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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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38.医者になろう(2)

重症のリチャード王子に面会。

なんと、胃の辺りに魔石が……

「ユッカちゃん、まずあれを取らないと。外科手術とか知ってる?」

「外科って、体を切ることでしょ?危ないから止めた方がいいって、お母さんが言ってた。

吐き出させればいいんだけどね」


「確かに、あの体調で外科出は無理だよね。

じゃ、ユッカちゃんのいう通りに吐き出させる方法でやってみよう。

私が王子の喉に指を突っ込むから、

ユッカちゃんは胃の中で魔石がはりついてないか、動いているかを確認して。

魔石が動くようだったら、胃液と一緒に魔石も外に乗せて運びだしてくれるかな?」

「おっけー」


「王子、苦しいですが、我慢して下さい。飲み込んだ物を吐き出してもらいます」

「わ、わかった。無茶させるなぁ……」


「では、いきます!」


指を突っ込む。私の指が喉に届くと嗚咽とともに胃液が出てくる。

カランコロンと数個の魔石が一緒に飛び出した。

よし、これで第一段階成功だね。


「ユッカちゃん、どう?」

「胃に溜まってたのは全部とれた。あとは肺の治療だけ」

「おっけ~」


吐いた物の始末をしつつ、王子の周辺を清掃。

うがいもしてもらった。


さて、魔石を粉末にするんだけど……

あ、ユッカちゃんの魔石は袋ごと取られちゃったんだっけ。

しょうがないから、前回同様に粉を生成するか~。


「王子、この粉を鼻から吸引してもらいます」

「ハイハイ。なんでも仰せのままに」


白い領域が広すぎる。

手前から少しずつだね。


「ユッカちゃん、粉は入ったけど動かせそう?」

「うん~。広くて多すぎる。おねえちゃんも手伝って」

「分かった」


<<ナビ、前回と同じ肺炎の症状のスキャンを右目に投影して>>

<<了解>>


いや~。これはキツイね。

王子もきついんだろうけど、全然白いのが出て行かない。

もにょもにょと、白いのが渦巻くから、

ちゃんとエーテルに反応してるんだけど、

体力が無いせいなのか、魔石の影響なのか、なかなか進まない。

これ、こっちの体が参るね。

まして、50km走破したばかりだし。


「ユッカちゃん、ちょっと栄養をとろう。用意してくる」


と、告げてから廊下にでると、

扉の廊下側で執事が控えていた。


そうだね。

下手に私が走り周って準備するより、宮廷の人たちに作ってもらった方が速い。

執事に言付けて準備をお願いすることにした。

「牛乳、ハチミツ、卵の黄身、これを溶いて温めたものを3杯作ってきて欲しい」と。

執事はコクリと黙って頷くと、足早に去っていく。

よし、回復に戻ろう。


「ユッカちゃん、もうすぐ温かい飲み物が届くよ。

それまで、落ち着いて、呼吸を整えて進めよう」

「わかった」


ゆっくり、ゆっくり進める。

途中、何度も王子がむせたんを吐き出した。

王子は辛そうだけど、効果がでている証拠だ。

よしよし、がんばってこ。


「ヒカリお嬢様、頼まれた物をお持ちしました」

「ありがとう」


お盆ごと受け取ると、王子、ユッカちゃんに渡した。


「たぶん、美味しいはず。お試しあれ」

「どれ。期待していいかな」

「おねえちゃん、匂いが甘い。でも、ハチミツ?」


二人がゆっくり飲むのを上目で眺めつつ、私も自分のカップに口をつける。

ああ、素材がいいのかな。とても濃厚で美味しい。

体が温まって、安まる感じがするね。


「王子、お味はどうですか?」

「美味しい!」と、王子より先に答えるユッカちゃん。

「これはいいね。もう一杯欲しいね」と、少し落ち着いてきた様子の王子。


「あ、口つけてしまったけど、こちらで良ければ」

「そうかい?遠慮なくいただくよ」


「おねえちゃん、わたしも!」

「はい。もう一回頼んできます」


今度は鍋とお玉がきたよ。いくらでもどうぞってことかな。

それか、鍋でつくった分の余りかな?

どっちでもいいや。今度は私の分もあるしね。


そろそろ1/3ぐらい、肺に黒い部分がでてきた。やっとだ。

この分なら、徐々に体力と一緒に回復していきそうだね。

まだ、息は荒いけど、大分楽になった様で王子は眠り始めた。


しかし、魔石はだれがのませたんだろうね?

