張っててさ。あれで旅してなかったら、ほら、嫁さんにほしいなって……いやいや! 俺、あれだからな? ほ、惚れてないからな!?」


「あー、はいはい。ソフィかあ……」


 私の好みどストライクな少年のハートを奪ったという探索者の女……?

 おのれ。

 じゃないじゃない!

 邪神を倒した矛というのは聞き捨てならない。

 それは恐らく、ユニークアイテムのことだろう。

 湖対岸にある入江に、邪神は現れたのだという。

 だが、そこには何の邪悪な気配も存在しない。

 異貌の神が降り立った土地にありがちな、異世界的な汚染も無い。

 それだけの力をもたらした矛を、軽々と扱う男。

 想定以上の力を持ったエインヘリヤルが、命題も持たずにこの世界をうろうろしているのだ。

 これは一大事だ。


 ということで報告を行った私だったが、ゲルズからはあっさりと次のオーダーが下された。


『戻って来ずに、エインヘリヤル・スタンを追うように』


「ええっ!? まだ仕事しなくちゃいけないんですか!?」


『見つけられぬ場合、世界の一大事だぞ。貴様のレセプターを取り上げるぞ』


「ひい、やめてくださいゲルズ様! 私、ただの可愛いエルフになっちゃいます!」


『うむ、その図太さなら大丈夫だろう。行け、エリリン。エインヘリヤル・スタンとなんとしても接触するのだ』


「ふぁーい」


 泣きそう。

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