05.観察と出会い
第一村人発見!
なんて、気軽にいえればよかったんだけどね。
視界に投影されたナビに導かれるままに目的の家までやってきた。森の木々につかっかって擦り傷とかできたけど、危険な生物に出会うことがなかったのは、ナビ機能の情報が正しかったってことで信用できるね。
それにしても主神さんは非常にピンポイントな選択をして、私を転移させてくれたんたと思うよ。これも大きな<オマケ>の一つだよね。いきなり洞窟の中とか、食料の調達も困難な無人島だったらと思うと、こわいこわい……。
到着した目的とする家を観察する。
ログハウス?
なんか、木を組み合わせただけの小屋。
窓にガラスとかない、木の窓。
扉も木。屋根や檜皮葺みたいな何か。
私が会いたい人は、この小屋の中にいるみたい。
窓が無いから、外から小屋の中の様子を観察することはできないね……。
待ってても仕方ないし、危険があっても殴られても死なない程度だし……。
え~い!いっちゃえ、いっちゃえ!
「(コンコン)誰かいませんか?」
『(ドタドタタタタッ)』
え?足音?走ってくる?
小屋の木製の扉が勢いよく開くと、私の顔面にガツンとぶつかる。
「おかあさん!?」
と、開けた扉から5歳くらいの少女が顔をのぞかせて、キョロキョロ見渡す。
いや、待って。いろいろ待って。
先ず痛い。立ち直るまでの時間頂戴。
次に女の子だから、ちょっと安心した。この子に殴られるより痛いかもしれないけど、これ以上酷く痛めつけられる心配はなさそう。そいで、最後に<おかあさん>ですか。とにかく、会話をすすめてみよう。
「こんにちは。初めまして」
女の子は悲しそうな顔でこちらを見る。
次に見知らぬ人のせいか、不安そうに開けた木の扉を身の半分まで閉めてしまう。
「誰ですか?おかあさんの知り合いですか?」
「いいえ。道に迷ってしまいました。こちらに小屋が見えたので助けてもらいにきました」
道からこの小屋は外れてるのに、助けを求めてこの小屋に来たとか、そういう辻褄合わせは考えないことにする。とにかく、この子と会話を続けないと!
「悪い魔法使いですか?」
「いいえ。ただの旅人です。荷物もなくなってしまって、困っています。中にお父さんかお母さんはいらっしゃいませんか?」
「おとうさんはもういません。おかあさんは、5日前から帰ってきていません。(ヒック、ヒック……。)」
少女が泣き出してしまったよ。
っていうか、こんな森の中で少女が一人で5日間も待てるの?
なんで村に助けを呼びに行くとかしなかったんだろう……。
「お母さんが帰ってくるまで、お姉さんが一緒に待っててあげようか?」
「(ヒック、ヒック)うん……」
と、泣きながら小さく頷く。私はそっと少女の頭を抱えて、軽く抱きしめて、片方の手で背中をさすってあげる。
そして、私の頭の中は途方に暮れている。
私にとって、衣食住全てが手に入るチャンス!
いや、そういう話じゃない。一個ずつ進めよう。
<<この子と、この子の家族の情報を頂戴>>
<<(ぴろろん)>>
<<父親はハンス:狩人。3年前に魔物討伐中に死亡。
母親はトモコ:10年前に異世界からの転移者。7年前にハンスと結婚し、約6年前に長女を出産。
5日前よりデータベースへのアクセス無し。
少女:データベースの記録なし。>>
う。かなり不味い状況だね。
<<トモコの最後のアクセス場所と記録内容の情報を頂戴>>
<<(ぴろろん)>>
<<朝にハンスの墓前にて、いつも通りの狩りの無事を祈るための挨拶。その後、狩場へ向かう途中の崖にて、フルアクセス。その情報は膨大なためダウンロードしきれません>>
うわ……。
ダメなパターンでしょ……。
いきなり重たいな……。
<<ありがとう。その最後のアクセスの崖の位置、そこの行程、危険生物の検索をお願い。
情報は後でお願いしたタイミングで表示して>>
<<(ぴろろん)>>
<<検索後、待機します>>
「もう、夕暮れでお外は寒いね。おねえさんと一緒におうちの中で待ってるのはどうかな?」
「うん。おねえちゃんも中に入っていいよ」
「ありがとう」
少女に手を引かれて、家の中に入る。机の上には木でできたお人形のようなものがある。机も椅子もすべて木製。少女が私に声をかける。
「おねえちゃん、そこに座って。どんぐり茶をいれるね」
と、木製のコップにどんぐりの粉と思われる物を少し入れると、少女は言葉を発した。
「エーテルさん、コップにお湯を頂戴!」
さきほどのコップの7分目くらいのとこに湯気が立ったお湯が現れる。そして少女はそのどんぐり茶を私に差し出す。
「はい。おねえちゃん、どうぞ。あ、私はユッカ。おねえちゃんのお名前は?」
「あ、ありがとう。私はヒカリだよ。ユッカちゃんか。素敵な名前だね」
私はもらったどんぐり茶を両手で包んで温まりながら返事をする。
もう、内心ドキドキだ。
エーテルってなに?
この子のお母さんのことどうしよう。
私はユッカちゃんと、この世界でどうやって生きていけばいいんだ?
文体等の些細な修正をしました。本筋に影響するような内容の変更はございません。




