2-26.人員増強(4)
気を取り直して、
娼館を経営したいって人と話をすることした。
上手く一緒に取り組めば人員増強につながるからね。
「おねえちゃん、おはよ。朝だよ。」
「ユッカちゃん。おはよ。あれ?フウマは?」
「モリスさんと一緒に寝るって、別の部屋だよ。」
「そっか。昨日はみんなに悪いことしたね。領主失格だ。」
「皆、おねえちゃんを慕って、信じてる。昨日言ってたでしょ?『一人が全部できなくても、代わりに助けてくれる人がいる。それでいいんだって。』」
「いつ?なんか、カッコいいセリフだねぇ?」
「ほら、ニーニャさんやフウマ兄ちゃんが、『ここまでしかできなかった。ごめん』って、謝ってたときのこと。みんなちゃんとお姉ちゃんの言ってること聞いて、覚えていたよ。」
「あー。言ったかも。みんな頑張ってるんだから、それでいいって、<普通>に思ったんだもん。」
「そのお姉ちゃんの<普通>が、皆には<普通>でなかったの。すごくうれしくて、皆がおねえちゃんを助けるために頑張るって。昨日お姉ちゃんが先に寝たあと、そういう話になったの。」
「なんだか、泣けてくるね。自分が不甲斐ないのに皆に頼られてるってさ、自分が情けないよ。その反面みんなの気持ちが嬉しくて・・・。とても複雑だよ。」
「みんなで朝の体操しよ。そしてご飯。」
「うん。ありがとう。行こう。」
ーーーー
なんとなくギクシャクしてたけど、皆が<普通に>仕向けるように振舞ってくれたおかげで、スムーズに体操も朝の食事も終わった。そこでモリスから声が掛かった。
「ヒカリさん、今日はよろしかったら、娼館を希望してる代表の者とお会いできませんか。実際に会ってみて、信用できそうかとか。調度品の準備とか、また、魔術師の育成もしないといけないかもしれません。たまたま、奴隷の出物が有ればよいですが、魔術を使えるとなると、なかなか・・・。」
「そうだね。いろいろ考えてくれてありがとう。元気出していくから、これからもさ支えて欲しいよ。早速、その奴隷さんと会おうか。その人を押さえないと、関所の食事支援とかもしてもらえなさそうだし。」
「そうして頂けるとありがたいです。直ぐに連れてきますが、どちらがよろしいでしょうか。」
「食堂で、モリス、ステラ、ユッカちゃん、私の4人で会おう。」
「承知しました。」
ーーーー
「ヒカリさん、お連れしました。」
「私はヒカリ・ハミルトン男爵。この領地を治めている。一度、奴隷小屋から解放しているときに挨拶をしたと思う。」
「はい。存じ上げております。私はレイ・ペルシヤともうします。どうぞよろしくお願いいたします。」
「今日は、レイが経営したいという娼館の実現について、具体的な話をしたいので、モリスに声を掛けて貰った。」
「お耳を傾けて頂けて光栄です。」
「ざっくばらんに話をしよう。
まず、手元に金貨が20枚しかない。
次に小屋はドワーフ族の助力を得て、レイの建てたいものを立てることができる。内装や調度品についてはレイの見立てが必要だ。
そして、最後の宮廷魔術師に関しては、当てが無い。
ここが領主としての手持ちのカードの全てだ。
ここまでよろしいか?」
「分りました」
「そちらの願いを叶えるために、協力いただきたいことがある。」
「なんでしょうか。」
「食事を作成する人数不足が深刻だ。人手を貸してほしい。どう考えても、レイの言う娼館を作るまでに3日以上かかる。その間は残りの9名の手を貸してほしい。」
「何故でしょうか?」
「何故とは?」
「急に人数が増えたわけでもなく、関所で食事や料理をサービスするわけでもないなら、今までの料理長とメイドで対応できるのでは。」
「そういう意味なら、この領地が抱える人数が増えたから。これからさらに増える。いままでは32人+領主1名であったが、私が領主になってから、今、47名。2-3日のうちに、さらに30名増える。」
「わかりました。あくまで、娼館を開館するまでという期限付きで宜しいでしょうか?」
「より正確にいうなら、増強した人手で、食料の調達や料理人、その補助が賄えるようになるまでだ。賄えない場合、娼館をオープンさせることができても、レイ達の食事が供給できなくなる。」
「なるほど。それは困りますね。協力させて頂きます。」
「こちらも、自立して生計を立てようとする人たちのやる気を削ぐきはない。だらだらと時間を使うわけにはいかないから、レイには娼館の準備に専念して欲しいし、他のメンバーの協力を取り付けて欲しい。」
「分りました。その方向で進めさせていただきます。」
「いつから可能だ?」
「今から。」
「モリス!料理長へ9人の人手が増えたことと、その指揮の準備を伝えろ。レイは9人へ料理長の下で働くことを伝えて、モリスと料理長に引き合わせる。それが終わったら、二人で一緒にここへ戻ってきて欲しい。
いいか?」
「「はい」」
ーーーー
二人が戸口から出て行ったのを確認してから声をかける。
「ユッカちゃん、ステラ、ここで相談があるんだよね。」
「なに?」
「なんでしょう?」
「魔石を作って売り続けることを、どう思う?」
「いいよ。」
「特に問題ないのでは?」
「一応、私の考えを言うよ。
