表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
2,5.ミドルフェイズ:シナリオ『シュヴィーツ湖王国に降り立った異貌の神を倒せ』
46/72

英雄の弟子、漁師ゴメスの家を訪問する

「いたぜ! さっすが、地元の漁師だな。先に到着してるぜ」


 アンネが告げた。

 彼女の視線の先、そこだけ霧が薄くなっている場所があり、ドゥーズが放った精霊が光を放っている。


「ドゥーズさん、目印になってくれたんですね。精霊って凄いなあ」

「そりゃあな。てめえの命を半分与えながら飼ってるんだ。代償がでかいぶんだけ、精霊使いの力ってのは凄ええのさ。だけど、おいらのキャバリアだって負けちゃいないぜ?」

「うん、アンネさんも凄い!」

「うっひっひ」


 嬉しそうにアンネが笑う。

 調子に乗ってか、キャバリアが加速した。


「ちょ、ちょっとアンネさん! 眼の前にドゥーズさん達がいるのに!」

「見てなって! あらよっと!」


 加速したキャバリアは、後輪を滑らせながら反転していく。

 真横を、目を丸くしたドゥーズの顔が通り過ぎる。

 キャバリアはその後、舟と頭を並べる形で停止した。


「どーよ!? 超絶テクでしょ!」

「は、はえ~」


 ソフィは目を回してしまった。

 真っすぐ走っていたキャバリアが、加速からの反転、そして急ブレーキしながら滑りって停止したのだから無理もない。

 馬では出来ない挙動なので、こんな動きに対応できる人間は、ミズガルズにはほとんどいない。


「竜騎兵、無茶をするな。失敗したら湖に落ちていたぞ」

「う、うるせえ!」

「大体、そうやって無駄に技量を見せつける必要が……」

「す……」

「す?」


 ドゥーズは、すぐ後ろから聞こえた声に振り返った。

 そこには、目をキラキラさせたフォルトがいた。


「すっげー!! アンネすげえー! かっこいいー!!」

「っ……だ、だよな!? おいらすげえよな!?」

「ううー……目が、目が回る……」

「ああ、もう。好きにしてくれ」


 しばらく、その場は落ち着きそうになかった。




「ここが、ゴメスの家だぜ。この辺りでも嫌われ者でよ。てめえの漁場はここだ、とか言って、誰もそこに入らせなかったんだと」

「嫌われ者、ねえ」


 アンネは周囲を見回して、顔をしかめた。

 周囲はゴミだらけ。

 魚の骨であったり、破れた網であったり。

 それらが片付けられることもなく打ち捨てられていた。


「こりゃ、嫌われるわな」

「く、臭い」


 アンネは露骨に鼻をつまみ、ソフィは顔をしかめた。

 

「そう。だらしないやつなんだ。でも、すげえ欲ばっかり深くてさ。だけどゴメスの親父がこの辺の網元だったから、持ってる漁場は広いんだよ。あ、湖のどこで漁をするってのは家ごとに決まっててな?」


 フォルトが説明をしながら、ゴメスの家の扉に手をかける。


「気をつけろ。ゴメスとやらが異貌の神と繋がっているのなら、奥に何がいるか分からぬぞ」

「おっ!?」


 ドゥーズの注意を受けて、慌ててフォルトが扉から離れた。

 背負った銛を取り出して、柄の方でコンコン、と扉をノックする。

 ……。

 何の反応もない。


「フォルト、構わん。当方が支援する。開けるがいい」

「お、おう!! ソフィもそれでいいか?」

「あ、うん、お願い!」


 何らかの決定的な行動を取る際、フォルトはソフィの意見を伺う。

 彼なりに、このパーティの中心が誰なのかを理解した上での行動だ。


「フォルト、手を出せ」

「お、おう」

「……特技、精霊纏衣」


 ドゥーズの指先から、フォルトの腕に精霊が乗り移る。


「遅発式の精霊による魔法だ。攻撃されたら、その腕を先に突き出せ」

「わかった!」


 万一の時の保険をもらい、フォルトは扉に手を掛けた。

 グッと力を込め、開く。


「鍵が掛かってねえ……」


 扉の奥からは、生臭い臭気が漏れ出してきていた。

 外のゴミ溜め同様、屋内もゴミだらけだ。

 中に、誰もいる様子はない。

 フォルトはホッとしたようで、「な?」と言いながら振り返った。

 だが、仲間達は、誰も安堵の表情など浮かべてはいない。

 彼らの目は、屋内にあるたった一つのものに注がれていたからだ。


「異貌の神の……像」

「間違いあるまい」

「ゴメスって奴が、今回の黒幕かよ」


 三者三様に、だが、皆それが何なのかを正確に理解している。

 ゴミ溜めの中から突き出した、人とも魚とも分からない、異様な風体の彫像。

 顔は潰れた魚のようで、しかし人間だと分かる程度には鼻や耳の形を残している。

 水かきの出来た指を広げながら、今にも掴みかからんばかりのポーズで形作られたそれは、実に禍々しかった。


「いつから、ゴメスは異貌の神を信奉していたのだ?」


 いつの間にか、フォルトを追い越してドゥーズが屋内に踏み込んでいた。

 彼が触れるゴミが、雷の精霊に弾かれて、焦げた匂いを漂わせる。

 ドゥーズは異貌の神の像に指を伸ばすと、


「雷精よ、あれを壊せ」


 そう命じた。

 精霊使いの手から、金色の精霊が飛び立つ。

 まるで輝く鞭のように、それは彫像を打ち据え、破壊した。


「おうおう、ドゥーズが荒ぶってるぜ。あいつの精霊が怒ってるのが、おいらにも分からあ。だけど、今回ばかりはおいらもドゥーズに賛成だな。異貌の神の代言者になった奴を放って置く訳にはいかねえからな」


 アンネのキャバリアが、高くエンジン音を響かせた。

 家の中に、ゴメスはいなかった。

 だが、彼が異貌の神を信奉し、代言者になったことだけは明らかである。

 それは即ち、今回の霧と、フールの街を襲った異変の原因の一端がゴメスにある事を示している。


「それじゃあ、ゴメスさんを探そう、みんな!」


 ソフィの言葉に、一同は頷くのだった。

※ゴミだらけ

 今で言うゴミ屋敷である。


※異貌の神の……像

 ふんぐるいふんぐるい

(ちなみに今シナリオで、クトゥルフ神話が攻めてきたぞ!は一時休止、別のゲームが攻めてくる予定です)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