表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴッドスレイヤー・俺  TRPGで育て上げた神殺しの戦士、異世界でも超強い  作者: あけちともあき
1,5.ミドルフェイズ:シナリオ『スィニエーク村を救え』
18/72

俺、異貌の神の眷属と見える

 氷の巨人を観察してみる。

 あのタイプのエネミーは、ルールブックに記載されているものではないな。

 少なくとも、俺は見たことがない。

 ということは……。

 この世界に来て初めて出会う、新型のエネミーかもしれない。

 キャンペーンを遊んでいた時でも、GMはオリジナルのエネミーをよく出していたからな。

 俺たちのパーティのレベルに見合ったエネミーが、もはやルールブックに存在しなかったと言う方が正しいか。

 ってことで、新型エネミーに対し、俺は割りとポジティブな印象を持つ。


「ゴール、近づいてみようぜ。ソフィは後ろで見ていてもいい」

「スタンも好きねえ。だけど、そういうところが英雄たるエインヘリヤルの資格……!」

「わ、私もご一緒します!」


 どやどやと、戦闘に割り込んでいく俺たちだ。

 例によって、ヴァルキュリアであるゴールは後ろで見学。

 エインヘリヤルの試練に、ヴァルキュリアが直接関与することは禁止なのだそうだ。

 こいつ、この場で二番目に強いだろうに。


「よう。手助けは必要か?」


 俺が声を掛けると、後衛にいたアルケミストが振り返った。


「な、何者だ!?」

「ご同輩さ。俺も彼女も探索者だ。義により助太刀する」


 返答を聞かず、俺は前線へと突き進んでいく。


「ソフィ、色々試して見るんだ。まずは渡したヒールで、あのスカウトを回復!」

「は、はいっ! ヒール……!!」


 ソフィの手が光り、片腕を怪我した軽装の男に癒やしの魔法が降り注ぐ。

 ラグナロク・ウォーの魔法には射程距離があり、ヒール程度の低レベル魔法は、射程が大体10mだ。

 あまり後ろに行き過ぎると、魔法の効果を対象にもたらせないのだ。


「……! 腕が楽になりました。全快ではありませんが、これで動かせます。魔法が通用するということは、貴方達は間違いなく探索者なのですね」


 巨人の攻撃を躱しながら、軽装の男が礼を言った。女の声だ。

 よく見ると、この軽装は動きを妨げない装備のようだ。ということは、密偵(スカウト)のクラスだろう。

 こいつはスカウトの女のようだ。

 アルケミストと機甲兵は男だな。


「感謝する。だが、気をつけてくれ。こいつは……強い!」


 氷の巨人が、大きく息を吸い込んだ。

 その口から、吹雪が押し寄せてくる。


「障壁を!!」


 アルケミストが叫んだ。

 賢者の箱が展開し、そこから光が溢れる。

 吹雪はこの光にぶつかり、多少軽減された。


「くうっ……!」

「みんな、踏ん張れ……!! 吹雪を凌いで反撃だ!」


 機甲兵とスカウトは、吹雪の中で必死に堪えている。

 少なからぬダメージを受けているようだが、アルケミストによるダメージの軽減が行われたから、多少はましだろう。 

 だが……。

 俺の目から見て、この氷の巨人、帝国側の探索者たちにはキツすぎるだろう。

 適正レベルのエネミーじゃない。

 このセッションのGMはバランスが分からないか、Sだな。


「大した吹雪だ。俺が止めてくる」


 俺は、触れるものを何もかも凍てつかせるような氷の嵐の中を進む。


「正気ですか!?」


 スカウトの声が聞こえてくる。

 正気も正気。

 俺の身につけている毛皮は、たちまち凍りついていくが、その下にある生身は全くの無傷だ。

 この氷の吐息も、俺の基本防護点を抜けてはこないな。

 ましてやアルケミストの支援入りなら、何も怖くはない。


 俺は拳を握りしめると、歩みを早めた。


「俺は戦士なんだがな。ああ、武器が欲しい」


 俺はぼやきながら地面を蹴った。

 飛び上がり、振りかぶった拳が氷の巨人の肌を打つ。


『ウボアーッ!!』


 轟音が響き渡り、巨人がたたらを踏んだ。

 おう、俺の一撃を受けても粉砕されないとは、大したタフネスだ。


『ボアァァーッ!!』


 巨人は怒りの声を上げ、俺に向かって手をかざす。

 そこから出てくるのは、やはり吹雪だ。

 おや?

 殴ってこないのか。それとも、殴るタイプのエネミーじゃないのか、こんな図体をして。

 こいつは単体の相手を攻撃する吹雪らしい。

 体を押す勢いがちょっと強いぞ。

 だが、もちろん俺の防護点を抜けることはない。

 俺は無造作に、もう片方の拳を振りかぶった。

 また、跳び上がって氷の巨人を殴りつける。


 これで、終わりだ。

 ただのエネミーで、俺の攻撃を二発耐えられる奴は少ない。

 倒れないなら、そいつは特別なエネミーだってことだ。


「ノーマルエネミーってところだな。おっと……!」


 氷の巨人は砕け散る。

 全身に亀裂が走り、ひび割れ、殴りつけた部分から全身が崩れていく。

 そして、巨人であった欠片は地面に落ちること無く消えていった。


「消滅か……。ってことは、異貌の神の眷属だな」


 俺は巨人の正体に当たりをつけた。

 異貌の神に従う連中は、倒すと欠片も残さず消滅する。

 こいつらは世界の外側、いわゆる宇宙からやって来る、ミズガルズへの侵略者だ。


 サーペント山にいた、異貌の神の眷属。

 本来なら攻めて来ないはずの帝国軍。

 帝国側の探索者たち。

 そして、ソフィが受けた命題(クエスト)。“帝国のスィニエーク村を救え”


 この辺りに、ちょっと普通じゃない要素が固まっている。

 これは偶然ではない。

 事件が起きている場所には、普通じゃないものが集まるのだ。

 そして、運命の糸みたいなものに引き寄せられて、事件の渦中に巻き込まれていく者がいる。

 それがプレイヤーキャラクター。

 俺たちというわけだ。


 ようやく、シナリオが始まったらしい。

※氷の巨人

 本来、ミズガルズには存在しないはずのエネミーである。

 ラグナロク・ウォーのデータにも、このようなエネミーは記載されていない。

 髪を振り乱し、闇のような目をした青い肌の痩せた大男に見える。


※魔法が通じる

 戦闘に入ると、回復魔法は仲間にしか通用しない。

 攻撃魔法を仲間に掛けることも出来なくなる。

 つまり、仲間を回復できたということは、ご同輩の探索者かそれに準ずる者であると言える。


※適性レベルではない

 恐らくは、15レベルほどのエネミー。

 ボスという属性を持たないエネミーはHPこそ低いが、レベルに応じてその特殊能力や攻撃力は高くなる。


※プレイヤーキャラクター

 スタンが本当にそうなのかは、定かではない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