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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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2-41.皮を鞣(なめ)そう(2)

ステラなら上手く作ってくれそう。

早速材料集めだ。

「ヒカリさん、材料さえあれば私でも出来ると思います。」

「というと?」


「私たちエルフ族は森とともに生きる狩猟民族ですから、当然ながら各種獣けものを捕獲します。そして捕獲した獲物をなるべく残さず使うようにするため、肉だけでなく、骨や脂、皮も大切な資源として活用するように生活してきたのです。

ですので、毛皮を鞣すことと、柔らかい革を鞣して作ることは全然違うことであると知ってますわ。ただ、それを2枚に張り合わせて何にしてるのかがよくわかりません。」


「毛皮の裏地がザラザラしてると着心地が悪いから、裏地を革で作って貼ってるのだと思うけど。」

「毛皮は、床に敷いたり、扉の代わりにぶら下げたり、服の上からの防寒や、森での隠れ蓑に使うので、毛皮をそのまま着る用途には使いません。」


「なるほど。皮同士を貼り合わせる<ノリ>みたいなものはあるのかな?それさえあれば、ステラの技術で<トモコの毛皮>ができそうなんだけど。」

「それなら、<ニカワ>のことですね。材料があれば簡単に作れますわ」


「え?え?ステラの言う必要な材料って何?できれば作り方も教えてくれるといいんだけど」

「さきほどの<ヒカリさんの言うものを作る>ならこんな感じになります。

1.毛皮にする小動物を狩ってきて、毛皮を採取する

2.柔らかい皮を採取するために、牛とか羊を捕まえる。

3.牛の皮を剥いで、石灰で煮込む。

4.毛が抜けてきたら、石灰液からニカワを作る。

5.毛が抜けた皮は石灰を洗い流す。

6.1と5を<タンニン>に漬けて皮を柔らかく、丈夫にする

7.牛の脂を完成した革に馴染ませるように擦り込む。

8.4で作ったニカワを使って、7で作った毛皮と革を貼り合わせる。

以上です」


「え?材料があったら、どれくらいで出来る?」

「ここには、川も森もあるので、精霊さんの力を借りれば3日ぐらいでしょうか」

「それって、シルフやウンディーネのこと?」

「いいえ。私が普段魔術を用いているときに語り掛けるような、一般的な精霊ですね」

「(1)牛、(2)毛皮をとる小動物、(3)石灰、(4)タンニンがあれば3日で作れるってこと?」

「はい。何かおかしかったでしょうか?」


「ううん。私の知ってる革の作り方より、随分便利な方法があるな~って。それって、誰でも出来るのかな?」

「精霊達との会話ができないと、煮込んだり、漬けたりしたあとの作用時間が掛かるかもしれませんね。そこを気にされてました?」

「う~ん。精霊さんの力が無いと、時間がかかるか~。ま、それでもいいよね。私のふわふわパンも、天然酵母の培養のときにエーテルさんに助けて貰ってるし。」

「ヒカリさんのお役に立てそうで、良かったですわ」


「じゃ、材料集めが終わったら、ステラにはそれを進めて貰ってもいいかな?」

「はい。材料も一緒に集められると思いますわ。」


ーーーー


「牛は捕まえても、運ぶのが大変そうだから私がいくしかないか。石灰はこのあいだの岩山から採れる場所があるか、ニーニャかイワノフなら判るね。タンニンは(くりの渋皮かブドウの皮らしいんだけど、モリスが市場に詳しそうだね。そしたら、残りは毛皮用の小動物だ。」

