2-04.引っ越し
引っ越しの準備を進めて、<森のおうち>ともお別れ。
領主になろうにも、現地現物を見ないと判らないことが多い。
それならか、いくしかないね。
<<ナビ、ハミルトン家の情報は個人情報としてアップロード禁止。パスワードはこれまでのと共通で。OK?>>
<<了解>>
<<ハミルトン家の3人のエーテル使用権限ランク、魔力量を教えて>>
<<魔術ランクと魔力量は以下の通りです。
ヒカリ:ランク7、魔力2000
ユッカ:ランク5、魔力3000
フウマ:ランク4、魔力800
です>>
<<ひょっとして、無詠唱ピュアを教えたからフウマのランク上がった?>>
<<<ピー>>>
<<今日、訪問者として来たばかりのときのフウマのランクを教えて>>
<<ランク3です>>
<<ありがとう。私たちの魔力も増えてるけど、フウマは普通の宮廷魔術師に比べてもすごいね>>
<<潜在的な魔力が解放された部分に関しては、本人もまだ気づいていないでしょう>>
<<丁寧にありがとう>>
<<あと、フウマの祖父で異世界から来た人はいる?>>
<<検索条件が曖昧か、個人情報をアップロードしていない可能性があります>>
<<最後に、フウマはデータベースアクセス権限ある?>>
<<今はありません>>
<<いろいろありがとう。いつも助かるよ>>
「じゃ、これから3人で引っ越しの準備を始めるめんだけど、各自の必要な荷物ってある?」
「お肉」と、ユッカちゃん。
「このまま」と、フウマ。
「ユッカちゃん、食料は大事だけど、お父さんとお母さんのお墓は移さなくていい?」
「ここに残してもらえるなら、ここでお別れする」
「フウマ、ここが取り壊しされるとか、他人に譲渡されるとかある?」
「問題無いと考えますが、レナード・バイロン卿に確認されるべきかと」
「レナードさんか……。リチャード王子のこともあるし、領地が隣接することになるし、早めに挨拶だけはしておいたほうがいいね」
「はい。挨拶されておいた方が今後の領主生活がスムーズに進むと思われます」
「わかった。挨拶してから行こう。それで、フウマはその服どうするの?」
「これしかありません」
「ユッカちゃん、お父さんの服でフウマに貸してあげられるものないかな?」
「う~~ん。あるかな~~。よくわかんない」
「みんな、フウマが表の仕事で着てても良さそうな服を探そう。そんな黒装束で執事をやってるわけにもいかないもんね。それと、引っ越し先に持って行った方がよさそうな物があったら、ここに並べよっか」
「おっけ~」
「わかりました」
フウマの着れそうな服はあったよ。普通の狩人っぽい服で、ユッカちゃんから借りることにした。先ずはこれでいいよね。その他に持っていくものは、調理器具以外めぼしいものはなかった。トモコさんの毛皮と、毛皮を漬けている液体のサンプルは回収。冷蔵庫内のもので、お肉類、天然酵母は回収することにした。肉、毛皮、サンプル、天然酵母、調理器具は、いろいろ種類があったから、忘れないようにリスト化してナビに登録しておいたよ。
「服は3人ともOKだね。じゃ、荷造りしよっか。」
「うん」
「私は着替えた服と、腹巻にしている金貨の2点のみです」
「ユッカちゃん、カバンを貸してくれる?」
「はい」
「まず、フウマの服と荷物から入れるね」
「どうぞ」
「うっわ。この腹巻重い。片手で持ち上がらないよ」
<<ナビ。金の比重。あと10kgのおおよその体積>>
<<比重19.3g/cm^3、10kgで500mlペットボトルサイズですね>>
<<ここにペットボトル3本分の金貨があるから、大体30kgか。ありがとね>>
<<興味本位だけど、日本の500円硬貨だと何枚分ぐらいの体積になるの?>>
<<500円硬貨ですと、2000枚相当です>>
<<ありがと>>
「おねえちゃん、重くても優しく入れてね?この前の粘土のときみたいのはダメだよ」
「わかってます!」
「フウマ、この腹巻の金貨を小分けにしてもいいかな?」
「どうぞ。後で巻き付けられるように袋は壊さないで戴いた方がありがたいです」
「わかった、だけど、突風で吹き飛ばされる心配はないよ?」
最初は丁寧に入れていたんだけども、肉とか革の順番になると、種類が多くて面倒になってきた。メモはナビにリストとして記録してあるから、中身を確認せずにどんどん入れることにした。
