2-28.シルフ
ステラが奴隷を買い取った。
正体はなんなんだ・・・。
ちょっと緊張するね。
「ステラ、まず、この子の体が臭うから、きれいにしてあげていい?」
「はい。皆のときと同じように、水できれいにしてから、ピュアを掛ければいいとおもいますわ。」
「うん、じゃあ、洗濯だ。ついでに服も洗っちゃおう。」
「はい。」
メイドさんから桶を借りてきて川へいく。3人でその子と服を洗う。なんか、この服、伝説級のボロボロなんですが。ユッカちゃんの鞄とかステラにあげたボロマントとか、ああいうレベル。全然きれいにならない。秘伝のタレならぬ、秘伝の汚れでもついてるのかね?
「おねえちゃん、この子は男の子なの女の子なの?」
流石ユッカちゃん、いつも私の想像の範囲を超える質問をするね。
そっかひょっとして、普通って<想像の範囲>のことなのかもね。理解できない・想像できないことに面食らってしまうと思考が停止するみたいな。世の中新しいことだらけなんだから、今までの自分や常識の枠を超えられるチャンスなのにね。
で、性別と。ユッカちゃんの方がトモコさん仕込みだから、良く分かってるとおもうんだけどね。
どれどれ・・・。
身長はユッカちゃんよりちょっと小さいぐらい?
緑髪でとても濃い青い目。目がちょっと釣り目。耳は尖ってない。
口もあるんだよね。開ければ歯も生えてる。
<つるつる>
いや、アンダーヘアーが無いとか、そういうレベルじゃないんだよね。割れ目もおちんちんも無いんだよ。おしっこもうんちも出ない。奴隷商人たちはどうしてたんだろう?そういえば、「あの子」とは言ったけど、男とも女とも言わなかったね。全くよくわからん。
「ステラ、わかんない。」
「シルフです。きっと」
「なんかエルフに似てるね。」
「風の妖精と言われてます。」
「レア?」
「私なんかより、非常に希少です。会えた人物の方が少ないでしょう。」
「奴隷商人達なら、いっぱい遭ったのでは?」
「彼らはシルフとして認識できていないので、ノーカウントです。」
「この子どうするの?」
「領地においておけば役に立ちます。」
「そうなんだ・・・。ふーん、ふーん・・・。」
ぐるぐるジロジロ見渡す。
<<クッキー頂戴>>
<<誰?長老?>>
<<あなたがその子のおねえちゃんでしょ。クッキー頂戴>>
<<クッキー焼くための粉が無いんだよ。夕方には馬車が着くから、それまで待って。>>
<<その子が僕にクッキーあげたいって言ってる。おねちゃんに作ってもらうって。>>
<<念話?>>
<<その子も、エルフも喋れないから、あなたと話をしてる。>>
<<私はヒカリ・ハミルトン男爵。ここの領地を治めている。小さい子がユッカちゃん。私の家族だよ。エルフはステラ・アルシウスさん。どこかのエルフの族長さんらしいよ。何か伝えたいことある?>>
<<ユッカちゃんとクッキーができるまで遊びたい。ステラには、『大丈夫心配するな』って。>>
<<分かった。まだ念話が使えないから上手く遊んでね。心の優しい子だから大丈夫だと思うけど。>>
「ユッカちゃん、その子にクッキー上げたいだろうけど、粉が無いんだよ。買い出し隊の馬車が到着するまで待ってね。その子と遊んでくるといいよ。
ステラ、『大丈夫だから心配するな』だって。」
「おねえちゃん、遊んでくる。クッキーは二人分ね。」
「はい。気を付けて。<隠密行動>で姿を隠せば、二人で飛んでもいいよ。」
「ヒカリさん、ひょっとして・・・。」
「うん。隠しててもしょうがないね。<念話>だよ。」
「私が教わる訳にはいかないのでしょうか・・・。」
「奴隷の件とは別に、念話の件も皆で相談しようか。」
「そうして頂けると、助かります・・・。」
「ステラ、シルフって何?なにができるの?」
「ヒカリさんは異国の地から来たということですので、異なる伝承をお持ちかもしれまん。失礼を承知で、この辺りの大陸で伝わる物事の成り立ちの一部について説明させてもらっても、よろしいでしょうか?」
「是非是非!」
「まず、世界は地・水・火・風と、光・闇の6つのエレメントから構成されています。この6つの属性を極めることができれば、この世の、ありとあらゆるものを作り出せるといわれています。」
「そして、6つのエレメントそれぞれに妖精や動物、魔物がいるのですが、その属性の中で一番エライというか、力をもっているものが妖精の長でして、風の妖精の長がシルフになります。」
「あー。例えば、空を飛んだり、船の中の探索をするときにステラの周りを飛んでいたのは妖精さんを呼んでるってこと?」
「そうなります。」
「で、あの子がシルフで、風に関して一番力を持っている妖精さんだろうと。」
「直接話しかけて確認がとれたわけではありませんが、エルフとしての生活の中、あれほど純粋な風の力を身に着けて、あの大きさにまで具現化している存在は見たことがありません。容姿も伝説の中にでてくる記述によく似ていると思います。」
「なるほどね。私たちは、どうつきあっていけばいいんだろう?」
「大切に接すれば、協力を得られると聞きます。このさき、農地を開拓して豊穣を願うのであれば、一緒にいて貰った方が良いでしょう。」
「喧嘩する属性とか、嫌がることとかないの?火が嫌いとか、木を切ると怒るとか。」
「妖精同士の好き嫌いはあります。一緒に居たくないとかはあるようですが、実際2エレメント以上が同一の場所に会したことがあるとは、聞いたことがありませんので私は分かりません。
木の伐採などに関してですが、エルフ族自体は森と共に暮らすので、不要な木の伐採を控えることを心がけていますが、人族が必要な木材を得るために木を切ることに機嫌を損ねるようなことがあるかは分かりません。」
「いろいろありがとう。怪しい動きがあったら聞いてみることにするよ」
馬車が帰ってくるまですることも無くなったし、天然酵母の面倒でも見ようかね・・・。この辺りも秘伝じゃなくて、誰かが管理できるようになるといいんだけどね。雑菌の繁殖防止とエーテルさん補助での培養の両方が必要だからね・・・。魔術って本当にすごいと思うよ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。
9月末までは日々24時更新です。




