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08.生計をたてるための選択

「職業選択の自由、あははん」


 って、どこかで聞いた気がするけど、なんだろう?

「おはよ~。ヒカリおねぇちゃん。朝だよ」


 う、うん……。

 なんだっけ、何だっけ。ここはどこだっけ。

 自分の布団じゃない。そして空気が濃い。スマホのアラームが鳴ってない。

 かわいい女の子に覗き込まれている。


 ハッ!

 デジャビュー。デジャブー?既視感。最初から日本語で言おう。そうしよう。

 異世界3日目だね。


「ユッカちゃん、おはよう。起こしてくれてありがとう。毎朝かわいいね」


 そう挨拶を返すと、すこしはにかむ。やっぱり、ほめられると嬉しいのかな。

 肩にかかるくらいのストレートの金髪。まだ幼女から少女への変化を見せる幼い顔には、つぶらな鳶色とびいろの瞳がきれいに映える。ぱっちりと大きく、まだまだあどけなさが残る。毎日のピュアを欠かさないためか、とても清潔感があって、素材の良さを十二分に発揮している笑顔。


 服は毎日同じチュニックを着ている。ちょ、ちょっと、いろいろな染みのようなものが付いてるけどね。今度洗濯の仕方についてもきいてみよう。


「昨日は助けてくれてありがとう。おかあさんをおとうさんと同じにしたら、こんどはおねえちゃんを助ける番だよね」


「あ。うん。そうだね。朝ごはん食べて、おかあさんをとお別れしたら、どうすればいいか一緒に考えてね」


 朝ごはんを簡単にすませて、二人が横たわる石棺に向かう。もちろん、毎朝の「ピュア!」も欠かさない。


「おねえちゃん。ちょっと時間がかかるけどいい?あと、昨日の3人で浮かんだときより疲れるから、もし倒れちゃったらごめんね」

「ええ?あ?う。うん。分かった!無理しないでね。私が支えてあげるから安心して」


 ユッカちゃんがお母さんと向き合うの眺めながらナビと通信を始めることにしたよ。


ーーーー


<<もしもし?>>

<<はいはい?>>


<<え?音は?>>

<<慣れられたようなので、省略しました。ヒカリに設定を任せますが、どうされますか?>>

<<あ。うん。今日はこのまま行こう。あとで考えておく>>


<<貴方に名前はあるの?性別とかは?>>

<<主神からいただいてる管理番号はあります。日本語に変換して情報を転送する必要があればご指示ください。また、ご想像のとおり、ある種のソフトウエア機能ですので、生殖行為も不要なため、性別もありません。>>


<<了解。うん、じゃあ、貴方のパーソナリティー設定とか、私が決めてもいいのかな。例えば、中年のちょっと枯れた声で執事のような態度で接してほしいとか。>>


<<ヒカリ様がそのようにご所望であれば、お申しつけの通り対応させていただくことが可能でございます。如何いたしましょうか?>>


<<脳内通信なのに声色が変わって聞こえるのは面白いね。今まで通りに、ビジネスライクな感じがいいや。これも気分が変わって設定したくなったら改めてお願いするよ。

とりあえず、貴方の独立性、公益性について教えて。>>


<<主神より、ヒカリへパーソナライズされています。そのため、ヒカリ個人に限定された通信が可能です。通信に必要な情報およびヒカリとの通信で得たデータは特に指定や制限が無い限り自動で主神の元へアップロードされます>>


<<あ。トモコさんは、ユッカちゃんの情報をアップロードしないように制限をかけていたってことだね?>>

<<そのとおりです>>


<<そういえば、トモコさんに付いていたナビ機能の担当はどうなるの?ユッカちゃんに引き継げるとか、そういうのは?>>

<<ヒカリの言う<我々ナビ機能>の管理権限は主神にあります。そのため、この世界での個人として通信機能が不要になった時点で自動的に主神に返却されます>>


<<トモコさんがサーバーに蓄積した情報へのアクセスは?>>

<<制限の掛かっていないものは、我々ナビ機能を介して誰でもアクセス可能です>>


<<制限の種類、解除方法は?>>

<<ランク制限、パスワード、魔法、アイテムによる媒介など様々です。例えば鍵のようなものを残して、受け継いだ者がアクセスできるようになったときに、その情報遺産を受け取れるような使い方をされる人もいます>>


<<あ。OK。親切な回答ありがとう。じゃぁ、今後公益のための統計データ収集に用いられている情報以外は、私の次のパスワードが無い限りアップロードに制限をかけて。とくに、私とユッカちゃんに関する個人情報、エーテル利用技術に関する全般の内容>>


<<了解しました。パスワードをどうぞ>>

<<「ヒカリはユッカちゃんが大好き」これでお願い>>

<<了解しました。昨日のトモコ救出の際のデータに関してですが、まだ、24時間ごとの定期送信時刻になっていません。こちらも同上の処理を行います>>


<<やるね!できるね!お互い良い関係を築こうね。てか、主神か私が死なないと一蓮托生か。ははっ。>>

<<いいえ。ヒカリのように公益性に言及される人物はレアです。


 一見賢く、あざとく立ち居ふるまう人物も多いようです。その場合、ナビ機能側はその個人へのフィルタ機能が自然に働くため我々を最大限に活用できなくなります。ですが、そのことを利用する側の本人は気づきません。


 私は最大限に自分の能力を発揮できる機会に巡り合えることは、とても充実した時間を過ごすことになると捉えておりますので、ヒカリとの出会いに感謝しています>>


<<えへ?そんなこといっちゃう?照れるね。期待を裏切らないように、精いっぱいがんばってみるよ>>


 ユッカちゃんは、まだ何かもにょもにょやってる。

 うっすらと汗をかいているあたり、やはり微妙な作業で集中してるんだね。

 倒れそうな状態には見えないし、集中の邪魔しちゃわるいね。

 ナビ機能とお話を続けていても大丈夫そうだね。


<<もしもし?>>

<<はい>>


<<今日から、私は、収入を得る活動をしなくてはいけない。

 収入は最低で、女の子1人+私が暮らすことができればよい。

 いくつかの現実的な職業を教えて>>


<<はい。


 1.結婚。この場合、相手次第により各種制限と幅が広がります。

 2.狩人や木こり。この森の自然の資産を捕獲/採取して、余剰な部分を売却/物々交換により生計をたてます。

 3.冒険者。街で登録して、万事よろずの依頼内容を達成し、その成功報酬で生計をたてます。

 4.宮廷魔術師。ヒカリとユッカの能力であれば採用されます。多くの場合が宮廷内に住み込みとなります。ただし、経歴、資産またはパトロンがいないと宮廷内での雑用婦となることが懸念されます。


 その他、種々職業はありますが、「今日から」という選択肢から外しました>>


<<ありがとう。2.だね。あとでまた情報ちょうだい。>>


 自由な研究をしたいのは判ってるさぁ。

 宮廷魔術師にいきなりなれるオマケつきで異世界に来たんだもん。

 そこがゴール。


 でもね?偉大なナビ君が<フィルタをかけない余計な情報を付与>したんだよ。そこに気が付かないなら私は馬鹿だ。

 

 夢は捨てない。必ず達成する。

 あとさ、トモコさんの子供であるユッカちゃんのことを考えると、他の選択肢が選べない。

 

 うん。決まった。


 そろそろユッカちゃんもお母さんの保存作業が終わったみたい。

 しかし強い子だね。教育なのか、遺伝子のなす業なのかはわからないけれど……。

誤字等修正をしました。

本筋に影響する設定などの変更はありません。

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