すると、フウマの顔に怪訝そうな表情が浮かぶ。
「うん?フウマ、なんか心配?」
「あ、ええと……、それはちゃんとカバンに入ってますか……?」
「はいってるよ」
「そ、そうですか。それで、冷やしてあった肉類が、そのカバンの中で温まってしまっても大丈夫でしょうか?」
「なんか、吟遊詩人のお話にでてくるカバンみたいでさ。食料とか水を運んでも日持ちするみたい」
「あの伝説が実話だったということですか?」
「実話かどうかしらないけど、そんなカバンみたいだね」
「もし、そうだとすると、家からだせなくなりませんか?」
「なんで?」
「いや、あれだけ重い物をたくさんいれたら、持ち上がらなくなるかなと……」
「大丈夫だよ。ユッカちゃん、詰め終わったから背負って」
「はい!」
と、ユッカちゃんはいつも通りに軽々と持ち上げて普通に背負う。
仕草もランドセルを背負っているような姿も可愛いね。
「ユッカさんは<剛力>か何かのスキルを取得されてますか?」
「ううん?あと、フウマおにいちゃんと家族だから、私のことユッカでいいよ?」
「ああ、ええと……。カバンのことはもう良いです。それで今後のお二人の呼び方ですが、家族になりますので、お姉さんとか、ユッカちゃんと呼ばせて頂きます。また、段々と言葉遣いも家族同士で話す様に変えていきますので、その辺りもご承知おきください」
「うん、そうした方が自然だね。じゃ、ユッカちゃんの両親に挨拶してから出発だよ」
ーーーー
まず、レナードさんの所へ挨拶に行った。けれども門番によると、今日レナードさんは出かけていて不在とのことで、帰りがいつになるか判らないって。ここで待ってても仕方がないので、また今度挨拶に伺うことと、<森のおうち>と<トモコさんのお墓>は壊さないで欲しいことを伝えてもらうことにした。 言付けを終えて、さよならをしようとしたところ、『例のこん棒を1本返したい』って、言われた。なんで1本なのかわからないけど、まぁ、要らなかったんだよね。カバンに入らないのでフウマに持ってもらって先に進むことにしたよ。
次は宿屋のジェームズさんの所に寄った。ホットミースが上手く作れてるみたいで、宿屋としての賑わいは判らないけれど、軽食を食べられる珍しいお店としてに賑わっていた。ジェームズさんに会って、宿屋でお世話になったお礼を言うのと、今後はレナードさんに卸すパンを作るための天然酵母は、はジャガ男爵の所に来て欲しいと伝えた。ジェームズさんにとってみれば、奥さんがメイドの仕事をして病に倒れた件があるから嫌な思い出があるんだろうね。ちょっと怪訝そうな顔をしていたけれども、そこは、私の名前を出せば問題になら無いって伝えておいた。
ついでに、預けっぱなしだった例の斧も回収していくことにしたよ。
「姉さん、その斧は?」
「あ、興味ある?なんか銘みたいのなのが入っているから、捨てずに残しておいたんだけどさ?」
「是非見てみたいです」
「これさ?重さは大きさの割に軽いんだけどさ、森の中で魔物を倒すために振り回すとかできないと思うんだよ。だから本来の斧の役目として木を切るときに使うぐらいかな~?」
フウマは私の説明を聞いているのか、聞いてないのか良くわからないけど、斧本体をじっくりと観察している。全体の大きさ、重さ、銘とかを確認し終わると……。
「これはひょっとするので、隠して持ち歩いた方が良いです」
「どういうこと?」
「この斧を目当てに襲われると厄介です。本物か腕試し品か判りませんが、本物なら神器級です。鍛冶屋の腕試し品なのに本物と勘違いされて、この斧を奪うために襲われる可能性もあります。どちらにしろ、これをむき出しのまま持ち歩いていて良いことはありません。私としても護衛するべき対象が増えるのは望ましくありません」
「なるほどね。じゃ、預かってるフウマの黒装束で包んでもよい?」
「どうぞ」
なんか、物干しざおに洗濯物を吊るしてるような雰囲気になるように胡麻化して、斧包んで運ぶことにしたよ。私がこんな物干し竿を持ち歩いているのは人目を引くってことで、フウマに斧をもってもらうことにして、代わりにこん棒を私が持つことにした。
さぁ、初めての領地までもう直ぐだね。
誤字、ニュアンスの修正。本ストーリーへの影響はありません。