いま、ここに居る3人だけが魔石を作れる。そして、魔石が作れることは世間であまり知られていない。だから、少しずつ作って、金貨と交換することは大きな問題にならないとおもう。
だけど、3つ問題があると思うの。
一つ目として魔石を作るために周囲のエーテルを凝縮することは、周囲のエーテルが薄くなり、魔術の効力が落ちる可能性があること。
二つ目は、まだ体力も身体も成長途中のユッカちゃんが魔石生成に力を使い過ぎると、何らかの健康や生育に影響が出ないか未確認であること。それでいて、金貨20枚相当の魔石でもユッカちゃんなら簡単に作れてしまう。
三つめは、<お金が無いなら魔石を作って売ればいい>と、安易に皆が考えてしまうことが怖いの。今は立ち上げ時の緊急時と考えているんだけどね。自分たちが良く考えずに、<領主に頼めばお金のことは解決してくれる>と、どこかにセーフティーを依存してしまう考えが芽生えてしまうことを危惧してるんだよ。
これが、私の考えだよ。」
「ヒカリさん。私の考えを述べてもよろしいかしら?」
「うん。お願い」
「一つ目の危惧に関してですが、エルフを長いこと経験している身として、魔力の枯渇、魔術の低下を認識できるような変化は生じていません。ちょうど3人で魔石作りの勝負をしたあの日も変化はありませんでした。あのときよりも大量に大人数で魔石生成をしたらどうなるか分かりませんが、少なくともあのレベルの範囲に抑えておけば問題ありません。
二つ目に関しては、ユッカちゃんが変な魔力の使い方をするとは思いませんが、ある程度制限するか、基本的には私とヒカリさんだけにしておいた方がいいかもしれませんね。緊急事態とか命の危険があるような場合は別として。
三つ目ですが、昨日の夕食会のメンバーでは、そのような<易きに流れる>人は見受けられません。きっと、レイさんも同じ考えでしょう。ただ、今後人数が増えるたびに、<領主が魔石を売って換金した>と、噂が流れるのは避けた方が、後々の憂いはなくなると思います。そのためにも、早い段階からこのような相談を持ち掛けて頂くのはよかったと思います。」
「ステラ、ありがとうね。」
「ユッカちゃん、何か意見ある?」
「無いよ。無いけど、魔石作った後の方が、魔力が増えたかも?」
「そうなの?ちょっと、考える。」
<<魔石づくりと、魔力増強、体の成長への影響を調べた話ってある?>>
<<魔石ではありませんが、魔術は同じ魔術を繰り返し使用することで、使用回数が増えるとの研究記録があります。>>
<<その文献なり、言い伝えはアップロードされてるの?>>
<<宮廷魔術師の記録が王立の図書館に残っています>>
<<信ぴょう性は?>>
<<本人は宮廷魔術師の上級資格を得ることに成功しました>>
<<なるほどね。その原理とか書いてある?>>
<<以下、一部引用します。
魔術には<慣れ>によって、同じ魔術を繰り返し行うと、効率よく操作ができるようになり、その魔術の使用回数が増えると考えられる。
ただし、体を鍛えるのと同じで、だんだん魔力が増えていることも観測され、別系統の訓練を積んでない魔術でも、使用回数が増えた例が多数あり・・・
引用ここまで。>>
<<ありがとうね。体力トレーニングに近いのかもね。効率と体力両方上がるみたいな>>
そっか。
<<ナビ、今から3人の魔力を測定して。自然回復は相殺できたらおねがい>>
<<了解>>
「今から、ユッカちゃんの話をちょっと確かめてみようか。私とユッカちゃんは、これくらいの中型を作ってみよう。ステラはこれくらいの小型(ピンポン玉サイズ)を作ってみよう。いい?」
「いいよ」
「いいわ」
「じゃ、せーの!ご~~!」
あ、なんか確かに早く生成できる。体の循環とか脳内の意識を強く感じなくても出来ちゃうね。3分もかからずに、両手別々に一個ずつ出来ちゃった。
って、ユッカちゃんが6個も作ってる!ステラさんは2個か!
もう、これで金貨160枚ぐらいかぁ。
「よーし、終了!作り過ぎに注意。あと、二人が戻ってくる前に、この小袋に仕舞って。すぐ、ユッカちゃんの鞄にしまうから。」
「「OK」」
<<ぴろろ~ん>>
<<測定結果を報告します。
ヒカリ:ランク7、魔力2800
ユッカ:ランク6、魔力4800
ステラ:ランク4、魔力5200
以上です>>
うっわ、何それ。私は激しく置いてかれてるね。
というか、二人ともランクが上がってるから、そのせいもあるのか。
ステラさんのランクが5まで上がったらどうなるやら・・・。
「なんか、見た感じ、そんな問題にならなそうだね・・・。
もし、誰かが異変を感じたらすぐに声を掛け合って行こう!」
「「はい」」
ーーーー
「ヒカリさん、ただいま戻りました。レイさんが皆へ説明で直ぐに取り掛かっていただけることになりました。料理長も器用さやこれまでの経験で上手く采配を振るってもらえることになりました。」
「モリス、レイ、ありがとうね。早速今日やることを決めようか」
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。
9月末までは日々24時更新です。




