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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
1,5.ミドルフェイズ:シナリオ『スィニエーク村を救え』
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英雄の弟子、帝国の村に驚く

 マキナ帝国側の探索者だという三人に案内され、ソフィはスタンたちとともに、帝国の村に足を踏み入れた。

 目の前に広がる光景は、辺境の村で生まれ育ち、一度も他の村や町を見た事が無いソフィにとって、衝撃的なものだった。

 道は石が敷き詰められ、その上を人々と荷馬車が行き交っている。

 立ち並ぶ家々は少々古びているものの、しっかりとした木造だ。

 スタンが建て替える前の、ソフィの村の家々よりもずっと大きい。


「凄い……。大きい村……!」

「お前が生まれた場所は、帝国の外なのだから無理もあるまい。マキナ帝国は錬金の技により、例え最西端にある小さな村と言えど、これだけの繁栄を享受できるのだ」


 アルケミストの説明に、ソフィは目を見開くばかりだ。

 すると隣にスタンがやって来て、ぶつぶつと呟く。


「イメージどおりの姿だ。いや、荷馬車ではなく、何か錬金術を用いた運搬用の機械が働いていると思ってはいたが、むしろ今のこの姿のほうがファンタジー世界らしくていいじゃないか」


 いつも通り、意味の分からない事を口走るスタンだが、ソフィは慣れたものだ。

 対して、アルケミストには言葉の意味が伝わったらしい。


「お分かりになりますか、スタン殿。錬金の技は機械神の加護を受けて発達しましたが、まだまだこのような辺境にはその恩恵が行き届かぬ有様。いや、帝国の事情を良く知っておられる方に、恥ずかしい話を聞かれてしまった」


 アルケミストの男は顔をちょっと赤くしている辺り、本当に恥ずかしいと思っているようだ。

 ちなみに聞かれて恥ずかしいと言っているのは、ソフィに向かって帝国の偉大さを説いた辺りらしい。


「……ということは、首都に行けば道を車が走っている?」

「ええ、その通りです。錬金の技が生み出した蒸気機関により、馬の要らぬ鋼の車が走る、世界最先端の都ですな」


 二人の話を聞きながら、ソフィは首をかしげた。

 村に攻めてきた帝国の軍隊は、馬を連れていたような。


「ラシード、いつまでも立ち止まって話をしないで下さい。拠点に戻りますよ」


 スカウトの女性がやって来る。

 ちょっと怒っているようだ。

 ラシードと呼ばれたアルケミストは、顔をしかめた。


「そう言うなイアンナ。これはもっと重要な意味を持つ知識の交換でだな……」

「知識の交換をするのは結構だが、我々には時間がない」


 ばっさりとラシードの言葉を遮ったのは機甲兵。

 二対一と知り、スタンに助けを請うような視線を向けるアルケミストだったが……。


「ほう、時間が無いということは、シーン数制限があるシナリオなんだな? それは急がねばなるまい」


 相変わらず意味不明のことを言いながら、スタンは機甲兵の側についた。

 愕然とするラシード。

 案外、可愛げがある彼の様子に、ソフィは思わずくすりと笑った。


「ところで、君たちの名前を聞くのを忘れていたな。俺は知っての通り、スタン。スタン・レイクス・ウィルコットだ。こちらはソフィ。俺の後輩だ。初心者プレイヤーだから、みんなでサポートして育てて行こう」

「プレイヤーとはよく意味が分りませんが、探索者として初心者であるという意味でしょうか。そうであるならば、スタン殿の提案はもっともであると私は肯定します」


 スカウトのイアンナは賛成の意を口にする。

 機甲兵も無言で頷いた。

 ラシードに至っては、何を当たり前の事を、という顔をする。

 実際、ソフィに対して探索者として、アルケミストとしての心得を道中、親身になって教えてくれたのはこのアルケミストである。


「それでは私から名乗りましょうか。私はアルケミストのラシード。帝国が誇る黄金機関に所属する、第六位階のアルケミストです」


 誇らしげに彼が語ると、スタンが「ほお!」と感心した声を漏らした。


「第六位階とは凄い。頂点が第九位階だったはずだが、第九は名誉位だから、在野のアルケミストとしては頂点じゃないか」

「スタン殿、何から何までよくご存知で……」


 これには、帝国側のパーティも大変驚愕したようだ。

 ソフィは相変わらず、言葉の意味が良く分っていない。

 ラシードさんかあ、とアルケミストの名前が分っただけでニコニコしている。

 次いで、スカウトが名乗った。


「私の名はイアンナです。見ての通り、軽装での戦闘行動を得意とします。専門は銃撃。よろしくお願いします」


 簡易な自己紹介であり、彼女がどういう背景を背負っているのかは何も分らない。

 だが、スタンだけはちょっと口元を緩めながら、頷いていた。

 これは、イアンナの素性に気づいているのではないか、とソフィは思う。

 何しろ、何でも知っている自分の師匠なのだ。

 最後に機甲兵。


「アレクセイ・ピャーチだ。俺は試作型強化機関を施された五人目の機甲兵だ。今は計画は凍結され、俺は自由の身だ」


 スタンがぼそっと、「やだ、PC1っぽい」と呟いた。

 アレクセイの言葉に、ラシードもイアンナも、特に口を挟まないし、表情も変えない。

 みんな仲良しなんだなあ、とソフィは思うのだった。

※恥ずかしい

 田舎の娘にイキっていた自分を恥じるのである。


※馬がいた

 サイボーグ馬。生半可な蒸気機関を用いた車よりも早く、そして行動は柔軟性に富む。


※黄金機関

 帝国が誇る、錬金術師達の象牙の塔。

 市井や貴族の子女から才能あるものを見出し、育てている。

 帝国の技術の全ては、この黄金機関が担っている。


※PC1っぽい

 スタンさん、PC5でしたか。

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