2-53.出発の準備
衣装を合わせたら出発なんだけど、
留守にする前に、いろいろ打ち合わせしないとね。
「レイ~~~。衣装頂戴。」
「ヒカリさん、モリスさんから伺ってます。こちの部屋でどうぞ。」
「あれ、なんで、こんなにいっぱい服があるの?」
「ハウスセールで衣装一式もまとめて引き取りました。
『出所がばれると、死が待つ』とのことで、無料でした。
『うちなら出所は問題ない』と、引き取りました。」
「私が着ると問題になる?」
「いえ。男爵が男爵の遺産を引き継いだとお考え下さい。」
「そう。レイが言うならそれでいいや。ちなみに、4人で行くんだけどさ。そういう貴族のパーティー用のドレスってありそう?」
「どなたになりますか?」
「私とステラと、フウマとユッカちゃん」
「ヒカリさんとステラさんは問題ありません。適当に選べると思います。
フウマさんは男物ですと、ジャガ男爵のサイズがあって、お気になさらなければいいのですが・・・。
最後、ユッカちゃんの分は・・・。子供服は一着のみですので、サイズ変更で対応になると思います。」
「じゃ、早速合わせて行こうか。」
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私のは、すんなりと決まったんだよね。
<一番いい品物が、一番サイズが合います>って。
なんか、もう、それ以上断りようがない。
フウマも困らなかった。だって、サイズを多少修正すれば、何着もあるんだもん。好きなのを選んで、早速修正に持って行ってた。
ステラはちょっと慌ててた。
「ヒカリさん!これ、私の服です!」
「うん?今着てるのは?」
「これは、ヒカリさんが解いてくれた皮袋とか加工したんです。」
「え?ひょっとして、あの奴隷小屋以降、ずっと服が無かったの?」
「いいえ。これ服に見えませんか?」
「ちゃんとした服に見えてるし、私がステラに服を渡してなかったなって。それで、ステラの服がどうしたって?」
「奴隷として売られた段階で、自分の服は諦めていたんです。けれどここで出会えるなんて・・・。他にも私の装備とかあったら・・・。」
「レイ、なんか、装飾品とかも見せて貰ってもいい?」
「ここは衣装だけです。その・・・。杖みたいな道具の類は、倉庫にいれてしまって・・・。」
装飾用の小物が置いてある部屋とか、装備品とか靴なんかが置いてある部屋とかを見て周った。ステラがすごい喜んでる。きっと思い入れのある大事な品物なんだろうね。あ、杖も出てきた。エルフが杖持ってると様になるね。
「ステラどう?」
「私、これでパーティーに出席したいのですけど、宜しいですか?」
「レイの見立てではどんな感じ?」
「人族ではなくて、エルフ族視点であれば、非常に素晴らしいと思います。人族からは、ステラさんの衣装の良さが判りかねないでしょう。『あの人エルフだ』ぐらいになります。」
「ステラ、それでいい?『人族の婚約者にエルフが付いてる』みたいに思われるみたいだけど。」
「私はエルフ族ですが、ヒカリさんの物ですわ。ヒカリさんがご迷惑でなければ、何も問題ありません。」
「レイ、意見ありがとう。このステラの衣装と装備一式も貰ってもいいかな?」
「当然です。あとは、ユッカちゃんの分ですね。」
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「ユッカちゃんお待たせ。どんなのがいい?」
「このまま。」
「レイ、これ、有り?」
「例えナイフであっても、帯刀は許されません。隠れた場所に見えない形で装備してください。また、こちらのカバンもパーティーで背負われている方は見ませんね。クロークに預けるか、馬車に置いておくのが慣例となります。」
「レイ、ユッカちゃんの気持ちを大事にしつつ、妥協点って探れそう?」
「そうですね・・・。ナイフは太ももに吊るして隠さないと不味いですね。カバンは、この上から装飾をかけて、天使の飾りを子供が付けてる風を装うとか。如何でしょう?」
「アイデアはいいね。私には実行力がない。ちょっとユッカちゃんと調整してもらってもいい?期限は、今日の夕飯までで。」
「分かりました。二人で考えます。」
「ありがとう。あ、あとこれ。レナードさんからの許可証。今日から運営できるよ。」
「ヒカリさ~~~ん!流石です!」
「レイの実力だよ。また力を貸してね。」
「はい、喜んで!」
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「トーマスさん、ちょっとお話があるのですけどいいですか。」
「嬢ちゃんどうした。困りごとかい?」
「割と大きな困りごとです。」
「言うだけ言って見ろ。出来ることなら力を貸すぞ?」
「この領地で<高温炉>を設計・開発と実用化までをすることになりました。」
「ふむ。だれがやるんだい?」
「トーマスさんです。」
「よしきた。いつから始める?」
「話は簡単ではありませんので、5日後くらいから打ち合わせしたいです。」
