表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔の王のお嫁様  作者: 塩野谷 夜人
純白の花嫁編
69/184

小話4.魔王の深意

20時、二回目の投稿です。


★俺の嫁が可愛すぎて生きるのがつらい件について

【ジラルダーク】


 何度も何度もその肢体を味わって、俺の痕を刻んで、果てて果てさせて、気付けば夜もだいぶ深い時間になっていた。先程まで俺の下で可愛らしい悲鳴を上げていたカナエは、くったりと俺の体にもたれて荒い呼吸を繰り返している。

 明日は式があるというのに、求めすぎてしまった自覚はある。いやしかし、カナエが愛らしすぎて、止まるものも止まらなかったのだ。


 桜色の唇でか細く俺の名を呼んで、急かされてもみろ。止まるなど無理だ。無理に決まっている。むしろ、何故止まらねばならない。


「ん……、じぅ……」


 呼吸が落ち着いてきたのか、カナエが俺の腕を枕にしたままこちらへ身を寄せてきた。数えきれないほど口付けを交わして、そのやわらかで甘い舌を弄んだからか、上手く発音できないようだ。ぼんやりと視線を動かして、カナエが俺を見上げてくる。


 熱の引かないその視線に、弱い。まだ、もっと、と求めたくなる。ふわふわと揺れる唇に嚙みついて、強引に喰らいたくなってしまう。求めればきっと、カナエは応えてくれる。


 ……だが、さすがに、これ以上はまずい。いくら魔法で回復させるとはいえ、一瞬でもつらい思いをさせたくはないのだ。俺は、この腕の中の愛しい存在を、物のように扱いたいわけではない。壊れなければいいというものでもないからな。壊すような一切の行動を、したくはない。

 散り散りになっていた理性を必死に掻き集めて、俺はカナエの髪を撫でた。眠りを誘うように、ゆるやかにやわらかく、彼女のしなやかな髪を指先で撫でる。俺が髪を撫ぜれば、それはもう寝てもいいのだ、とカナエは判断しているようだった。


「…………、……」


 小さな、本当に小さな声で、カナエがおやすみ、と言う。こんな状態にさせられても、それでも彼女は俺に告げてくれる。それが、どれほどに嬉しいか。


「ああ、おやすみ」


 囁くように答えて、俺はカナエに睡眠の魔法をかける。すぐに安らかな呼吸音が聞こえてきて、俺はなるべく振動を与えないように体を起こした。見下ろしたカナエの体は、汗やら何やらでどろどろに汚れている。俺は浄化の魔法をかけて、お互いの体を清めた。

 目にかすめるのは、カナエの白い肌に散った赤い痕跡。俺の刻んだ、無数の痕だ。普段であれば、これは残したままカナエに回復の魔法を軽くかけている。軽く、というのも俺の我儘だ。何もなかったことにしたくない。少しでも、俺をカナエの中に残しておきたい。カナエを壊したくないと思いながら、それでも、すべて消し去りたくない、ただの我儘な独占欲だ。


 全回復の魔法を、俺はカナエにかける。肌の痕も、情事の後の気だるさも、すべて消えてしまう。この魔法を条件に、カナエは俺の暴挙を許したのだ。中途半端にかけることなどできなかった。これで、今宵の痕跡は何も残らない。付けたばかりの痕も、綺麗に消えた。

 少しばかりの寂しさを飲み下して、俺は再び身を横たえる。カナエの体を深く抱きしめて、腹の奥に残るもやもやとした感情に蓋をした。これ以上考えぬよう、自身にも睡眠の魔法をかける。すとんと落ちる意識に身を委ねて、俺も眠りについた。


 まさか、翌朝に最大級の誘惑されるなど、考えもせずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