調子に乗った僕のヤッパリな結果
雨が降る中、少し待つと黒いフードをかぶった男が現れた。
『ほぅ‥‥使い魔ですか。
考えましたね。
それで、どれ程の腕前なんでしょうかねぇ。』
甲高い声の主。
ひょろひょろの体は、小柄。
でも、その顔は意外にイケメンで若い。
何となくな呪術師の出で立ちだけど中身は、予想外。
しわしわのエロジジィだと思ってたのに。
でも案外、やれんじゃないの。
だって呪術師も、まだ経験値少なそうなんだもの。
『さぁ、始めましょうか。』
呪術師が言いながら、懐から数枚の札を出す。
‥‥札ぁ?
そんなの見たこともないし、聞いてもない。
どうやって、攻撃してくんの?
ちゃんと教えといてよ。
身構えるだけは、しとく。
呪術師が何か言ってるみたいだけど雨音で聞こえない。口の動きしか分からないし。
《少し上から来るぞ!!
避けろ!!》
えぇっ!?
その声に、とっさに体が動き、避けると言うよりも 横に転んだ。
すると、さっきまで僕が立ってた所には、大きな氷柱が刺さってる。
うそぉ?
あんなのでやられたら、確実にアウトだよぉ。ゲームオーバーじゃん。
何だよ。それ。
反則じゃないかぁ。
ぐちぐちと、余計な事を考えてると
《ほらっ。
次が来るわよ。
そのまま横に転がって。》
必死に横にゴロゴロと転がる。
うわぁ。
怖ぇぇよ。
『ちょこまかと、よく避けますねぇ。
でも、このままですと私の勝ちですよ。
さぁ、どうするんです?』
くそっ。
相手は、完全に余裕ぶっこいてるよ。
こっちは、必死だってのに。
早く帰って、お風呂入りたいなぁ。
雨に濡れて、ベタベタで気持ち悪いよ。
今日の夕飯は、何だろなぁ。
また、あのハンバーグみたいな肉料理が食べたいなぁ。
必死な思いとは裏腹に頭の中は、現実逃避し始めた。
我ながら、情けない。
普段なら、それでもいいのかもしれないけど、今回はヤバい。
命懸けなんだから。
素早く立ち上がる。
次こそは、呪術師の攻撃方法をしっかり見て、闇雲に避けるんじゃなく、見切って避けなきゃ。
火トカゲさんや蒼蛇さんの声に頼りっきりでは、避けてるだけで体力が、なくなっちゃいそうだしね。
余裕を見せて、なかなか攻撃してこない呪術師。
エリスに猛アピールしてる。
『どうです?
貴女の使い魔なんて、相手にもなりませんよ。
早く私の妻になる決心をしてください。
今なら、貴女方の望みの相手を呪って差し上げますよ。』
凄い口説き文句だなぁ。
その隙に
《相手は、呪術師。
攻撃は、札を使って発動させる魔法。
1つは、相手を呪う。
これは戦いながらは、まずない。
下手をすると、呪いが自分に返ってきたり、代価によって自分にダメージ等が生まれるからな。
1つは、札に魔力を流し攻撃する方法。
主にこれで、攻撃してくると思え。
攻撃は、攻撃対象のすぐ近くに現れ、攻撃してくる。
俺やお前が使う魔法と、大した変わりはない。
よく観察すれば、避けられるはずだ。
さっさとブチ負かせ!!》
火トカゲさんの解説でした。
要は、魔法の出どころが相手の呪術師近くじゃなく、僕寄りに発動するって事でしょ。
でも、それって避けるまでの時間が少ないって事じゃないですかぁ。
最悪だよ。
そんな事を考えてると呪術師の視線が、こちらに代わった。
バトルの続きね。
次は、見て避ける。
これが目標。
しっかりと見ると呪術師の口が動いた後、札が紫色の火みたいなモノに包まれて消える。
