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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
1,5.ミドルフェイズ:シナリオ『スィニエーク村を救え』
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英雄の弟子、地底に続く階段を降りる

 グレムリンは、井戸の蓋の隙間からその中へと飛び込んでいった。

 そして、直後にラシードが快哉を上げる。


「やったぞ! 間違いない。この井戸がこの事件の黒幕まで通じている! 井戸の中にも階段があるぞ!」

「なるほど、お手柄ですソフィ」


 イアンナがソフィの横まで戻ってきて、彼女の肩をぽふぽふと叩いた。

 彼女なりの賞賛のアクションらしい。

 肉球で叩くようなその仕草に、思わずソフィの頬がほころんだ。


「どうやら、今の巨人で大体出尽くしたようだな」


 いつの間にか屋根の上で、巨人と戦っていたらしいスタン。

 そこから飛び降りてきて、辺りを見回した。


「見た感じ、倒れた巨人たちはそのままのようだ。消えてもいないな……。あれっ、なんで女子が二人できゃっきゃうふふしてるんだ」


 ハッとするスタン。

 尊いものを見た、という表情になる。


「スタンさん、やりました! 巨人たちの後ろに何かあるかもって言ってもらえたから、私、あの井戸が怪しいなって。そうしたらアレクセイさんとラシードさんが頑張ってくれて」

「いや、ソフィの目は確かだった。命題ごとに三度しか使えない神技を切った価値があった」


 アレクセイが、あまり表情の分らない顔で、しかしソフィを褒める。

 ラシードは満足げにうんうんと頷く。

 錬金術師の後輩が結果を出して、嬉しいのだろう。


(よおし、何だか、少しだけ分ってきた気がする)

 ソフィがこの場で学んだ事は、こうだ。

 後衛であり、攻撃を行うわけでもなく、仲間の支援をしたり回復を行う役割のソフィ。

 それだけに、戦場の大局を見る必要が出てくる。

 その結果として、戦闘に没入している仲間たちでは気づけない、敵の意図であったりとか、些細な動きの変化を見破る必要性が出てくる。

 あるいは、結果的に見破る事が出来るようになる、と言うことだ。

 ところどころで、スタンが彼女に伝える一言一言は、確実にソフィの血肉となって行っていた。

 若き探索者は、驚くべき速さで成長を遂げていっている。


「では行くとしよう。イアンナ、先頭を頼めるか」

「分りました。では参りましょう」


 スカウトが先頭に立った。

 井戸の蓋を蹴り開けると、その中には石造りの階段が続いていた。


「マキナ帝国が作ったものではないな。これは……もっと古いものだ」


 階段を下りながら、ラシードが石段や壁に触れて呟く。

 壁面には奇妙な意匠が刻まれていて、その中には解読不能な文字もある。


「機械神の教えがこの地に伝わるより前に、信仰されていた土着の神だろうか。……とすると、この地下にあるのはその神殿か」


 アルケミストは、あえて自分の思考を言葉に乗せて語る。

 アレクセイ、イアンナともに言葉が少ない仲間だからこそ、自ら情報を発して仲間内での知識を共有しておこうという考えからだ。


「そうだとすると、黄色い衣の神は、機械神に排斥された神ということか」

「あくまで可能性だがな」


 明かりもない通路を、ひたすらに下っていく。

 唯一の光源は、ラシードがグレムリンに付与した輝きだけだ。

 この使い魔は、主人の意を汲み、イアンナの頭上をふわふわと飛んでいる。

 光は前方にのみ発されており、後続の仲間たちは眩しさを感じない。


「罠らしきものは無いように思います。村の住民が日常的に使用していたのならば、罠を仕掛けるはずもないでしょうが」

「そうだな。ラグナロク・ウォーも、システム上は罠の類の扱いが軽いからな。そもそも、探索者は強力だから生半可な罠は通用しない」


 スタンがまたもや良く分らないことを口にするが、もう誰も気にしていない。

 後半の、探索者が強力である旨については、アレクセイ一行も同感だからだ。

 探索者は、特技のほかに、神技という強力な力を得る。

 これは一度の命題(クエスト)を果たすまでの間、三回まで使え、与えられる効果はその探索者によってまちまちだ。

 アレクセイが与えられた神技は、神の雷槌(ミョルニル)死の女神(ヘル)。どちらも攻撃に特化した神技だ。


「そうだ。ソフィ、ここで確認しておこう。君の神技は、何がある?」


 道中、スタンに尋ねられ、ソフィはキャラクターシートを展開した。

 もう慣れたものだ。


「ええっと……黄金の林檎(アップル)光明神(バルドル)死の女神(ヘル)です」

「復活、結果向上、全体防御不能ダメージか。いいな。一通りの万能支援が揃ってる。使いどころは、その時に教えるので、焦って使ってしまわないようにな」

「はい!」


 ソフィの良いお返事を聞きながら、彼らは階段を下っていく。

 上で散々、巨人たちとの戦いをやらかした後だから、もはや気付かれないように気にする必要もない。

 どこまでも続くと思われた階段は、不意に終わった。

 最下層に到着したのだ。

 周囲にランプや松明は無い。

 だが、なぜかほんのりと明るかった。


「天井が光っています。光を放つ生物がいて、それを光源に使っているのかもしれません」


 イアンナが天井を見上げながら言った。

 確かに彼女の言葉通り、天井はあちこちがぼんやりと光っており、その光はゆらゆらと動いている。


「ここからが、敵の本拠地だ。村を変えてしまった張本人との対面が待っているぞ」


 アレクセイが宣言する。

 緊張から、ソフィは再びアゾットを握り締めた。

 このユニークアイテムから与えられた、ソフィの命題(クエスト)

 “スィニエーク村を救え”。

 その成就の時が近いのだ。

※罠の扱い

 後のシナリオに登場するが、ターゲットレンジシステムという連続判定によって、罠のクリアを含めた迷宮の踏破などは表現されることになる。

 単体で、罠を現すシステムは、ラグナロク・ウォーにはほぼ存在しない。

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