「なんだ、随分慎重だな。」
「あ、いえ。ちょっと出かける用事がありまして、5日ぐらい帰ってこれないのです。」
「そうか。じゃ、モリスとこれまでのことで不備や不足がないか済ませておくな。」
「はい、お願いします。」
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「みんな、元気?いろいろお疲れさまでした。で、申し訳ないけど、夕飯を食べたら5日間ほど出かけることになる。何か気になってることってある?」
「ヒカリさん、お疲れ様です。重々身辺の気配りを怠らないよう心掛けてください。」
「ヒカリ、防具作ったぞ。着ておけ。大概の服の下に身に着けられるぞ。」
「それでしたら、私もその下着に魔道コーティングを施しますね。」
「姉さん、隠せるサイズの護身用ナイフを持って行ってね。」
「おねえちゃんは、私が守ってあげるからね。」
「ヒカリ殿、無理はしないことじゃ。生きていれば機会はいくらでもあるんじゃ。」
「僕もユッカちゃんと一緒に出席することにした。衣装もお揃いなんだ。」
「うわ~~~。みんな本気で心配してる?」
「姉さん。真面目に聞いて。姉さんは、伯爵の爵位を受領した途端に、周囲から殺される存在なんだ。
刺客の数も半端じゃない数が来る。通りすがりの見知らぬ人の場合もあるし、毒殺が仕掛けられる場合もあるかもしれない。婚約発表の当日だって、出席者から刺されるよ。」
「真面目に聞く。何すべき?」
「皆の言う通り、防具と最低限の装備は必要。あと、今夜中に城下町に入って、情報収集を開始する。
そして、ベッセルさんなどの安心できて情報漏洩の少ない宿泊所を確保する。
婚約者の候補に挙がっている令嬢を10人くらいはピックアップして、その中から王子とレナードさんの敵対勢力を全てリスト化。並行して、王子とレナードさんの許可を得て、刺客の殲滅。
当日は刺客が0人で、出席者だけを相手にすればいい状態にしておく。個別戦術はともかく、もう既に戦争開始なんだ。」
「分かった。ちょっと質問だよ。王子やレナードさんとの敵対勢力ってあるのかな?その勢力が何故自分の令嬢と王子を婚約させるの?」
「政略結婚に決まってるじゃないか。貴族にとって、人は単なる道具だよ。王家の弱みを握ったり、利権を回してもらったり、自分の派閥を大臣に入れたりなどなど。」
「分かった。私が浮かれていたことを反省して慎重に行動するよ。余裕があれば、敵対勢力を陥れて、弱体化させると後々の領地運営が楽になるよね?」
「姉さんが自分を囮にするとか、止めてほしいんだけど。」
「囮って言うかね。
(ごにょごにょ・・・)
どうよ?」
「それ、世間一般には囮っていいます!でも、全然危なくないのがズルくて、姉さんらしい。ニーニャ、そんな小物用意できるんですか?」
「ヒカリは面白いな。手伝うぞ。それなら、
(ごにょごにょ・・・)
な道具もあると、役に立つだろ?」
「あ、面白いね!時間あるかな?今夜中に城下町だよね?」
「姉さん、荷物ごと馬車に乗せて運ぶんだよ。飛ぶに決まってるだろ?まさか、パーティードレス着て、街道走るつもりだったとか?」
「い、嫌だなぁ。私だって、あんな服着て走れる訳ないじゃん。荷物がおもたいなぁとは、思ったけどさ。じゃ、4人+シルフの5人参加でいいかな。モリス、馬車を一台借りるけど大丈夫?」
「問題ありません。馬は何頭連れていかれますか?<飛行術>を使うのでしたら、大人しい馬を一頭にした方がスムーズかと。」
「おっけ~。よし、小道具の準備と荷物の積み込みが終わったら出発だ。」
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いやぁ、いいねぇ。
みんなで飛ぶのは<船の移動>以来だね。
今日はちょっと霧がかかってるけど、<光学迷彩>してるとはいえ、
気配を消してくれていいよね。
でも、こんな夜中になっちゃったけど、情報収集とかできるのかね。
<<フウマ、こんな夜中だけど、無理して城下町の中に馬車を降ろす?>>
<<城下町の中に、発見されにくい場所が何か所かあるけど、情報収集は無理だね。それより日が昇る迄、門の近くで休んでおいて、朝一番で冒険者のフリして入るのがいいかもしれない。姉さんの冒険者登録証を使えば、あとは奴隷として銀貨の支払いで通れるし。>>
<<そうだね。ベッセルさんの所も、朝にならないと失礼だよね。そうしよう。>>
さて~~~。
貴族との戦争の始まり始まり~。
ちょっと、ワクワクしちゃうね。
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。
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ありがとうございます。
10月は毎日少しずつ22時更新予定。
手間な方は週末にまとめ読みして頂ければ幸いです。




