望んでない………突然の召還
僕は、視たこともない景色の中を歩いている。
周りは水に溶けた絵の具の様に、ぐにゃぐにゃ。
上下左右の感覚が、全く分からない。
ただ、前に進んでいる。と思う。
(夢なら、早く覚めてくれぇ)
どの位進んだのか分からないが、前には、さっきと同じ様な大きな扉がある。
これに入らなきゃ、何も始まらない様子。
自分が、ねじ込まれた扉は、跡形もなく消えてしまっていたから。
(これは、夢だ。
そうだ。絶対に夢なんだ)
自分に言い聞かせる。
「はぁ~」
でも溜め息が出た。
現実逃避しても、始まらないから。
【ぎぃぃぃぃぃ】
ゆっくりと目の前の扉が、勝手に開いていく。
仕方ないか。と眩しい光の中に僕は、歩いて出て行った。
扉は光の柱の中にあった様で、下からなのか、上からなのか分からない光の中に僕は立っている。
足下には、漫画でよく見る魔法陣がある。
光の柱が徐々に細くなり消え始めると、声が聞こえた。
『やっと成功したぁぁ。』
目が慣れると、僕を見つめる笑顔から呆然した表情に変わった少女がいるのが分かった。
‥‥‥
お互い無言。
‥‥‥
「やあ。」
僕は、取り敢えずコミュニケーションを取ってみる事にした。
‥‥
ノーリアクション。
(さっき『やっと成功したぁぁ。』って聴こえたから、通じる筈なんだけど。)
もう一度、何かを話そうかと思った時
『はぁぁぁ‥‥また失敗。』
と大きな溜め息をついて、彼女は僕に背を向ける。
「へっ‥‥失敗って、僕?」
誰にともなく、口にした。
彼女は僕を気にするでもなく地面に、また魔法陣を描き始める。
「失敗って失礼な‥‥
まぁいいや。
ねぇ、元の場所に帰してよ。」
僕は、魔法陣を描いている少女の肩に手をかけた。
『使い魔が、主人に軽々しく触れないでください。』
そう言うが早いか、魔法陣を描いていた棒を僕に向けた。
(この流れだと魔法だよなぁ。)
速攻で死ぬかも。
そう思った時、周りがゆっくりに。
木の葉が、止まってるかの様にゆっくり落ちてゆく。
小川の水の流れが、止まってみえる。
(あぁ‥‥そうか。
これが噂の走馬灯かぁ。)
感心しているが、一向に過去の思い出が廻らない。
「あれっ?」
おかしいと思った時、前から別の問題が迫ってきていた。
小さな火の玉が、僕に向かってくる。
小さいと言っても、かなり熱い。
でも、ゆっくり向かってくる火の玉。
ゆっくりなんだし、軽く避ける。
【ポンッ】
後ろで、小さな爆発音がしたので振り向くと、地面から煙が上がっている。
当たっていても怪我はしただろうが死ぬ事は、なかっただろう。
一応、手加減してくれた様子。でも
「あっぶないなぁ。
当たったら、火傷しちゃうじゃないか。」
軽く怒って、また近付く。
気がついたが、もう周りは遅くない。
『アレを避けるだけの能力は、あるんですね。』
少女は、僕の方を向いた。
可愛いけど……何かキライ。
「僕に興味ないんでしょ?
なら、帰してよ。」
もう一度頼んでみた。
『はぁ………。』
ため息吐きやがりましたよ。この魔法少女。
『私‥‥召喚術って苦手なんです。
だから、無理。
歩いて帰って下さい。』
仕方ないから説明してやる。風な感じと少し申し訳なさそうにしたが、特に何事もなかったかの様に、また魔法陣を描き始める。
「歩いてって‥‥ここドコ?」




