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ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
1,5.ミドルフェイズ:シナリオ『スィニエーク村を救え』
19/72

俺、やっとシナリオに参加する

「す、凄い力だ……!!」

「何をやったのですか!?」


 探索者たちは、一瞬呆けていたようだ。

 我に返ると同時に、俺に食いついてきた。

 彼らは氷の巨人と戦って凍傷を負っていたが、それは今、ソフィがせっせと治癒している。 

 どうやらこのパーティのアルケミストは、白魔道士(ホワイトメイジ)ではないようだ。

 攻撃型魔法使い、黒魔道士(ブラックマジシャン)か。

 回復なしで戦闘に挑むのは、無謀……でもないな。

 ダメージを受ける前に相手を撃滅しろ、がセオリーのラグナロク・ウォーでは、回復や防御型バフが充実した耐久型パーティよりも、真っ先に動いて敵を殲滅する攻撃型パーティが向いている。

 ……序盤は、だ。


「まあまあ、落ち着いてくれ」


 俺は彼らの肩を叩いた。


「見ての通りだ。俺は強くてな。そして、ああいう氷の巨人とやり合った事もある。戦い方を知っているのさ」

「いや、戦い方とかそういう次元では無かっただろう、あれは……。ただ、力任せに殴ったようにしか」

「相手に通用するだけの力を込めて殴れば、倒せるんだ」

「それはそうですけど……」


 機甲兵もスカウトも、訝しげな顔をしている。

 まあそうだよな。

 俺だってそんなこと言われたら納得しない。

 だが、これは紛うこと無き事実なのだ。

 例えば武器に属性を纏わせても、攻撃力を強化魔法(バフ)で強化しようとも、相手に痛打を与えられなければ勝つことは出来ない。

 例え何も乗せていない、素の打撃だろうが、相手に痛打を与えられるならばそれが最善の攻撃なのだ。

 俺から、なんとか強さのコツみたいなものを聞き出そうとする彼らだったが、望む答えが得られないと分かって諦めたようだ。

 俺としては、レベルを上げて物理で殴れと言いたい。


「では、我らは拠点としている村に戻りますが」

「俺たちは、スィニエーク村に向かうところだったんだ。近くならば案内してもらえると助かる」

「スィニエーク村……!? それは、我らも目指している場所です……!」


 おお、なんという奇遇だ。

 というか、運命のようなものに導かれた、スィニエーク村に関わるPCがこのメンツだということだろう。

 道中を一緒することになり、彼らの興味はもっぱらソフィに注がれている。

 ちなみにゴールは、光学迷彩とやらで姿を消している。

 ヴァルキュリアは存在がばれるだけで色々注目されるし、マキナ帝国では邪神の使いと言われて大変嫌われているのだ。

 そんな国に、姿を消しただけで平然と入国しようとする辺り、ゴールは肝が太い。


「どうして君たちは、サーペント山に来ていたんだ? 帝国軍がずいぶん前にここを通ったはずだが」

「それです。これは本来機密なのですが、同じ探索者同士であればお話してもいいでしょう」


 スカウトの女がそう言い、仲間たちに確認を取った。

 機甲兵とアルケミストが頷く。


「帝国軍オロチ中隊が突如、定期連絡を絶ちました。そして、彼らが駐屯地としていたスィニエーク村も外界との接触を絶ちました。調査隊が派遣されたのですが、彼らは戻ってこなかった。私たちはそれぞれ目的は違いましたが、スィニエーク村に関る形で命題(クエスト)に導かれ、ここに集まったのです」

「俺が見たところでは、中隊は明らかにおかしくなっていた。さらに、空から降ったというユニークアイテムを手にし、これを用いて強大なゴーレムを勝手に作成したようだ。我らが到着した時点では、彼らは既にドミー男爵領へと侵攻した後だった」


 説明を引き継いだのは機甲兵だ。

 機械仕掛けの鎧の兜は、今は外されている。

 傷だらけで精悍な印象の男の顔があった。

 彼がこのパーティのリーダーのようだな。

 正しくは、ラグナロク・ウォーにおいて決まったパーティというものは少ない。

 皆、それぞれが天から啓示される命題に従い、事件が起きる場所へと必要な人数が集まってくる。

 これが探索者というものだ。


 俺はここで、やっと実感が湧いてきた。

 シナリオに参加できた、という実感である。

 初めは、ちゃらんぽらんなヴァルキュリアのせいで全裸で野原に放り出され、命題(クエスト)も得られぬままに村娘を救い、村を建て直し、領主と交渉してその後のノリで帝国軍を殲滅し……。

 噂に聞くVRゲームを遊んでいるようで、これはこれで楽しかったのだが、やはり人間、目的意識がないとだれてくるものだ。

 そんなジャストのタイミングでのこの事件。

 誰がGMなのかは知らないが、俺はこの世界で、ラグナロク・ウォーで言うところの“オープニングフェイズ”を終え、シナリオ本編に突入したようである。

 長い、長いオープニングだった。

 なんで導入部分でそれっぽい事件が起こらないのよ……。

 レベルをカンストしているせいか、俺だけまだ命題が降ってこないし。

 だがそれでも、シナリオに参加できたという事実は嬉しい。


「ようやくTRPGらしくなってきた。眷属であのレベルという事は、ボスは凄いのが待ち構えているな。楽しみ楽しみ……」


 俺は天を仰ぐと、今後への期待を呟くのだった。

白魔道士(ホワイトメイジ)ではないようだ

 回復魔法を装備すれば、黒魔道士でも回復はできるのだが、スタンがそれをど忘れしている。


※序盤は

 スタンの火力があれば、後半も火力型パーティで問題はない


※レベルを上げて物理で殴れ

 真理である。


※シナリオに参加できた

 相変わらず、スタンには命題(クエスト)は配られていない。

 参加したと言うか、シナリオに強引に入り込んでいったというか。

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