「ユッカちゃんに手伝ってもらえるなら、岩山から石灰を切り出せると思います。あと、栗の木も私なら森で簡単に見つけられると思います。」

「そっか。ちょっと待っててね」


<<ニーニャ、ちょっとごめん。イワノフかニーニャは、あの岩山に石灰があるかどうか知ってる?>>

<<大理石は石灰岩の土壌から作られるぞ。娼館は大理石製だ。3番の近くに石灰岩があるはずだぞ。>>

<<ありがとう>>


<<ユッカちゃん。ステラと一緒に岩山へ行って、石灰岩とってこれる?>>

<<シルフも一緒ならいいよ。>>

<<一緒でいいから、ステラを手伝ってあげて。>>

<<分かった~。いま、そっちいくね。>>


「ステラ、岩山の3番付近に石灰岩ありそうって。今、ユッカちゃんが来てくれるから、シルフと3人で採ってきてくれるかな。私は牛を狩りに行くよ。」

「分かりました。一番手に入りにくいその2つがあれば、あとは何とかなります。」


「そっか。自分一人で抱えずに、他の人にも手伝ってもらっていいからね。あと、エルフの助っ人が必要なら、お金出して元の国から呼んで雇ってくれてもいいよ。」

「お気遣いありがとうございます。毎日ずっとだと大変ですが、いろいろなことを少しずつ体験してるので楽しいです。今のところ大丈夫ですわ。」


ーーーー


さて、次は牛だね・・・。

一頭仕留めて持って帰ってくるだけだから、特に問題ないかな~。年取ってるとお肉が硬いとかあるけど、革も柔らかいなら子牛がいいのかね。念のためナビに聞いておこう。


<<ナビ、皮を採取するために牛を一頭狩りにいくんだけど、年齢とかで皮の特徴とかって変わるのかな?>>

<<基本的に牛の皮は肉牛から採れていて、子牛などは柔らかい反面、面積も小さく高価である特徴があります。また、2年以上経過したものを大人としていて、雌牛、去勢した雄牛、雄牛でカテゴリが分かれているようです。雌牛の方が柔らかく、牡牛は靴底にも使えるほど耐久性がでるとのこと。柔軟性や保温性を重視するなら羊が良いとのこと。>>

<<ありがと>>


先ずは、年取った雌牛にすることにしよう。脂とかニカワとかも使うみたいだから大人でお試ししよう。最高級とか考えるなら子牛なんだろうけど、買って貰えるかも分からないし。予約が入ったらそのときだ。


<よし、牛を取りに行こ~。>

なんて、簡単に言うけどさ、実際問題、異世界でエーテル操作できなかったらとんでもない話だよね。


まず、<移動手段が無い>よね。

道が無いから馬車も馬も使えない。ヘリコプターも無い。現地に行くには<飛行術>っと。人が空を飛ぶのが普通ではないから、姿を消すために<光学迷彩>起動っと。牛の大群はこのまえに見つけた肥沃地帯のちょっと東側に居ると思うんだよね。いなければ<ナビ>に索敵してもらえばいいね。まぁ、季節変動が少なくて、餌が十分にあればそんなに直ぐに大移動してないよね。ほらみつかった。この辺は空からアクセスできるアドバンテージが大きいね。


次に、<牛を捕まえる手段が無い>よね。

縄を引っ掛けて、引っ張り合ったって力負けするし、近づいて刃物で倒そうにも、暴れられてぶつかられたら、相手が500kgこっちが50kgとして、致命傷には至らないまでも、立ち上がって再戦しようなんて気持ちはなくなる。まして自然相手だから向こうも容赦ないだろうしね。狙いとする牝牛の傍まで<光学迷彩>と<飛行術>で近寄って、<牛の血流を探査>これで心臓の位置が判る。そしたら、あとは血流に沿って流れるエーテルをコントロールして、心臓を止める。30秒も経たずにターゲットの牛が横倒しになる。


最後に<牛を運ぶ手段が無い>よね。

道もトラックもヘリコプターも無いのだから、<飛行術で運ぶ>とか思うじゃん?腕がもげるって。自分の筋力で支えられないものを持ち上げたり出来ませんよって。腰や太ももの筋肉を使っても、今度は骨が折れるね。500kgの牛の塊を50kmある先まで引きずって運んだら、それまたエライ大事件になる。<重力遮断の膜>で覆って、軽くしないとね。


