09.狩人になろう(1)
とりあえずは生計を立てることを第一目標においたよ。
森の中での狩人生活とは……。
「おねえちゃん、終わったよ~。おかあさんみたいにうまくできたかわからないけれど、多分大丈夫だとおもう。今度はおねえちゃんの番だよね?」
「うん。あ、その前におかあさんに何かお花をあげてもいいかな。私の住んでたところでは<献花>っていって、お墓にお花を供えるんだけどさ」
「いいよ。こっちこっち。おかあさんが好きな花で、今咲いているのはこっちのほうだよ」
とっとこと走っていくユッカちゃんが突然とまる。
何らかの事態が起きている感じて私はすぐに反応する。
<<ナビ、安全確認>>
<<ユッカ前方に大型イノシシ。危険度青>>
ユッカちゃんに近づくと、小声で話しかける
「ユッカちゃん、何かいたの?」
「あのイノシシを捕まえられると、いいんだけど……」
「私に手伝えることって、何かあるかな?」
「1つあるの。腐る前に街まで売りに行くことなの。
いつもは、おかあさんが売りに行っていたから、わたし一人でできるかわかんない。
おねえちゃん手伝ってもらえる?」
「いいよ。売り方とか教えてね」
私が何も考えずに即答すると、ユッカちゃんは静かに詠唱を始めた。そして、イノシシが寝た様子を確認する。催眠の魔術なのかな。猟師専用の魔法なのかは後できいてみよう。
すると、ユッカちゃんは静かに素早く小屋にもどって、何かを取って戻ってくる。あ。昨日のナイフだね。それと、バケツみたいな桶をいくつか。っていうか、よくわからないけど、100kgは優にこえるようなイノシシが居て、ナイフ1本で片が付くの?
「おねえちゃん、血がとびちるからこの辺で待っててね」
そういうと、スタスタとイノシシまで歩いて行って、後ろからイノシシに飛び乗って跨ったと思うと、
首の辺りにナイフを当てて、スッと引く。ものすごい勢いで血が飛沫をあげる。ユッカちゃんも血まみれ。そこでイノシシがズデンって横倒しになる。
「エーテルさん、力を一杯貸して!冷たくな~れ!冷たくな~れ!」
なんか、周りから冷気を呼び込んでる。冷やしてる?ええと、冷凍処理とか?良く分からないけれど、私もそこに加わる。
「冷たくな~れ!冷たくな~れ!」
「あ、おねえちゃん、ありがとう。冷やすのはこれぐらいでいいよ。
カチンコチンになっちゃうと、イノシシさんを解体できなくなっちゃう。
『冷やして解体すると、臭くなくなる』っておかあさんが教えてくれたんだよ。
おかあさんのお肉は臭くないって、高く買ってくれるお店があるんだって」
「おねえちゃん、服に血が付いちゃうけど、あとで洗濯するね。わたしがばらばらにするから、そこの桶に分けるのとか、イノシシをひっくり返すの手伝って」
すごいテキパキと進む。狩人の娘ってこういうもの?
それとも親の躾なのか、教育なのか。
単に遺伝子とか言ってるレベルじゃない。
トモコさんの教育恐るべし。
とにもかくにも、生き物相手で血まみれだ。
そして、私はこれを同じレベルで処理できなきゃいけない。
そう、狩人を生計を立てるための手段に選んだのだから。
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