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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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39.ピザを作ろう

実際には3日ぐらいしか経過してないんだけど、

なんだか、久しぶりに宿屋に帰ってきた気がする。

竈の組み立てがどこまで進んだか心配だね。

「よう!嬢ちゃん!竈づくりがほとんど終わったんだが」

「あ、竈職人さん!ええっと、あの、今更なのですが、お名前を伺っても……」


「おう、俺はトーマスだ。今後ともよろしくな!」

「私はヒカリです。こちらがユッカちゃん。

それで、竈の出来栄えはどんな感じでしょうか?」

「今日から火入れしていいぞ。ただし、煉瓦焼くような高温とか長時間はダメだ。

水分が抜けてないところがあると、そこからガタガタになる」


「了解です。では、残りのお代の方をお渡ししますね」

「おう。助かるよ。弟子達にも一週間分の給金をやらんといかんしな。

あいつらも良く頑張ってたんだ。機会があったら褒めてやってくれ」

「はい。また機会があったら、ぜひお願いします」


「俺も、長持ちする設計の窯を作ったのは初めて心配だ。

様子みたり、修理なんかも引き受けるからな」

「はい、そのときは是非お願いします」


ーーーー


宿屋の主人のジェームズさんに留守中の様子を聞いてみたよ。


「ヒカリさん、パンの代金は毎日小金貨1枚を頂いています。

こちらを宿屋のお給金としてお二人へ支払うことでよろしいでしょうか?」

「そうですね、パンの製造・販売が軌道にのるまでは、それでお願いします。いずれ、こちらの宿屋でパンを自前で作ってもらえれば、パンの製造・販売の権利も譲ってもいいと思うんですけどね」


「いや、ヒカリさん、ちょっと問題がありまして……」

「なにか?」


「天然酵母の培養なのですが、上手く増えないんです。

ヒカリさんに言われた通りの配分で干しブドウと水を入れて、

そこにヒカリさんからもらった天然酵母を足しているんですけど、

酸っぱい臭いになったり、カビが生えてきてしまうんです」


「う~ん。

私も二人で住んでる森の中で作れた物なので、そこでの適性があるのかもしれません。こちらの方で天然酵母が上手く作れるまでは、森の住まいから運んできます。天然酵母以外の問題がなくなって、こちらで全てが賄えるようになったら、私たちの住んでる所まで買いに来てくださいますか?」


「いや、ちょっと待ってください。天然酵母の問題以前に、パンの製造・販売権はヒカリさんに与えられたものですので、勝手に他の人には譲れないんですよ。あくまで、私たちの宿屋の人員で補助しているだけです。それに、天然酵母がこの宿屋でどんどん増やせるとなると、盗まれたり真似されたりしてしまう可能性があります。なので、ヒカリさんの天然酵母とパンの製造・販売権はそのままでお願いします」


「じゃぁ、私がパンのジェームズさんに製造委託をして、その代金を支払う形にすれば問題ないということですね?」

「はい。それでお願いします。その他は全く問題ありません」


「それでしたら、鍋1回分のパンを焼くための天然酵母代金として銀貨2枚を頂きます。それ以外は売上から材料費や人件費を賄ってください」

「え?いや……。十分というか、本当にそれで良いのですか?」


「はい。問題なければもう一つのお願いを聞いていただけますか?」

「もう一つのお願いですか?」


「今の鍋で焼くパンはレナードさんの許可が無いと勝手に販売先を広げることが出来ないのです。なので、新しく作った竈で別の料理を作ろうと思います」

「ヒカリさんが作った竈ですから、どうぞご自由に……?」


「その料理を、この宿屋で提供できるようにしてもらいたいのです」

「<ふわふわパン>の次の料理ですか?」


「はい。天然酵母みたいな複雑なものでありませんので、多分大丈夫です」

「わかりました、挑戦してみます!」


「じゃ、早速一緒に材料の買い出しに行きませんか?」

「はい!」


ふわふわパンの成功と、竈の成功をみせられたのだから、ある程度は私を信じるしかないよね。次のおねがいであっても、言われるがまま、挑戦してみようって気持ちになってくれたのはありがたいよ。


ーーーー


市場のような食材屋さんを見て歩く。

・小麦粉

・チーズ

・オリーブオイル

・なんと、トマトが。大航海時代前のヨーロッパには無かったらしいけどね。

・ルッコラ、ナス

・ソーセージ、サラミ

・岩塩

・バジルやローズマリーなどのハーブ少々

最初はこんなシンプルな食材で行こう!


早速宿屋で竈の試運転とピザの試作タイムだ。


最初は一番シンプルなので様子を見ることにしたよ。

小麦粉を捏ねて、薄く丸く広げる。

チーズを散りばめて、スライスしたトマトを載せる。

アチチにした竈に入れて……。


<取り出す金属の団扇うちわみたいなのが無い>


ぼ、棒で引っ掛けながらとることにしたよ。

あとでピザ焼き用のこては注文して作ってもらおう。


クリスピータイプのカリカリピザの出来上がり!

チーズはとろとろ、トマトは熱々でちょっと表面こげてる。

さぁ、早速試食タイム!

モチモチの生地が~とか言い出さなければ、結構いけるもんだね。


「おねえちゃん、これ美味しい!」と、美食家のユッカちゃんから喜びの声をいただきました!