ユッカちゃんが持ってるランドセルみたいな、ああいうのに収納できればいいんだけど、この牛のサイズを細切れにしないといけないから、今度は肉も革もとれなくなる。私はまだ空間を曲げたり、物質サイズを変更する魔術の原理が判ってないから、そういうの行使できないんだよね。原理が判って消費魔力に見合うものだったら、いろいろ冒険も楽になるのだろうけど、それは追々研究のネタにしておきたいね。


さってと~~。牛が空を飛んだらおかしなことになるから、牛も<光学迷彩>で透明にする。透明で風船みたいに軽くなった牛を引っ張りながら、とりあえず関所のあるところに作った冷蔵庫まで運ぶ。牛の<光学迷彩>を解除、<重力遮断の膜>を解除。そして、牛を冷やしておくと。


<<ユッカちゃん、ステラに『冷蔵庫に牛をいれておいたよ』って、伝えておいて。>>

<<分かった~。ちょっと待って。ステラさんから伝言だよ。

『石灰が採れたので、牛の処理を優先します。栗拾いと小動物狩りをお願いできませんか』

だって。>>

<<分かった~。冷蔵庫で待ってるって伝えて>>

<<は~い>>


ーーーー


<<モリス~。今話しかけていい?>>

<<はい。なんでしょう?>>

<<栗とかブドウって、この辺りは食用にしてる?栗を剥いた渋皮とかブドウ果汁の絞り残りの皮とか欲しいんだけど。>>

<<栗は狩人や木こりが採取して、街中の商店に卸しますね。買い取った商店が付近の人を使って栗の皮を剥く作業を委託します。なので栗の皮は商店に尋ねる形になります。

ブドウの方は、私は良く存じ上げないのですが、もう少し南の温暖な方で良く栽培されているとのこと。レナード・バイロン侯爵の土地で南に広がっている辺りではブドウの栽培に挑戦しているとも伺っていますので、ひょっとしたらそこから手に入るかもしれません。>>

<<モリスは今どこにいるの?>>

<<メルマで晩餐会用の食器や食材の調達を始めております。>>

<<なら、皮がついた栗か、栗の皮も探してきてくれるかな。桶2-3杯分あれば十分。あと、新鮮な卵と牛乳か生クリームと砂糖もお願い。>>

<<承知しました。夕方までには必ず戻ります。>>


ーーーー


よし、これで小動物以外は材料が揃いそうだ。石灰やタンニンに漬けるための樽みたいのが無いと不味いね。ニーニャに酒樽がもらえるか聞いてこよう。


「ニーニャ、空いた酒樽が欲しいんだけど。」

「この前のでいいのか?カビがどうとか言ってたが。船大工がいるから、樽ぐらい何個でも作らせるぞ。」

「あ。ええと、酒樽とかお酒の話はもうちょっと時間頂戴。今はステラに毛皮を作ってもらうんだけど、そっちで樽に皮を入れて薬品漬けておきたいんだよね。」

「ステラ用の小屋と樽。他に何かあるか?場所は水場の傍が良い気がするが。」

「ニカワを煮出す鍋とか必要かも。」

「少しならドワーフ族で使っているのを分けてやるぞ。たくさん必要なら、鍋も専用に作った方がいいな。竈はトーマスがまだ娼館に居るはずだ。相談してみるといいぞ。鍋は難破船の資材を使ってよければ作っておくぞ。」

「いろいろと助力とアドバイスありがとうね。小屋とか場所はステラと相談してくれる?もうすぐ冷蔵庫に戻ってくるから。竈はトーマスさんのところに行ってくる。」

「皆、楽しんでるぞ。きにするな!ヒカリのやりたいことをやればいい。」


ーーーー


一度関所を出てから、街道を通って隣の敷地にある娼館の前にきてみた。一言でいうなら開いた口が塞がらない。ぽか~~ん。って感じ。私が石を運んだのって、まだ3日前ぐらいじゃなかったっけ?木の板で囲まれた中に、ドカンって石を置いただけだよ。


いま、門があって、手前と奥の二重構造になってる。手前が一般的な木造の休憩所みたいな感じ。お茶とかも出してくれそうな雰囲気。ひょとしたらオイルマッサージとかもできそう。健全そうでいいね。


