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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
1,5.ミドルフェイズ:シナリオ『スィニエーク村を救え』
22/72

英雄の弟子、作戦会議に参加する

 三人が泊まっている宿で、会議が開かれた。

 ここは、食堂に当たる場所。

 今は食事時ではないので、空いている。

 そこに、アレクセイが地図を広げていた。


「まずはこれを見てくれ。我々は既に確認済みだが、君達にも情報を共有していて欲しい」


 これは、近隣の地形や村の情報を書き込んだものだった。

 ソフィが見たこともない材質の紙で出来ている。

 スタンが、「ビニールだこれ」と言っているが何のことかは分からない。

 ちなみにソフィの師匠たる彼は、何も頼まずに食堂を占拠するのが忍びなかったらしく、宿の主人に人数分の茶を注文している。

 この土地の茶は、ジャムを入れて飲むそうで、それを聞いたソフィはちょっとそわそわした。

 甘いものは貴重なのだ。


「意外……。気遣いが出来る方なのですね」


 やって来た暖かいお茶を受け取り、イアンナが呟く。

 そうでしょうとも、とソフィは内心で思った。

 時々、よく分からない理由で暴走するが、スタンはいつでも周りの事を考えて動いているのだ。

 やらかしてしまった時も、フォローはバッチリ。

 ……と思う。

 ソフィの村は、不思議な形に改造されてしまったけれども。


「では諸君、見てくれ。これは私が使い魔によって調べた村の配置だが」


 ラシードは腰のポーチから、色とりどりの石を取り出す。

 それを、地図の一部に置いた。

 地図は正確な縮尺ではないようで、スィニエーク村ばかりが拡大されて記されている。


「村人と思われる者たちが、まるで訓練された兵士のように村の中を巡回している。このようにだ」


 色のついた石が、手も触れていないのに動き出す。

 ラシードの賢者の箱が光っていた。

 それが、石を動かしているようだ。

 村を表す図の上を、色とりどりの石ころがころころと動いていく。


「……かわいい」

「……かわいい」


 ソフィとイアンナの声が重なった。


「いや、かわいいとかじゃなくてだな……。こうして隙が無いように動き回っているのだが、明らかにこれはただの村人のものではない。訓練された兵士のようなものだ。アレクセイのような」

「うむ」


 たっぷりとジャムを入れ、ドロドロになったお茶を旨そうに啜るアレクセイ。

 話を振られて、何も考えていない顔で頷いた。

 ラシードが困った顔になる。


「これは村人が何かに操られてるな。使い魔が見た光景も、村人の動きはぎくしゃくしていたんじゃないのか?」


 だが、思わぬところから助け舟が。

 ラシードの言葉をしっかり理解しているらしきスタンが意見を述べたのだ。


「そ、そうです! 流石はスタン殿、使い魔が見た光景まで仰る通りで……。恥ずかしながら、いかに我がマキナ帝国の臣民とは言え、訓練もしていない村人がこのように動けるものではありません。皆、この動きは少々厄介だぞ。中に入ったとして、村人が正常でないならば我らがつけ入る隙が無いかもしれん」

「これは困ったな。作戦を立てねばならないな。村人が正常な状態なのか、それとも異常な状態なのかも知らねばならないな」


 ソフィには、スタンが目を輝かせてワクワクしているように見えた。

 ラシードが説明してくれた状況はいかにも困難で、ソフィにはどうしたらいいか見当もつかない。

 なのに、どうしてスタンはこの困難を前にして、楽しそうなのか。


「スタンさん、スタンさんにはこのむつかしい問題を、どうしたらいいかっていう考えがあるんですか?」


 聞いてみた。

 彼女の師匠は、よくぞ聞いてくれた、という顔で振り向く。


「うむ! いいかソフィ。こういった困難な状況は、困難であるからこそこのシナリオが持つ謎を解明する手がかりが眠っているものなのだ。それに、力押しではない方法でクレバーにこの状況をクリアできれば、実にかっこいいじゃないか」

「かっこ……?」

「ンッ! ゴホンっ! つまりだな。村人は何者かに操られているだけかも知れない。彼らを傷つけずに助けることこそ、探索者の努めなのだ。そのためには、彼らに見つからないか、もしくは騒ぎを起こさずに無力化する方法を考えねば」

「おお、流石はスタン殿!」

「探索者の鑑です」

「武力に加えて知略まで持っているとは……」


 ラシード達がスタンの言葉を褒める。

 だが、ソフィは、絶対前の発言のほうがスタンの本意だと思った。


「とにかく。村の配置と、村人の動きが分かるんだろう? ならば、スィニエーク村の近くまで移動して、実際に俺たちの目で観察してみるのはどうだ? 例えば地図のこの位置。見張り台があるが、その裏側からなら、死角になって見えないだろう。こちらから侵入してみるとか」

「そうですな。リアルタイムで村人の動きを観察しながら、それに応じた動きをするのが私達には合っているかも知れません。どうだ、アレクセイ」

「ああ。それで構わない」


 ラシードはアレクセイの許可を得ると、頷き、地図を仕舞った。

 カラフルな石ころは、ぴょんぴょんと跳ねながらラシードのポーチに飛び込んでいく。


「かわいい……」

「かわいい……」


 ソフィとイアンナは、名残惜しそうに呟いた。

※石

 錬金術で作られた、小型のゴーレムのようなもの。

 賢者の箱からのコントロールに従って動く。


※アレクセイ

 甘党らしい。


※かわいい

 女子二人がめろめろである。

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