表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
2,0.プロローグ:シナリオ『シュヴィーツ湖王国に降り立った異貌の神を倒せ』
36/72

俺、今回のシナリオについて情報を集める

「そもそも、どういうシナリオなんだ。異貌の神がいるっていっても、明らかに平和そうじゃないか?」


 白身魚のムニエルをむしゃむしゃやりつつ、俺は指摘した。

 ゴールはムニエルの二枚目を貪りつつ、もごもご言っている。

 食べてから喋るのだ。


「そうですね……。何も起きていないみたいですし、これから事件が起きるんでしょうか」


 ソフィは、パンをスライスしたものにムニエルを乗せて、むしゃむしゃやっている。

 これはこれでお上品な食べ方ではないのだが、この間まで普通の村娘だったのだ。

 マナーについてとやかく言わなくていいだろう。

 それに、このレストランはそんなお行儀がいいところじゃない。

 みんなぺちゃくちゃ喋りながら、パンでスープを拭ったり、ムニエルを手づかみで食べてたり。

 そうそう。

 このレストラン、ナイフとスプーンしか無いんだ。

 フォークがない。


「まあ手づかみでいいやな」


 むっしゃむしゃとムニエルを食う俺たち。

 指先は、パンで拭うのだ。


「よっしゃ、ちょっと情報収集してみるか」


 俺はウェイトレスさんを招いた。


「はーい」


 俺を一回追い出した彼女がやってくる。


「ムニエルあと三枚。あと、聞きたいんだけど」

「よく食べるわねえ。はい、なーに?」

「このフールの街で、最近変わったこととか無いか?」

「あるわよ」

「まあそんな簡単に話を聞けるはずはないよなあ。変わったことなんて……あるのか!?」


 ウェイトレスは頷いた。


「パスガー湖にね、出たのよ。怪獣」

「怪獣?」

「おうおう、そうよ!」


 周りで飯を食っていた客が、こっちを向く。


「ここ一月ばかりな、湖には化物が出るんだ。おかげで、朝一の漁に出ることができねえんだ」


 どうやら漁師だったらしい。


「朝ってことは、その時間に怪獣が?」

「そうだ。ぶわーっと霧が出てな。霧の中にそいつが浮かび上がるんだ。で、近づくと船をひっくり返されちまう」

「ははあ。怪獣には敵意があるってことか」

「ああ、ありゃあそうだな。俺の仲間は何人か食われたよ。だが、あいつは昼間になると出てこねえ」


 ソフィが目を丸くしていた。

 俺が、ウェイトレスや客から、どんどん話を聞き出しているからだろう。

 これはちなみに、俺の聞き出す技術が優れているというわけではない。

 神の落とし子(バスタード)のクラスの自動取得特技、天啓を応用しているのだ。

 これは、イエス、ノーで答えられる質問をGMにすることで、情報を得ることが出来る特技だ。

 実際に現実で使ってみると、こうなるんだな。

 こっちがする質問に対して、立て続けに答えが帰ってくる。

 天啓は、シナリオ中三回制限だったが……。

 多分、この状況下での情報収集を全部合わせて一回、ってところか。


「どんどん情報が集まりますね……。スタンさん、話が上手かったんだ……」

「あいつ、腐っても最強のエインヘリヤルだからね。あの領域に達するまでに、色々寄り道して便利な能力を持ってたりするのよ」


 その通りだ。

 俺は、飯を食いながら、店にいる人間全員から話を聞き出した。

 今、この街フールでは、突如、船をひっくり返す怪獣が現れた。

 姿形は霧の中に隠れて分からない。

 だが、それは朝、普段であれば早朝の漁をする時間にパスガー湖に現れる。

 船を攻撃することから、湖を行くものに敵意を持っている。

 そして……こういう情報収集をするのは、俺が初めてではない。


「入れ墨をした男と、ドラグーンが話を聞きに来たらしい」

「ドラグーン……?」

「バイク……って言っても分からないだろうな。竜騎兵と書くんだが、錬金術で生み出された二輪の乗り物で戦闘をするスペシャリストだ。また、帝国側の探索者が絡んでいるらしいな」

「相変わらず、即座に相手の素性を見抜くわねえ」

「伊達に何年もこのゲームを遊んでない。刺青の男は、恐らくは精霊使い(エレメンタラー)だろう。精霊使いは異貌の神の敵対者だ。間違いなく、この件は異貌の神案件。ソフィの命題(クエスト)ど真ん中だな」


 食事を終え、外に出てくる俺たち。

 時間は昼過ぎだ。

 とりあえず、この街にやって来たという二人を探すとしよう。

 間違いなく、二人とも命題(クエスト)に導かれた探索者だろう。


「いやあー、食った食った! お腹いっぱいだわあ」


 ゴールが大きく伸びをする。

 昼休憩だろうか、行き交う街の人間が多い。

 男たちは、皆、ゴールをチラチラ見る。

 中身を知らなければ、神秘的な雰囲気を持った、とびきりの美女だからな。

 その実、残念ヴァルキュリアなのだが。


「私も、お腹いっぱいです。美味しかったです。それで……これからどうするんですか?」

「お、積極的だなソフィ。いいことだ。ちなみに今の情報収集は、君にも同様の特技があって、チャレンジすることが出来る。今度やり方を教えよう。さて、これからだが」


 俺はちょっと芝居がかった喋り方をした。

 何しろ、状況は俺がイニシアティブを握っているのだ。

 気分がいいぞ!

 まるでパーティリーダーじゃないか。


「実際に、パスガー湖に行ってみよう。現地を調べるんだ」

「はいっ」

「うーい」


 俺の後についてくる、ソフィと不良ヴァルキュリアなのだった。

※ドラグーン

 竜騎兵と表記されるクラス。

 戦闘用バイクである、キャバリアに乗っての騎乗戦闘を主とする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