問題はその奥だ。問題なのか判らないけど、この田舎町の関所には相応しくない豪華で展示目的な感じの建物がある。大きさは大したもんじゃない。関所の男爵の館と変わらないぐらい。でもね?手前に人が並んで立てるスペースがあって、正面玄関から入って、裏で個別の部屋とつながってる感じ。商品が立ってる人間ってことになるね。今は、見本みたいな案山子の人形が置いてあるけどさ。この案山子ですら現代のマネキン級に良くできている。これ、だれの発想で誰が作ってるんだ・・・?


「すみませ~ん。窯職人のトーマスさんいますか~?」

「ハミルトン男爵いらっしゃいませ。どうされました?」

「レイ、久しぶり。追加で竈が必要になっって、トーマスさんを探しにね。」

「トーマスさんなら、娼館で使う竈の設計をしてもらっていました。屋外に設置するタイプの簡単な物でお願いしましたので、お弟子さんたちで出来るとのことです。」

「なるほど。ちょっとトーマスさんと話してくる。」


ーーーー


「トーマスさん、久しぶり~」

「よう!嬢ちゃん!元気にしてたかい?」

「はい。トーマスさんこそ元気そうで何よりです。キリギスを離れてこちらの仕事にかかりっきりみたいですけど、大丈夫ですか?」

「嬢ちゃんには恩があるし、設計から自由にやらせてもらって、前払い・即日払いだから安心だ。皆が気持ちよく仕事をしてるよ。」

「それは良かったです。ちょっとした相談があるのですけど良いですか?」

「今かい?今なら丁度設計が終わって、手が空いてるんだが。」

「是非、今で。」


トーマスさんと関所にある冷蔵庫に向かって歩きながら話を進めておく。


「ステラ、ユッカちゃんお待たせ。こちらが窯を作ってくれるトーマスさん。」

「ヒカリさん、窯ってなんですか?」

「革を煮炊きしたり、ニカワを抽出するのに、専用の窯があった方が良くない?」

「なるほど・・・。肉類は冷蔵庫内で捌くとしても、煮炊きは屋外がいいですね。それにニカワとか鞣しって結構臭いも出るんですよ。屋外の共通の竃だと嫌がる人がでてくるかもしれませんね。」


「ステラ、ニーニャとトーマスさんと一緒に鞣し小屋の設計を考えて貰えるかな。牛の解体とか、小動物の毛皮は私とユッカちゃんでなんとかする。栗の方はモリスに頼んだから今晩には届くと思う。」

「了解しましたわ。水場と森の清浄さを上手く考えて領地内に小屋を建ててもらうようにしますわ。」



あとは、小動物なんだけど・・・。


「ステラ、頼まれている毛皮用の小動物がまだなんだけど・・・。」

「料理長のゴードンとニーニャが持ってきてくれました。<ネズミ捕り>が大活躍らしいです。倉庫に大量の食糧を詰め込んだことと、農地を開拓しているところに沢山いるらしくて。」

「数は足りそう?」

「牛一頭で裏地を作る分には十分でしょう。」

「そっか、よかった~。これで材料は揃った?」

「一応、モリスさんの栗を待ちますが、街中であれば栗は買えると思うので、明日から作業を開始できます。当然、牛の解体など、今日始められることは今日進めますね。」

「うん。いろいろ細かいことができてないけど、助けてくれて嬉しいよ。牛の解体とニカワの採取はちょっと興味あるからまた来るね。」

「いいですよ。皮を中心に作業を進めて、晩餐会用にお肉や内臓を使える様に解体を進めますわ。」


やった~。

解体とニカワが気になるけど、

他も進めないとね。

いつも読んでいただきありがとうございます。

頑張って続けたいとおもいます。

また、ブックマークや評価を頂けることはとても励みになります。

ありがとうございます。

10月は毎日少しずつ22時更新予定。

手間な方は週末にまとめ読みして頂ければ幸いです。

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