王子が元気になったら聞いてみよう。

そういった呪術のような治療があるのかもしれないし。


自分達の食事を執事にお願いして作ってもらい

エーテルによる排出と王子の痰を処理しつつ、

見守ることにした。


ーーーー


翌朝、ユッカちゃんとピュアをしてから王子の様子を確認する。

肺の方はかなり綺麗になっている。栄養もたっぷり摂れることや普段からの体の鍛え方の違いなんだろね。宿屋の奥さんより酷い症状だったのにかなり回復が進んでいる。


「王子、何か食べたいものはありますか?」

「君が焼いた肉」

「手元にございません」


「君が焼いた木の実入りのパン」

「材料がありません」


「デザートで出してくれた、硬く焼きしめたお菓子」

「あのね。クッキーは砂糖がいるんだよ!」


と、ユッカちゃんが代わりに答えてくれたものの、

何も食べて頂けるものがない。


「君ら、意地悪だね?」

「あ、あの……。家に取りに帰らせていただければ……」


「はは。冗談だよ。困った顔も可愛いね」

「他の物を用意して参ります」と、受け流す私。


「いや、普通の食事なら執事が適当にやってくれる。

3人分の朝食を頼めばそれでいいよ」

「わかりました。頼んできます」


廊下で控えている執事に状況を伝えた。

かなり快方に向かっていて安心できる状態であること。

そして、元気になられて、食欲がでてきたので3人分用意してほしいとのこと。

ただし、まだ治療を続ける必要があるので私たち二人は滞在させて欲しいこと。


「ありがとうございます。如何様にも進めて頂いて結構です。治療が完了する前に、家に帰られる必要がある場合には、同行者を付けるので申しつけください」と、控えていた執事さん。

「こちらこそ食事など手伝って頂きありがとうございます」と、素直に返事をしたよ。


部屋に戻って、様子を見つつ魔石について切り出すことにした。


「あの……。今回のやまいについて、治療方法についてお尋ねしたいことがございます」

「なにかな?」


「小さな魔石を服用されていたようですが、どのようなわざなのでしょうか?」

「ああ。異国の地では肺の病にこの魔石が効果があるらしくてね。ある貴族の紹介で服用することにしたんだ」


「その治療方法を知ったのは、私が王子と出会ったより、後のことではありあませんか?」

「うん?勘がいいんだね。ほんの4-5日前だよ。効果が無ければ毎食ごとに服用するとか言ってたかな」


「ひょっとして、その魔石は、これくらいの小さな袋に入っていませんでしたか?」

「君は千里眼の魔術師なのかな?」


と、青年はベッドの脇の小さな引き出しから、革製の小袋を取り出してみせる。


「それです」と、私。

「あ、わたしの~~!」と、ユッカちゃん。


「うん?どういうことかな?」


私はかいつまんで経緯いきさつを話すことにした。

ジャガ男爵の所で働いていたメイドが体調不良になったこと。その病状が王子と同じ肺の病であったこと。そして、私たちが回復系の魔法を使えることを隠すために、その肺の病をあたかも異国の薬で治したように見せたこと。そのあとすぐにユッカちゃんの魔石の入った袋が盗まれてしまったこと。


「なので、その魔石を治療薬として王子に紹介した者がジャガ男爵に関わりのある人物であるかと想像しています」


「すごいね。そうだよ。ジャガ男爵本人が持ってきたんだ」

「やはり……。その魔石が他の回復薬の効果を抑止したり、王子の持つ回復の力と喧嘩していた可能性があります」


「そうか。君らが僕を治した訳だし、この魔石の袋がそのお嬢ちゃんの物だとすれば、今回の件はちょっと問題になりそうだね。そうだな……。この小袋がお嬢ちゃんの物っていう目印みたいなものはあるかな?」


「うんとね。お母さんが作ってくれたの。だから<トモコ製の毛皮>っていう貴重なものだよ」

「そうか。<トモコ製の毛皮>は確かに貴重だ。だが、ジャガ男爵もお金は持ってる。貴重な毛皮だけでは、ちょっと押しが弱いかな。もっと二人だけの秘密とか大事な目印とかなかったかな?」


「首に掛ける紐に『お母さんからユッカへ』って書いててくれた。でも、盗まれるときに切られちゃったかも……」

「いや?紐は切れてるけど残っているよ。どれどれ……」


王子は革袋とぶら下がっている紐を丹念に調べる。そして、革袋を握り締めると目をつむって考え事を始めた。


「ユッカちゃん、もうちょっとだけお兄さんにこの革袋を貸してくれないかな?借りてるお礼に今度砂糖を一緒に買いに行こう」

「いいよ。早くおにいちゃんも元気になってね」


「そうだね。このことはお兄さんと二人の秘密だ。そして素敵なお嬢さん、お名前を伺ってもいいかな?」

「ヒカリと申します」


「私はリチャード・ウインザー。このエスティア王国の王子だ。改めてよろしく」

「こちらこそ、数々のご無礼を失礼しました」

「気にしないでいいよ。気楽に話そう」


「ヒカリなら分かってくれると思うが、王室とその国の貴族の話になっている。私が回復できたことを含めて口外無用だ。この件、レナードの紹介でヒカリに助けて貰っているが、私が結果を報告するまではレナードにも何も言わないでくれ。『全力を尽くしたが、あとは王子の気力次第』とでもなんとでも。いいな?」

「はい。」


その後、朝食が運ばれてきて3人で一緒に食事をした。

午前中には王子の肺は完全に綺麗になっていて、

王子は気力も体力も順調に回復していった。


私たちは王子と執事に病は回復したことを告げると、

『先ずはお礼まで』と、金貨の入った小袋を貰った。

そして、私たち二人をこっそりと王宮の裏口から出させてもらうと、

城下町の門番までの目だたない通路を教えてもらった。

しばらく、目立たないようにしなくちゃね。


誤字、および王子の王家内の表記の修正です。本ストーリーへの影響はありません。

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