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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
2,0.プロローグ:シナリオ『シュヴィーツ湖王国に降り立った異貌の神を倒せ』
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俺、今回の探索者全員を確認する

「エインヘリヤルだと……? そんな馬鹿な。それは伝説上の存在のはずだ」

「それはね、あたしが保証するわ。ほれほれ、あたしの格好を見て。何なのか分かるでしょ」

「……そんなまさか……。ヴァルキュリア……だと……!?」


 この精霊使い、気持ちいいくらいに驚いてくれるな。

 俺もゴールも、かなり得意げな表情になっていることだろう。


「あの、精霊使い……さん? この人達が言ってることは本当です。スタンさんは、とても強いエインヘリヤルで、ゴールさんも本物のヴァルキュリアです。それで、私がお二人に連れてきてもらってる探索者で」


 ソフィを見た精霊使いは、なるほど、と唸った。


「確かに探索者だ。そして、彼女が保証する以上、お前たちの正体はその通りなのだろう。信じがたい事だが」

「はい。私が受けた命題(クエスト)は、“シュヴィーツ湖王国の、異貌の神を退けよ”です」

「当方が受けた命題(クエスト)は、“異形の姿に変えられた民を救え”だ。目的は同じところにあるだろう」


 精霊使いは納得した。

 彼の目から青い輝きが消え、目の周りの紋様も消滅する。

 彼はフードを脱ぎ、顔を顕にした。

 黒髪に青い瞳の中年に差し掛かるくらいの男性である。


「ソフィです」

「ドゥーズだ。お前が今回の命題における仲間のようだな。しかし、命題を持たぬエインヘリヤルとヴァルキュリアが何故……」


 小柄なソフィと、大柄なドゥーズは握手を交わす。

 ドゥーズが言う、俺たちがどうして参加しているかだが、ありていに言ってしまえば他にやることが無いからだ。

 それに、前回のように、デュナミスとかが出てこないとも限らないからな。

 ちなみに、俺もゴールもニコニコしているだけで、ドゥーズの疑問に答えるつもりはない。

 精霊使いは、解せぬ……という顔をしたまま、俺たちとの同行を認めたようだ。

 事は丸く収まった。

 収まったというのに。


「ええい、待て待てーい! こんな街中で争う奴があるかー!!」


 明らかに状況からワンテンポ遅れた事を叫びながら、ぶろろろろんっというエンジン音と共にやって来た者がいる。

 なんと、頭上からだ。


「うおっ、街の上の方から、屋根伝いに!」


 帝国が開発した二輪車、キャバリアが、跳躍を繰り返しながら近づいてくる。

 乗り手は一見して小柄な奴だ。

 しかし、恐るべき腕前だな。

 次々に屋根を伝い、ついにキャバリアは俺たちの前に着地した。

 エンジンは吹かしっぱなしだ。


「争いはやめろお前らー!! おいらの目玉が茶色なうちは、そんなことは許さんぜー!!」

「いやいや、終わってるから。争いはもう終わってるから」


 威勢よく、エンジン音と共にがなる竜騎兵。皮のヘルメットにゴーグル、そして全身を覆うライダースーツで、どういう人間なのかよく分からない。

 だが、俺の言葉を受けて、彼はゴーグルの奥の目を丸くした。


「へっ!? も、もう終わってんの!?」


 声が甲高い。

 これは女だな。

 案の定、ゴーグルを外した下にあったのは、幼さの残る少女の顔だった。


「あっ、こっちです! 探索者はこっちでーす!」


 ソフィがぴょんぴょん跳ねて、俺の後ろから手を振っている。

 竜騎兵の少女はそっちに気付き、俺とゴールを順繰りに見た。


「へ? この明らかに強そうな男と、ヴァルキュリアっぽい姉ちゃんは違うの? ……まあ、言われてみりゃ、なんでこの男普通の服しか着てない上に手ぶらなのとか、姉ちゃんは不気味な魚の皮をぶら下げてるし、おいらもおかしいと思ったんだよなあ!」


 こいつ、今明らかにその場のノリで物を言ったな?

 竜騎兵だけで、ノリに乗る、か。

 むっ、上手い。


「スタンさんはなんだかニヤニヤしてますけど、私が白魔道士のソフィで、こちらが精霊使いの」

「ドゥーズだ。お前も間違いなく探索者だな」

「おうよ! おいらは竜騎兵二代目! アンネさ!」


 いかんいかん。

 自分のダジャレに満足していたのが、顔に出ていたようだ。

 とにかく、これで今回の事件に関わる探索者が揃ったようだ。

 シュヴィーツ湖王国は、ヴァルキュリアに対する害意も余計な尊敬も無い国だし、ゴールにはそのまま仕事をしてもらおう。


「あたしは隠れなくていいの?」

「うむ、俺達はお手伝いさんとしてだな。今回の事件に関わる……」

「へーへー。スタンってほんと、そういうの好きだよねえ」

「ばっか、強すぎる奴が入ってきて、『全部アイツでいいんじゃないかな』ってなったら興ざめだろ!? その場にいる全員が満足するためにセッションはあるんだ」

「TRPG脳め。でもわかりましたよーだ。あたしもサポートに徹するから」


 それに、俺とゴールの出番は必ずある、と睨んでいるのだ。

 ミズガルズは、俺が知るラグナロク・ウォーのように命題(クエスト)が降りてきて、探索者達は集い、冒険の旅に出る。

 だが、その冒険の難易度が、俺が知るゲームのそれから大きく逸脱してしまっているように見えるからだ。

 俺達二人の仕事は、ゲームバランスをおかしくしてる奴らをぶっ飛ばすことなのである。

※得意げな表情

 二人共とてもいいドヤ顔である。


※エンジン音

 マキナ帝国の錬金術による作品。

 動力は特殊な油と周辺の魔力。

 魔力は正面で吸い込んで排気筒から吐き出す、ジェットエンジンのような構造になっている。

 

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