2-09.着任(3)
奴隷、贋金、二重納税。問題まるけ。(まるけ・方言で検索)
でもさ!毎日金貨4枚の収入があるんだよ!
日本円だったら日当40万円!
これだから貴族はやめられ……。
辞められたら、辞めたいかな……?
「それでは、自由貿易組合メルマへの納税についてですね?」と、モリス。
「はい。ええと、ご飯を食べてくださいね。取り分けたお肉類もどうぞ」
「ありがとうございます。それでは、先に説明させて頂きます。
自由貿易組合メルマが非常に大きな力を持っているということです。エスティア王国は、食料自給率が100%に達してなく、また季節変動に伴う食糧庫への備蓄も少ないです。そのため、毎日のように国内の街に食料が運搬されています。メルマの商人たちは帰りにエスティア国内で産出する鉱物、木材などの特産品を代わりに買い上げてメルマへ持ち帰ります。持ち帰った資材は他国の不足した地域へ販売しています。
メルマの商人を介さない方法も考えられますが、この領地の直ぐ南側を流れる川のために、エスティア王国から直接他国への販売ができません。森を切り開いて、新しい街道を整備して、馬車の通行ができるようにしたとしても、メルマの商人からの妨害に対抗する護衛付きの割高な運送を強いられるでしょう。また、海上ルートはメルマの港しかないため、独自に港や船の整備まで行える手腕が無いと、自由貿易組合メルマを迂回・無視することができません。
ここまで宜しいでしょうか?」
「OKです。続けてください」
「では、続けさせて頂きます。
メルマの商人はここの関所で通行税を一旦支払いますが、通行税の返還を要求してきました。これはいつ頃からの慣習であるかは、私も存じ上げません。私が此方で執事を始めたときには既に70%の返還が決まっていたと、前の執事長から聞かされています。
そして、メルマの商人が運搬するものは、食料などのエスティア王国内の必須の品物であるため、正規の通行料を上乗せされた割高な商品が流通することになります。
尚、当関所では通行税による収入が得られておりますので、メルマへ返還した残りから、エスティア王国へ規定の納税を行っています。以上になります」
「このまま、いくつかの質問をしたいので、モリスも夕食を食べてください。その間、情報を整理する時間をください」
「承知しました。ご相伴にあずかります」
と、モリスはいつもの食事を食べながら、恐縮そうに私たちが用意した料理の皿から味見程度にパンと肉を取り分ける。そして、一口食べたときの反応ときたら……。
やったね。勝ったね!
勝ち負けじゃないけど、人生幸せな方がいいもんね。あとで、ここの料理長にパンの作り方を教えよう。冷蔵庫の設置と、天然酵母の培養に関しても早めに考えて手を打たないと、<森のおうち>で出来てた食事の水準に戻れないね。
そして、モリスの驚く様子を横目に見ながら情報の整理をする。問題は山積みだ。
・キックバック
・贋金の流通
・食料封鎖を盾にした価格支配
・王国の税金を掠め取りながらの住人への負担増
・街道封鎖
・海上交通の独占
これって、仮に自由貿易組合メルマを潰すことが出来たとしても、代わりの組合ができて同じ搾取構造が出来上がるだけだね。その根本的な解決には、
(1)迂回ルートを作る
(2)食料自給率を上げる
(3)贋金をきっかけに、追徴課税してメルマを破綻させる
ここまで出来ればそう簡単に代わりの組合が成立することはないだろうね。
(1)迂回ルートに関して、
明日下見して、森を切り拓けばなんとかなるような気がしなくもない。橋を架けた先が無法地帯だったら、罠設置しちゃうもんね。あとは船の入手も必要だね。ファンタジーの世界ならドワーフ族がこういう工芸品が得意だっけ。ひょっとして、昼間の小柄で強靭な奴隷さんがドワーフ族だったりする……?
(2)食料自給率の向上
この関所の周りには森しかないなら、天然資源を消費したら枯渇する。それなら森に住む豚ならぬイノシシとかを養殖する仕組みを作らないとね。麦は作れなくても芋ぐらいなら開墾さえ出来れば簡単に増やせるでしょ。森での生活とか農業を得意とする種族と言えば、獣人族かエルフ族なんだろうけれど……。
あっ!あの身長の高いエルフの姿をした奴隷さんまだ残ってるかな?
(3)メルマの追い込み
これは簡単だね。王国の法律をちょっといじれば、贋金流通の罪で簡単に破綻させることができる。メルマを破綻させる前にう回路と船の完成と自給率が上がってれば、リチャード王子も法整備に協力してくれると思うんだよ。
う……。
二人の奴隷さんに会いに行かなくては……。
まだいるかな……。
いてくれるかな……。
勝手に解放しなければよかった……。
うう……。
後悔先に立たず。よし、思い立ったが吉日だ!
「モリス、ちょっとやりたいことが出来ました。席を外します。
ユッカちゃん、ついてきて。フウマはモリスさんとこのまま食事をして、森林地帯の様子についてお話をきいてください」
「おねえちゃん、おっけ~」と、ユッカちゃんが元気よく返事をくれた。
「「わかりました」」と、従順な反応のモリスとフウマ。ここは二人に任せておこう。
食堂を出てメイドの一人を呼ぶと、奴隷さんたち割り当てた部屋まで案内を頼んだ。
どうか、どうか、まだ居てくれますように!
誤字などの修正です。本ストーリーへの影響はありません。




