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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
2,0.プロローグ:シナリオ『シュヴィーツ湖王国に降り立った異貌の神を倒せ』
35/72

俺、服を常備化する

第二シナリオ、スタートです。

 シュヴィーツ湖王国。

 ドミー男爵領の南、東にマキナ帝国を臨む、山間の国だ。

 たくさんの湖を国土に抱えているから、湖王国。

 精強な傭兵を名産品としており、彼らの戦力はあちこちで重宝されている。

 そこで得た外貨が、シュヴィーツ湖王国の資産となっているのである。


「でな、傭兵はまた専門の職業(クラス)になってるんだ。プラトゥーンって言ってな。軍隊って書くクラスなんだが、集団を武器として戦うことができる特殊な能力で……」

「スタン。スターン。ソフィがポカンとしてる」


 ゴールに突っ込まれて我に返った。

 いかんいかん。

 また一人で喋ってしまった。


「それで、ソフィ。湖王国にまた異貌の神が来るんだっけ?」

「はい、そういう風に書かれてます。あの……異貌の神って一体何者なんですか?」


 ソフィから基本的な質問がやって来た。

 よし、では分かりやすく、端的に説明するとしよう。


「異貌の神は、侵略者だ。神様が自由に動けない今の時代、この世界を自分の世界に変えてやろうとしてやって来るんだ。そして、現地の人間を自分の尖兵にして操る」

「この前の村長さんみたいに?」

「そう、あの村長みたいに。正にスィニエーク村の事件は、異貌の神が介入した事件そのものだった。だから、後でオマケみたいに現れた、あのデュナミス・タクトも異貌の神の関係者だろう」


 俺は、この拳で打倒したあの男のことを思い出した。

 ミズガルズ世界に、現実世界の格好で現れて厨ニっぽい技を使ったあいつ。

 ラグナロク・ウォーには存在しなかった奴だ。

 ここは、俺が知るあのゲームとは、ちょっと変わってきてるらしい。


「さ、話はそこまでにして行こう行こう。ご飯ご飯!」


 ゴールは俺たちの会話を遮ると、先に進んで手招きした。

 俺たちは、大きな湖を見下ろす斜面に立っている。

 この斜面に、木々に覆われた街の姿があった。

 シュヴィーツ湖王国の都市、フール。

 それなりに高い山に挟まれており、さらに中央に三日月型の湖、パスガー湖を有している。

 この湖で、淡水魚が取れて、そいつを使ったムニエルが旨いのだ。

 具体的には、食うとシナリオ中、HPが5点増える。


「そしてゴール」

「何よ」

「ヴァルキュリアの格好は目立つんじゃないか? もっと目立たない格好をだな」

「は? ヴァルキュリアはあたしの誇りだっての。みんな、高貴な戦乙女が見られていいことじゃない!」

「んー」


 ソフィがちょっと考え込んだ。


「あの、でも、ゴールさんがヴァルキュリアだっていうことを分かるようにしちゃうと、異貌の神が警戒するかも。あと、注目されちゃうと良くないんじゃないですか……? その、ご飯の最中でもいっぱい人が見に来たり」


 ゴールは目を丸くした。

 そして、顔をしかめる。


「それは良くないわ。ご飯は静かに食べたいもの」


 彼女はそう言うと、パッとその姿を変えた。

 おお、青いチュニックにスカート姿の、上品そうな服装だ。

 緑の髪と瞳は目を惹くが、これならヴァルキュリアっぽくはない。


「よし、飯に行こう!」


 そういう事になって、俺たちは街に繰り出した。

 いやあ、でかい街だ。

 ソフィの村とか、スィニエーク村とか、これに比べると全然田舎だな。


「ご飯食べたら、スタンさんの服も買わないと……」


 ソフィがぶつぶつ言っているが、俺は別に全裸だって構わないんだけどな。

 そうそう。

 スィニエーク村で燃え尽きてしまった俺の毛皮服だが、あの後、村で適当な布をもらって縫い合わせ、身につけた。

 体がでかいから、村人の普通の服じゃ間に合わないんだよな。

 今はなんか、ボロを纏ったみたいになっている。

 全裸と変わらんだろう。

 飯を食えそうな店を見つけたので、そこに入ることにした。

 若い黒髪のウェイトレスが俺を見て、ぎょっとする。


「ちょっと……! そんな見すぼらしい格好で店に入んないで!」


 俺だけ追い出された。

 ……解せぬ。

 ソフィが慌てて出てきて、


「まず、スタンさんの服を手に入れましょう! お金はあるんでしょう?」

「金という概念は無いが、戻ってきた常備化ポイントで服は手に入れられるぞ」

「……?」

「いいか、見てろよ? あーあ、こんなことに常備化ポイントを使うことになるとは思わなかったぜ。えーと……普通の衣服でいいか」


 俺は、キャラクターシートに意識を集中する。

 イメージのペンが出現した。

 これで、シートに衣服、と書き込む。

 そして装備、だ。

 その瞬間、俺の姿が変わった。

 村人っぽい服装だ。


「これで堂々と入れる」

「……な、何をしたんですか!?」

「衣服を常備化した。ウェイトレスさん、これで大丈夫?」


 ついさっき俺を追い出したウェイトレスは、口をポカンと開いていた。


「大丈夫だろ? 服をちゃんと着てる」

「あ、ああ。大丈夫さ」


 全く、服を着てるか着てないかで人を判断するとは。

 人間、中身だぞ?

 そんな俺たちを、さっさと席についていた薄情なヴァルキュリアが呼んだ。


「もー! あたし、お腹ペコペコ!! 早くこっちに来なさいよ、スタン! ソフィ!」


 腹ペコってことには同感だ。

※衣服を常備化した

 アゾットを手放した際に戻ってきた、常備化ポイントを消費している。

 アゾットに比べれば、ほんの僅かな量ではある。


※人間、中身だぞ?

 全裸だったりする人間は中身まで見てもらえない。

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