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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
2,0.プロローグ:シナリオ『シュヴィーツ湖王国に降り立った異貌の神を倒せ』
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俺、湖のほとりをぶらつく

 湖に向かって、街が抉りこむようになっている。

 俺たちは、斜面や階段になった道を、降りていく。

 こんな街の形じゃあ、馬車もなにも入ってこれないだろう。


「きれいな街ですよね……」


 きょろきょろと辺りを見回すソフィ。

 フールの街は、白い石造りの家ばかり。

 統一感があって、確かに見栄えがする。

 放っておくと、ソフィは周りをきょろきょろしたまま進まなくなるので、ゴールが彼女の手を引いた。


「さあさ、先に行きましょソフィ。でも、スタンの話だとこんな坂道と階段だらけの街に、竜騎兵が来たって言うじゃない? こんなの、どうやって走るわけ?」

「熟練の竜騎兵なら、階段だろうが壁だろうが、道と同じように走るだろうな。つまり、やって来ているのは凄腕ってことになる」

「……本当に、スタンさんって何でも知ってますね……。っていうか、今のは分からないことを言い当てたっていう感じです」


 うむ。

 推論と証拠を積み上げて、知識と照らし合わせて、それで真実を導き出すのだ。つまり推理だな。

 俺が持つ、このゲーム世界への知識は結構なものなので、自然、ミズガルズにおいて名探偵になれてしまうのだ。

 ふはははは。


 三人で湖の(ほとり)まで降りてくる。

 漁師の家がいくつもあり、あちこちに桟橋がある。

 それで……漁師の家の扉は、どれも硬く閉ざされている。

 いや、扉が閉じているのは別にいいんだ。

 だが、まだ日が高い昼間だ。

 それだというのに、窓も閉め切られ、まるで息をひそめているかのようだ。


「なんだか、こっちに来たら暗い感じですね」


 ソフィもちょっと戸惑った風だ。


「ちょっと調べてみようか? あたし、こういうの得意なんだけど」


 ゴールが得意げに笑った。

 辺りに人がいないのを確認してから、彼女は変装を解いた。

 体がポリゴンみたいなテクスチャーに包まれると、一瞬でその姿がいつもの戦乙女に変わる。


「じゃあ行ってくるわね」

「おーい、頼むとも何も言ってない……あっ、行ってしまった」

「ゴールさん、行動が早い……」

「ああ。性格に難はあるが、密偵としては世界でも最強クラスだと思う」


 俺が言った直後、向こう側で漁師の家の扉が弾け飛んだ。

 姿を消しているらしいゴールは見えないが……。

 あの戦乙女、なんて大雑把な仕事をするのだ。

 悲鳴が聞こえる。

 その後、どたばたと暴れる音。

 少しして静かになった。


「……いいんでしょうか」

「良くはないなあ」


 だけど、まあ手っ取り早いと言えば手っ取り早い。

 とんでもなくパワープレイだがな。


「ただいま」


 ゴールが姿を表した。

 その手には、奇妙なものをぶら下げている。

 青く、てらてらと輝く魚か何かの皮のような。


「おかえり。派手にやったな。で、それは?」

「怪獣の皮。やり合ったんだってさ。これ、こんがり焼いたら美味しそうね。ちなみにあの家の人間、これを食べたらしくて、近づいてたわよ」

「近づいてた?」


 不穏な台詞が出たぞ。

 ソフィは案の定、理解ができなくて戸惑っている。


「人間じゃなくなりかけてたって事。これ、怪獣が出ただけの話じゃないんじゃない? 第一、どの家からも生臭いにおいがして、ひっどいところだわここ」


 ゴールが顔をしかめた。

 俺にはよく分からないが、彼女には家々から漏れてくる臭いを嗅ぐことができるらしい。

 あの暴力的情報収集は、そのためだったのか。

 全く説明しないから驚いたぞ。


「見に行ってみる?」

「フランクにグロいものを見せようとしてくるなこの女は」

「ソフィも刺激物を見ておかないと後々困るでしょ」

「とうとうソフィをダシにし始めたぞ」

「……い、行ってみます!」


 ソフィがやる気になってしまった。

 ということで、ゴールが暴れた漁師の家にゴーだ。

 そちらに向かってみると、ローブを着た何者かが家の中を覗き込んでいる。


「おや、先客だ」


 俺は前に出た。

 ローブを着た人物に向かって足を進める。


「その家に、何の用だ?」


 ローブ姿が、顔を上げた。 

 フードで頭まで覆っているが、その奥に、青く輝く目玉が見える。

 青い瞳ではない。

 眼球自体が真っ青なのだ。

 そして、目玉を覆うように、水色に輝く紋様が見える。


「あ、精霊使いは君か」

「……!」


 問答無用とばかりに、ローブ姿は俺に向かって指先を突きつけた。

 奴の周囲に、光が湧き上がる。

 それは、蝶の羽を生やした小人の群れ。

 精霊を行使する魔法だ。


「落ち着け。俺も君と同じ、探索者だ」


 エインヘリヤルだけどな。


「探索者……?」

「そう。探索者だ。その精霊魔法を引っ込めろ」

「……証拠がない。それにお前からは、探索者が持つ命題(クエスト)を感じない」


 命題を感じ取れるのか、こいつ。

 精霊使いは緊張を緩めないまま、呼び出した精霊の数を増やしていく。


「命題が無いものは探索者ではない。行け」


 攻撃的な意思を持った精霊が、俺に向かって押し寄せてきた。


「あー、これは仕方ないな」


 俺は精霊魔法に向かって、拳を振り上げた。


「“天罰”だ」


 俺が持つ、神の落とし仔の特技を使用する。そのレベルは10レベル。

 相手の行った判定のダイス目を減少させる。

 そして、その出目が【ファンブル】値になれば……。


「!?」


 精霊たちが、突然消滅した。


「落ち着こうか、精霊使い。悪かった。俺が探索者だってのは嘘だ。だが、敵じゃない。何故なら俺は」


 目を見開き、俺を凝視する精霊使いに、俺は告げた。


「俺はエインヘリヤルでな。この事件、君の手を借りたい」

※テクスチャー

 ヴァルキュリアの特技を使用しているのである。


※皮

 何か神話生物的な皮。


※暴力的情報収集

 ゴール曰く、ヴァルキュリアは拳で語り合う……とかなんとか。

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