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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
2,5.ミドルフェイズ:シナリオ『シュヴィーツ湖王国に降り立った異貌の神を倒せ』
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英雄の弟子、湖畔に消える舟を見る

「ヤーハーッ!! 行くぜえ!!」


 アンネが叫び、岸辺を疾走する。

 腰の後ろから取り出したのは、大型の銃。その銃身を切り詰め、取り回しを良くしたものだ。

 その代りに命中率は下がるが、


「なあに! その分は腕で補う! 親父が言ってた!!」


 射撃音が響く。

 近くまで迫っていた深淵のものが、肩を撃ち抜かれて呻き、仰け反る。

 更に、アンネはキャバリアを操作していたもう片腕も自由にし、太ももに装備していた小型の銃を抜き打ちに放った。

 その間も、キャバリアは縦横無尽に戦場を駆け回る。


「歌え、精霊よ。その稲妻を纏いて踊り狂え。喜べ。貴様らと当方の仇敵は、今目の前に」


 ドゥーズが高らかに唄う。

 低い声音と共に、精霊使いの周囲で金色の精霊たちが出現する。

 スタンと相対した時とは違う。

 怒りの表情をむき出しにした精霊が、次から次に浮かび上がる。


「行け。精霊群舞……“散雷”!」


 横薙ぎの稲妻が生まれた。

 それが、迫る深淵のものを薙ぎ払っていく。


「す……すっげえ……」


 呆然と立っているフォルト。

 まだ探索者になりたての彼は、戦ったことなどない。

 戦闘に慣れた二人の先輩探索者の働きぶりに、呆然とするばかりだ。


「フォルトくん、ドゥーズさんとアンネさんが止めきれなかった相手は、お願いしていい?」

「お、おう!」


 ソフィの言葉で、フォルトは我に返った。

 すると、ちょうどのタイミングで探索者達の猛攻を抜けたエネミーが向かってくる。

 彼らの目的は、上陸と地上への浸透だ。

 探索者達を振り切り、街へと入り込もうというのである。


「させねえ!!」


 フォルトが走った。

 その足が、空を蹴る。

 すると足元がまるで水のように揺れ、波紋が生まれる。

 フォルトの体が、水中を泳ぐように空に舞い上がった。


『!?』


 深淵のものは、眼の前から少年が消え、一瞬戸惑ったようだ。


「おらあっ!!」


 その頭上から、銛が突き入れられた。

 技は未熟で、攻撃の入りは浅い。

 だが、フォルトは無意識の内に特技を使用したようだ。

 これは、スタンが使っていたものと同じ。特技、強打。

 深淵のものから、緑色の血がしぶいた。

 それでも、敵の動きは止まらない。


「……!!」


 ソフィは腹を決めた。

 握ったアゾットに力を込める。

 自分の手を下す事が、なんだ。

 スタンは前に立ち、恐ろしい敵を次々に薙ぎ払っていたではないか。


「えぇいっ!!」


 体ごと突き出したアゾットが、伸ばされた深淵のものの腕を突き刺し、やすやすと切り落とした。

 そして、ユニークアイテムの鋭い刃は、エネミーの胸部を打ち抜き……その体内から、爆発的な魔力の輝きを放った。


『ギャバーッ!!』


 深淵のものが、光に呑まれて消滅する。


「や、やった……!」

「すげえ! あ、あんた、俺と同じくらいの年だと思ってたのに、凄いんだな!」


 フォルトから、尊敬の視線を向けられる。

 だが、その間にも敵の動きは止まらない。

 次々と、深淵のものは押し寄せてくる。

 それはまるで、後ろから何者かに追いやられるかのようだ。


「行け、精霊達よ! 打ち払え! 薙ぎ払え!」


 次々に深淵のものを焼き払うドゥーズ。

 だが、その魔力も無限ではない。

 彼の顔に、脂汗が浮かんでいる。

 魔力の枯渇が近いのだ。


「おい、一回引っ込めおっさん!」


 アンネが駆け寄り、ドゥーズ目掛けて薬瓶を放った。

 MPポーションだ。

 しかも、効果が高い特別性。

 言うなれば、ハイMPポーションとでも言おうか。


「引っ込めだと……?」

「魔力切れの精霊使いなんざ、足手まといだ! 戦線はちょっとならおいらが支えてやる! 竜騎兵の戦い方ってのを見せてやるよ!」


 そう嘯くと、アンネはキャバリアを駆る。


「行くぞ、おいらのキャシー!」


 愛称を呼ばれ、キャバリアは高らかにエンジン音を響かせた。

 押し寄せる深淵のものに向かって、機械のボディが突っ込んだ。


「アンネさん! 攻撃の補助を!」


 ソフィが特技を使用した。

 白魔道士のレベルが上がり、新たに獲得した攻撃補助の特技だ。

 己の攻撃を放棄することで、その分の力を対象にもたらす。


「感謝! 力がみなぎるぜ!!」


 キャバリアが、敵の集団を前にして、スピンした。

 意図した動きだ。

 跳ね上げられた後輪がエネミーを撃ち、アンネの両手に握られた銃が火を吹いた。

 片手の銃を放つ内に、もう片方の銃の弾丸を装填する。

 アンネの銃弾は通常以上の力を発揮し、炸裂した深淵のものを撃ち倒す。


「まだか精霊使い! 流石にそろそろきっついぞ!!」

「うむ。お前が作った時間は有用だった。踊れ、雷精」


 前に歩み出たドゥーズの全身から、精霊があふれ出した。

 それが、残る深淵のものどもを次々に薙ぎ払っていく。


「おほー! さっすが、燃費最悪の精霊使いだ。破壊力だけは超一流だな!」

「口の減らぬ竜騎兵だ」

「み、皆さんお疲れ様です!」


 ぱたぱたと近づいてくるソフィ。

 そして彼女は、霧の向こうを見た。

 エネミー達がやって来たであろう、湖の彼方。


「舟がいます……!」


 ソフィの言葉に、フォルトが反応する。


「舟だって!? あいつは……ゴメスのところの舟だ……!!」


 新たな情報が、転げ出てきたようだ。

※太ももに装備

 そういうホルスターで、女性銃使いのお約束。

 両方に装備してある。


※アゾット

 ソフィ初キル!


※ゴメスの舟

 核心的情報である。

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