「ヒカリさん、簡単で美味しいですね」と、ジェームズさん。


「でしょ?この竈があれば簡単に作れるよ」

「棒で取り出すのが、ちょっとコツが要りそうですね……」と、ジェームズさんは調理方法に若干の難色を示す。


「あ~。なんか道具あるといいかもね・・・。そこは後で考えておきますね。

それより、この調子で何枚か焼いてみませんか?」

「はい!」


てな訳で、竈の試運転と試食会は大成功!

あとは、これを街の皆に試してもらって、

ここの宿屋の名物料理として認知してもらうだけだね。


ーーーーーーーー


「おねえちゃん、街の広場で宣伝するのはいいけど、なんて名前の料理なの?」

「え?」


「私は初めて食べたよ?」と、ユッカちゃん。

「ヒカリさん、私も知らないですね。異国の地の料理ですか?」と、ジェームズさん。


「うちの方では<ピザ>って呼んでたけど、

そもそも、うちの国が発祥ではなくて……。

私の発音の『ピザ』がどういう意味かも分かりません」と、正直に話す私。


「『ピザ』はちょっと、良くないですね」

「うん……。おねえちゃん、残念だけど名前変えよう!」

「え?いいけど……?」


「熱い食べ物だから、<ホット>は入れたいですね」と、ジェームズさん。

「うん。どんな物かよくわかるね」と、同調するユッカちゃん。


「それと、一枚で完結しているので、、<シート>とか<ピース>なんて言葉があるといいかもしれません」と、次に進むジェームズさん。

「おねえちゃん、ご飯だから<ミール>もいいよね?」と、私に気を使ってくれるユッカちゃん。


「それなら、<ミール>と<ピース>で<ピール>って造語は?」と、仲間に入りたい私。


「<ピール>は不味いです。食品には使えません」

「おねえちゃん……」


「え、え?ああ、却下でいいです」


いや?あのね?

英語でピールって、皮って意味があるでしょ。

薄い皮みたいな食べ物だから、それでもいいかなって。

ピザもピールもダメだから、なんか私はどうでもよくなったよ。


「ユッカさん、<ミース><シース>ならいいかもしれませんね」

「うん。<ホットミース>なら、丁度この食べ物の雰囲気に合うね」


「ユッカさんナイス!それでいきましょう!ヒカリさんも良いですか?」

「は、はい。それでお願いします」


ホットミースって何?全然わかんない。

ピザはどこ行ったわけ?

これ、私がちゃんと覚えないと

新語だから勝手に翻訳してくれないよね?


<<ナビ、聞いてた?>>

<<はい>>


<<私がこの食べ物を指して、<ピザ>って言ったら、

ここの住人たちはどんな反応になる?>>

<<『食事のマナーを判らない、一緒に食事をしたくない人』

と、思われます。それを口に出すかは別ですが。>>


<<そう。<ホットミース>は?>>

<<ヒカリの言う<ピザという料理>を総括した名称として

よくマッチした表現と捉えられ、理解が進むでしょう>>


<<分かった。私が脳内で<ピザ>って思って喋ったら、

私の口から出る音は、<ピザ><ホットミース>どっち?>>

<<ご想像の通り、<ピザ>です。新語の登録変換は行えません>>

<<ありがとう>>


なんか、ミスすると絶望的だね。

ピザの製造・販売禁止令を出すかね……。


いや、違う。

<ホットミース>の製造・販売禁止令だ。

これ、絶対不味いって!


ーーーー


試作も終えて、名前も付けて準備も終えた翌日。

一応、木の箱にいれてあるのですぐには冷めない。

30分以内の配達はOKなんだっけ?


「ホットミースいかがですか~?」と、私。

「今日から新発売だよ~」と、ユッカちゃん。

「宿屋ジェームズの新メニュー如何っすか~!」と、ジェームズさんも頑張って客寄せする。


3人で机並べて呼び込みをする。

すると、一人のお客さんが好奇心にかられてやってきた。


「なに?ホットミース?そんな都合の良い食べ物あるかいな?

ちょっと、見せてくれ」

「こちらです。どうぞ」


「へぇ?いくらだい?」

「このいろいろ載った物が銀貨一枚(1000円)。シンプルなのが銅貨5枚(500円)です。」


「ちょっと高いが、このシンプルなのを貰おう」

「熱いので気を付けてくださいね。でも、熱いうちに食べてください」

「そりゃ、<ホットミース>だもんな。ここで喰うよ」


3人の視線が初めての客に注がれる。

ムシャムシャとチーズを糸引かせながら食べる。

チーズが伸びてるってことはまだ温かいね。


「おい、お嬢ちゃんたち!なんだこれは!」

「新発売のホットミースです。どうかしましたか?」


「美味い!これがこの値段は安いんじゃないのか?」

「毎日、手軽に食べに来てもらいたい値段にしました」

「分かった。宿屋ジェームズだな。次からは店にいくぞ。品切れにしないようにな。」


てな調子で、ネーミングが良かったのか、

皆さん料理を理解して食べて、

その真実と美味しさに偽りが無いので好印象を示すばかり。

あっという間に完売した。


これ、何日か続けていく必要がありそうだね。

でも、軌道に乗るなら、宿屋の3人でやってもらった方がいいかな。

天然酵母の問題とか、竈の経過観察の問題はあるけれど、

レナードさんからの定期収入と<ホットミースの提供>

これで奥さんが外に働きに出なくても宿屋は安泰だよね。

誤字などの修正です。本ストーリーへの影響はありません。

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