その後に僕の前に氷柱が出来た。
これかぁ。
感心してると氷柱が、僕を目指して飛んで来る。
斜めに飛んでんだから、誰かが掴んで投げてきた感じ。
「とりゃぁ。」
と掛け声をして、バックステップ。
声の割に地味な避け方。
でも、次の攻撃に備えやすぞ。
頑張れ僕。
そのまま呪術師の動きをしっかりと見る。
呪術師の同じ様な攻撃に、今度は横に避けた。
同じ方にばっかり避けてると、先読みされちゃうからね。
割と冷静な僕。
やるねぇ。と自画自賛。
でも、こんな単調な攻撃なら、流石のエリスも避けられるはずだし、何かあるんだろうね。
『なかなか学習能力は、あるみたいですね。
どんな英霊か知りませんが、人の恋路を邪魔しないで 頂きたい。』
呪術師が、そう言うと僕でも分かる程の魔力が動く。
そう言う言い方をすると魔力の動きが分かる僕凄いみたいな感じだけど、肌がピリピリしたり、空気が変わったと言うか、何と言うか……
まぁ、そんな感じで、とにかくヤバそうな雰囲気。
『アナタは、死んでも構いませんから、手加減なしですよ。』
冷たく静かに、そう言うと今までの札とは違う赤い札を三枚取り出した。
絶対ヤバいって。
焦る気持ちとは裏腹に呪術師は、またゴモゴモと何か言ってる。
どうしよ?
もっと本気で、修行しといたらよかったぁ。
そしたら、死ななくて済んだのに。
あ~あ。
やりかけのゲームもあったし、彼女も出来た事ないし、色々したい事あったのになぁ。
サヨナラ。僕。
走馬灯の様に、色々と思ってるのに呪術師の攻撃は、まだ発動しない。
時間掛かんの?
やっちゃうよ?
知らないよ。
「$&%#$%&#」
火の精霊に働き掛ける。
頼むよ。
成功確率85%
祈る様に見ると手の中には、火球がある。
よしっ。
いっけぇぇぇ。
投げつける様に火球を飛ばす。
火球自体も、呪術師に向かって飛ぶから、そのスピードは凄い。
ただ避けるだけのマヌケが、突然に攻撃してきたんだから、呪術師はびっくりしてる。
焦ってんなぁ。
でも、かなりのスピードに乗った火球の勢いで、あっと言う間に呪術師に着弾。
持ってた札が僕の火球で燃えてなくなった。
よしっ。
切り札封じたし。
調子に乗りかけた時
『クソがっ。』
えっ!?
あの妙に、かんに障る話し方をしてた呪術師の口から、そんな言葉が‥‥
完全に怒らせたみたいだし。
それから呪術師は、もの凄い数の氷柱を次から次へと、飛ばしてくる。
それを何とか避ける僕。
たまに火球を飛ばすけど、雨の為か威力はイマイチ。
でも決着は、呆気ないもの。
避ける体力がなくなって、バランスを崩す。
その上、雨で足が滑った。
そこへ氷柱が‥‥
何とか、蒼蛇さんから教えてもらってた水球で、軌道を逸らせたけど刺さったのが、倒れた僕の首の横。
数センチずれてたら、あの世行きでした。
ーーーーーーー
『私のせいで‥‥
すみません。』
城に戻って、手当てを受ける僕の横に座って俯くエリス。
怪我は、大した事ない。
氷柱が首をかすったから、切り傷が一つ。
滑って、転んだ時に打った頭と手を着いて、手首を捻った。
それだけ。
すぐに治る怪我ばっかり。
でも結果は、散々。
エリスをイジメるつもりで用意しといてあった呪術師の札が少なかった事で、札切れを起こして助かった結果になった。
本当に情けない。
ふぅ~~。
大きく息を吐き出し。
「大丈夫だよ。
次は、完勝するから。」
エリスに約束した。




