40.独り立ちしよう
ユッカちゃんと相談をする。
さて、宿屋の問題も片付いて、久しぶりに<森のおうち>に戻ってきた。
ユッカちゃんと二人でくつろぎながら<どんぐり茶>を飲む。
「「あのね、相談があるの」」
二人同時だった。
「ユッカちゃん、どうぞ」
「おねえちゃん、先にどうぞ」
「私はユッカちゃんの後でいいよ。先に言ってみて」
「うん……。あのね?」
「はい」
「おねえちゃんは、宮廷魔術師になるんだよね?」
「最初に会ったとき、そんなこと言ってたね」
自分がこの異世界に【自由な研究】を夢見て転移して来て漸く一か月が経とうとしている。
衣食住の全てが無く、やっと食と住の2つが手に入ったばかり。
まだ、服すら買えずトモコさんの借り物だ。
宮廷魔術師にる前にやるべきことがまだまだあるだろう。
今、この状態で宮廷魔術師になったらなったで、自由に研究できるか判らない。
そんなことを改めて問われる質問だった。
「それでね?おねえちゃんが宮廷魔術師になるまで、
お母さんの代わりにいろいろ教えて欲しいの」
「私がユッカちゃんに教えられることなんてないよ~」
「あのね。私はヒカリお姉ちゃんに会うまでは、独りぼっちだったの。そこでお姉ちゃんに会ったでしょ」
「うん」
「すごく、怖かったの。ヒカリお姉ちゃんがどんな人か判らないから。お父さんやお母さんから色々な人のことを聞いていたけど、お姉ちゃんのことが頼っていい人かどうか判らなかったの」
「うん」
「だから、試したの」
「私を?」
「どんぐり茶も。お母さんの浮遊も。お母さんのペンダントも。狩りの特訓もなの」
「そういえば、短い間に、いろんなことがあったね」
「おねえちゃんは、何も知らないでこの世界に来た人だったの。なのに、私のことを疑ったり、騙したり、殺して奪おうとしなかったの」
「そ、そうかな……」
「私のお母さんも、異世界から来たんだって。お姉ちゃんがお母さんに似ててびっくりした。だけど、おねえちゃんは一生懸命この世界で生きようとしてたし、私はお母さんが助けられたときのことを聞いていたから、今度は私がヒカリおねえちゃんを助けることにしたの」
「そっか。知ってたんだ。私を助けてくれてありがとね」
「ううん。私がおねちゃんにいっぱい助けて貰ったの」
「そう?」
「私は背が低くて、一人でおかあさんを運べなかったの。ちっちゃいから、一人では街で物を売れなかったの。一人では、追跡者を追い払ういい方法が見つからなかったの。宿屋のお母さんを治療できても、宿屋を幸せにできなかったの。他にもいっぱい、いっぱい」
「そっか。上手くいって良かったね」
「おねえちゃんと一緒に行動してて、とっても勉強になったの。街の人との会話だけじゃなくて、いろいろなことに目を向けて、新しいことを考えて解決していったのがとても楽しかったの」
「私もそういうの好きだよ。これまでの常識にとらわれずに、問題を解決したり、新しい発見をしたりすると、とっても満足した気持ちになる」
「だから、おねえちゃんが宮廷魔術師になるまで、一緒に行動していろいろなことを教わりたいの」
「なるほど。知識とか魔法の使い方じゃなくて、研究する心を磨きたいわけだ」
「うん」
「いいよ。私はそれが好きだから、一緒に楽しむことができるよ」
「ありがとう。そ、それで……。おねえちゃんの相談って?」
「お母さんの服、まだ借りててもいいかな?いつか宮廷魔術師になれるまで……」
「もちろん!」
そっか。ユッカちゃんも探求心旺盛なんだ。そして単に好奇心があるだけでなくて、その解決にも喜びを感じれるんだね。私をこの異世界に飛ばしてくれた主神さんには感謝するしかないね。こんな素晴らしい環境に送ってくれたのだから。
じゃ、私は主神への約束通り、【生きて自由に研究をする】そのために前に進もう。
先ずは、何からやろっかな……
多分、ユッカちゃんと狩りの特訓の再開からかな……
いや、ユッカちゃんに頼ってばかりじゃ駄目だ。
独り立ちすることも考えないとね!
これで第一章が完結です。
次から第二章になります。
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