2-07.着任(1)
執事長に私の新領主としての着任の挨拶ができることになったよ。
さてさて……。
「大変お待たせしました。執事長のモリスと申します。本日はどういったご用件でしょうか」
「本日着任したヒカリ・ハミルトン男爵です。この領地の案内をお願いします」
モリスさんの顔色が変わる。私のことを敵とみなすか味方に組み入れられるか考えている様子。表の執事長の顔とは別に裏の顔があるのかな?ジャガ男爵と結託して何かをしていたんだと勘ぐっちゃうね。あるいは、単に何かの罠かどうかを慎重に確認しているだけなのかもしれない。
「念のため、任命書などような物はお持ちでしょうか」
「こちらに」
フウマから貰った羊皮紙を差し出す。モリスさんは羊皮紙を確認し、国王の直筆らしき部分も丁寧に確認する。
「失礼しました。正式な任命書であることを確認させていただきました。差支え無ければ、ヒカリ・ハミルトン卿のお名前を今後どのようにお呼びすればよろしいでしょうか?」
「私へ億劫な儀礼は不要です。迅速に話を進めましょう。ですので、ヒカリ殿とかヒカリさんって感じで呼んで頂ければ構いません」
「それではご許可頂きましたので今後ヒカリさんと呼ばせていただきます。まず、何から案内させていただきましょうか?」
「今、確認したいのは以下の通り。
1.今日の夕飯の支度とハミルトン家3人の寝る場所の確保
2.この領地に住む人のリスト。使用人、奴隷、外部雇用者の全て
3.各建物の内容と管理者
4.明るいときに、領地の境界線の案内
5.この領地の収支報告
早口でしたが、理解できたでしょうか?」
「分かりました。
関所内の建物は領主の館へご案内する道すがら説明します。館に着きましたら、今日の夕食3人分の指示後、皆様の寝室へご案内します。
ヒカリさんの都合次第で、食事前に雇用者リストの説明が可能です。食事中または食後に簡単な収支報告は可能です。
領地の境界に関しましては、案内が1日がかりになる可能性がありますので、私の代わりを立ててもよろしいでしょうか。
そして、館までお持ちするお荷物と、お風呂の準備は如何いたしましょうか?」
「荷物を置いたら、食事前に雇用者リストの話をききます。食事中に収支報告の話をきき、長引くなら食後も付き合って欲しいです。
領地の境界線の案内に時間が掛かるなら、代わりの者を指名してください。そして今日は荷物持ちも、お風呂も不要です」
「かしこまりました」
このモリスさんは、テキパキと凄い速さで応答してくれる……。めちゃくちゃ頭いいんじゃないの?貴族の執事って、こういうレベルの人達なのかな……。
ーーーー
関所内の建物に関しては、昼間に見て周ったとおりの説明を受けた。館に着くと、モリスは直ぐに料理人とメイドに指示をだしていた。モリス本人から寝室の案内を受けるときに、3部屋別にすることもできると聞いたけど、十分に大きいので、3人同室にすることにしたよ。フウマは男の子だから、そのうち別部屋がいいかもね。
「では、早速雇用者のリストを説明をさせて頂きますが、よろしいでしょうか?」
「はい。家族3人で聞くけど気にしないでください」
「承知しました。
先ず、この領地には領主の家族を除いて32人です。
雇用者は15名で男性10人、女性5人。
奴隷17名で、男性5人、女性12人です。
外部からの通いの者は現在いません。
この館の従事者は私を入れて5名で、普段は4名が食事や清掃などに携わっています。
関所の管理業務は私を入れて16名で門番や通行料金の計算、その他トラブル対応をしています。
あと、奴隷小屋に12名が待機しております。
簡単ですが以上になります」
「ありがとう。ってことは、奴隷で働いている人もいるということで良い?」
「居ります。主に力仕事や清掃を担当しています」
「奴隷小屋の12名はどういう扱いです?」
「前領主様の性奴隷にございます」
「ってことは、奴隷は雇用でなく、私の所有物扱いってことで良い?」
「そのとおりです。領主が交代されましたので所有権も移ります」
「性奴隷を解放したら、貴方が上手く働き場所を与えられる?」
「解放という言葉の定義が判りませんが、働き手は欲しい状況です」
「食事前に突然で申し訳ないのだけれど、私が奴隷小屋へ行って、そこで挨拶ができますか?」
「はい。可能です。何かご一緒に必要なものはございますか?」
「彼女らの鍵、体を洗ったり、拭いたりするもの。衣服または布のような体を包むもの。そして、この屋敷の空いている大部屋で12名が横になれる場所が欲しいです」
「承知しました。鍵、体を拭くもの、部屋は直ぐに用意可能です。衣服または布は少々お時間が必要かもしれません」
「服は後でもいいです。無ければ明日買いに行ってもらってください。服が無いとモリスが働かせ難いと思います」
「ありがとうございます。直ぐに手配し、鍵をお持ちします。私も同行した方がよろしいでしょうか?」
「お願いします。」
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執事長のモリスさん、館のメイドの一人と私の3人奴隷小屋へ行くことになった。暗い中をランプを点けて奴隷小屋へ向かう。ユッカちゃんはお疲れで部屋で休んでてもらった。フウマには私の護衛よりユッカちゃんに付き添って貰うことにした。もう日が暮れて暗いので、メイドさんの照らすランプを頼りに奴隷小屋へ向かう。粘土の洞窟でやったみたいに髪の毛を光らせてもいいんだけど、こっちの手の内をやたらと見せる必要はないからね。
「ヒカリさん、こちらになります」
「ありがとう」
「皆様、眠っているかもしれないところ申し訳ないですが、新しい領主として着任したヒカリ・ハミルトンが挨拶をさせていただきます。
これから貴方たちの鍵を外します。性奴隷から解放します。こちらのメイドさんと一緒に川で体を洗ってきてください。それが終わったら領主の屋敷の一室で過ごしていてください。逃げたければ今逃げてもよいですし、質問があれば後で部屋を訪問したときにおねがいします。
一方的な通達ですが以上になります」
「モリスさん、戻りましょう。メイドさん後はよろしくお願いします」
「「はい」」
まだ、夜は始まったばかりだ……。
これ以上の無理難題がこの関所に無いといいんだけどね……。
誤字などの修正になります。本ストーリーへの影響はありません。




