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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
2,5.ミドルフェイズ:シナリオ『シュヴィーツ湖王国に降り立った異貌の神を倒せ』
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俺、弟子のパーティと合流しようとする

 漆黒のヴァルキュリアを片付けたのだが、霧が晴れる気配はない。

 この霧、朝しか出てこないんじゃなかったか?


「うひー。スタンにランチャーぶっ放した時よりスッキリしたわー。スタン、どれだけ撃っても全然通らないんだもん。どんだけ皮が分厚いのよ」

「俺の防護点はかなり凄いからな。ちなみに短時間ならもっと固くなるし、さらにダメージ減少も出来るぞ。レベル上がってきて、取りたい特技を取り尽くしたので装甲を固くする特技をさらに取ったのだ。でも、お前の攻撃、俺に通ったぞ。どんだけ超火力なんだよ」

「いひひ。あたし、名前付きの13人の中で最高の火力だからね。ぶん殴ること以外はそこそこしか出来ないけど、そっちだけなら誰にも負けないわね」


 そうかそうか。

 ってか、名前付きのヴァルキュリアって13人もいるのか。

 それが始まりの姉妹って言う、漆黒のヴァルキュリアが口にしてたカテゴリーの連中だったんだな。


「あたしがやり合って危ないのは、三人かなー。長姉のブリュンヒルドと、レギンレイヴ、ヘルヴォル・アルヴィトル。真っ向から戦えば、十回に六回はあたしが勝つ」

「へえ、拮抗してるじゃないか」


 だが、つまりゴールは、ヴァルキュリアの中では最強クラスという話で落ち着くのだろう。

 だから、漆黒のヴァルキュリアは異貌の神に魂を売ってまで力を得たが、それでも相手にはならなかった。

 ミズガルズにおけるヴァルキュリアの力関係とか、バトル大好きな俺はとっても興味があります。


「しかし今はソフィに合流するのが大事だな」

「そう、それ。あたしもそれが言いたかった。いやあ、変な邪魔で時間取られたわ。スッキリしたけど」


 俺たちは霧の中を、てくてくと歩く。

 どうも、この霧は方向感覚を失うな。

 ちょっと足を進めたら、びちゃりと水に触れた。

 どうやら湖に向かって歩いていたようだ。

 進行方向を変えて、また歩き出す。


「なーんで霧が晴れないのかなー」


 ゴールが顔をしかめている。

 距離を取ると、離れ離れになりそうなので、俺と彼女で肩を並べて歩いているのだ。


「誰かさんがやっつけた怪獣は、実は霧を起こしてる本当に悪いやつを止めようとしてたのかも知れないわねえ」

「なんという当てつけ」


 だが仕方がなかったのだ。

 ゴールが世界中にばら撒いた、俺のユニークアイテムは、回収しないと何が起こるか分からないからな。

 そっとキャラクターシートを展開し、付属するアイテム表を見る。

 そこには、小さな切れっ端が浮かんでおり、大鮫の矛、と記載されている。

 この武器は何気に和風の由来を持っていて、因幡の白うさぎに登場する八尋和邇(やひろわに)の武器なのだよな。

 なので、すばしこくて回避が高い奴を追いかけてぶち当てるのは得意だぞ。


「霧が隠れたままでは、黒幕が何者か調べるのが大変だったかも知れない……。俺はこの矛を回収することで、黒幕を動きやすくし、奴の尻尾を掴む機会を増したのだ」

「口が上手い……!! この男と口プロレスしたら負ける……!?」


 ゴールが戦慄を覚えたようだ。

 なんでそこを恐れる。

 さて、歩いて歩いて……。

 そろそろ、ゴールが狼藉を働いた家がある辺りだ。

 もう、霧が濃くなってきて一メートル先くらいしか見えない。

 俺は手探りで、家の扉を探り当てた。


「おお、あったあった。こんにちはー」


 コンコンっとノックしてみる。

 すると、扉が少しだけ開いた。

 その隙間から、ギョロリとした魚みたいな目がこっちを見る。


「どなた、でずが」

「ソフィって言う、これくらいの身長で村娘っぽいジャンプスカート姿の女の子がね、いたと思うんだけど。あと、ローブの怪しい精霊使いとちんまい竜騎兵」

「あーあー。うぢにどまっで、いぎまじだ。むずごど、いっじょにででいぎまじだ」

「あ、そうですか。どっちに行ったんですかね?」

「ええど、あっぢ……」

「こりゃどうもご親切に」


 俺が戻ってくると、ゴールが呆れた顔をしてこっちを見ていた。


「明らかに相手が人間じゃなくなってても、普通にフレンドリーなのねえあんた」

「俺は人を見た目で判断しないんだぞ」

「その言行一致ぶりは立派だわ」

「人間も異種族も、見た目以外は大体同じだからな」

「それはある意味凄い偏見よね」


 俺達は相変わらず、ぺちゃくちゃと無駄話をしながら、教えてもらった方向に歩くのだ。

 しかし、あの家の息子さんとソフィが一緒とは。

 ……心配だ。

 なんだかよく分からん種類の心配が、俺の胸にこみ上げてくるぞ。

 ソフィ、よく知らん男と付き合ってはいかんぞ……!!


「何焦ってるのよ。あ。あの家の息子とか言うのと、ソフィが一緒だから焦ってんの? 何よあんた、父親でもあるまいし」

「くっ、楽天的な……!」


 俺が早足になる横で、ゴールもまた歩みを早める。

 ニヤニヤ笑いながら、俺をからかってくる。

 ええい、なんて性格の悪いヴァルキュリアだ。


「どっちにしろ、大丈夫でしょ。他に二人の探索者がいるんだし、それにあのソフィが、道案内だとしてもただの人間を連れてくとは思えないな。多分、その息子とか言うの、探索者に目覚めたんでしょ」

「そうだとしてもだな……。ああ、心配だ心配だ」

「この男、身の安全を心配するんじゃなく、貞操を心配するっていうね」


 俺達は騒がしくしながら、より霧が濃い湖の畔へと歩んでいくのであった。

※名前付きの13人

 ネームド・ヴァルキュリアはいわゆるオリジナルのヴァルキュリア。

 現存するのは13名中数名と言われており、ゴールもその一人。


※八尋和邇

 因幡の白うさぎで、ウサギから毛皮を剥いでしまった鮫のこと。

 ワニザメだと言われているそうな。


※よく知らん男と付き合ってはいかんぞ

 お父さんは心配症

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