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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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35/334

35.竈(かまど)を作ろう(3)

魔物を退治できて、宝箱が残っていても、

砂糖は無いとおもうんだけどね?

ユッカちゃんの夢を壊すと悪いから黙っておこう。

二人で足元やら天井やら目の前やら照らしながら進む。

滑りやすい。水が冷たい。

服も靴もびしょびしょのドロドロ。


こう、もうちょっとサービスはないのかね。

ゲームみたいに3Dの通路できっちり囲まれてて、

人が歩くに十分な幅があって、

何もしなくても明るいみたいな。

どっかスイッチを入れると洞窟全部の松明がともるとかさ。


なんか、いろいろつかえるんだよね。

ヘルメットとか無いから頭もごつごつぶつかるし、

こん棒は入り口に置いてきて正解。


「おねえちゃん、索敵」

「了解」


直ぐに、<索敵>と<隠密行動>を実行する。

文句ばかり言ってる場合じゃない。

観光のアトラクションじゃないてことです。

この岩の裏に敵がいたし。

敵をスキャン。サイクロプス級ならさっきと同じ要領で楽々クリア。


途中、宝箱を開けたら、変なボロい背嚢はいのう型のカバンがあった。邪魔になるけど、重くないってことでユッカちゃんが背負ってる。なんだか小さい子がランドセルを背負っているみたいで可愛い。ボロだけどね。


で、とうとう最後の赤○の敵1体を残すのみになった。


「ユッカちゃん、あれ大丈夫?」

「おねえちゃん、しっかりエーテルで索敵した?」

「なんか、心臓の魔石の部分がとても大きい。ボウリングの玉ぐらいあるよ。それ以外は今まで通り。街道の追跡者みたくエーテルを制御している様子はないよ」

「おねえちゃん、初めての種類の魔物のときは頭もスキャンしてみて」


「え?ナニコレ。頭にも魔石みたいに光ってるのがあるよ」

「たぶん、心臓を先に止めると、頭が心臓を復活させる。頭を先に止めると、心臓のある体側が大暴走してこの洞窟が壊れるかもしれない」と、ユッカちゃんが教えてくれる。


「じゃ、帰ろっか」と、勇気ある撤退を提案する私。

「粘土はいいの?」と、本来の目的を聞き返してくるユッカちゃん。


「とれてない」と、素直に返す。

「砂糖の入った宝箱は?」と、ユッカちゃんにとっての冒険の目的を重ねてくる。


「あの魔物の後ろになんか宝箱があるね」と、ユッカ先生の機嫌を損ねない回答をする。

「おねえちゃん、あれも倒さなきゃダメ」と、当然の回答が返ってきた。


「作戦は?」

「考えよ!」


うん。状況をよく整理して、危なくならない方法を考えないとね。

正解としては、頭と体にある魔石の活動を同時に止めればいいとはおもうんだけど、どの程度のタイミングのずれが許容されるかだよね。人間にカウントダウンとか伝達神経の速度なんか誤差がありまくりだもん。

指でも握り合って、一斉に止められればいいんだろうけれど、タイミングのずれの誤差で同時に止められなかった時の保険が欲しいね。

まぁ、洞窟内で暴れられないように<重力遮断>の膜でこのまえの追跡者みたいに包んじゃうか。洞窟だから壁とか天井を蹴って、その勢いで来られるほど運動神経よかったら不味いな……。

更には、膜で包まれた状態の魔物をピュアを燃やすときに利用した、<超高温燃焼>を相手にかければ、一応大丈夫でしょ。あれだけの大物を燃やして、この洞窟の酸素を消費しきって酸欠になったら、それは不味いね……。


<<ナビ、この洞窟の部屋の酸素濃度、空気循環から、あの個体が燃焼した場合の酸素消費量と残存する酸素量が私たち二人の生存限界以上残るか計算して>>

<<問題ありません。裏から風の通り道があるので、密閉空間ではありません>>

<<瞬間的な酸欠も生じないね?>>

<<ヒカリの使用する魔術の種類と力によりますが、この洞窟全域の酸素が減る目的で行使しないと、そのような事態にはなりません>>

<<疑って悪かった。丁寧にありがと>>


「ユッカちゃん。考えたよ」

「うん」


「二人で手を握りながらカウントダウンして、私が心臓、ユッカちゃんが頭を止める。

もし、タイミングがずれて、暴れられたら困るから、こないだの追跡者を突風で追い返した<体が軽くなる膜>を外側に置いておく。暴走した魔物が踏み込んでこっちに来たら、体を浮かせて転がす。その間に心臓をとめる。それすら失敗したら、あの敵を燃やしちゃおう」

「わかった。それでやってみよ!」


最初に二人で手を握る。各自の準備ができたら握った手を開く。

二人とも準備ができて、掌が開いたら声を出さすに小指からくっつけていって、

カウント5の親指がくっつくタイミングで発動することにした。


私は付近のエーテルさんにお願いして、重力波遮断の膜を10歩くらい先の地面一帯につくった。その後で、魔物の体側の部分にエーテル遮断の膜を作り、心臓部の魔石を包む準備をしたよ。


よし、私の準備はOKだ。

ユッカちゃんも私の手を握ってる手が開いた。

お互いに準備完了だね。

じゃ、カウントダウン。

「「停止」」


……。

なんだか、あっけなく停止したよ。

こう、ハラハラ、ドキドキのアクションとかないのかね?

いや、有ったら簡単に死んじゃうけどね。


で、ユッカちゃんが宝箱に向かって歩き出す。


「そこ、重力遮断の膜が残ってるから危ない!!」

「え?」


ユッカちゃんが普通に歩いて<重力遮断>の膜を通過しつつ、こちらを振り返る。


「ええ??私の張った膜はどこいった?」

「しらない。けど、このカバンの重さが無くなったよ」


「そのカバンが吸ったの?」

「わかんない」


「洞窟出てからかんがえよっか」

「うん」


赤○の落とした魔石はソフトボールサイズで頭と心臓で2個あるね。結構デカい。

後ろにあった大きな宝箱を二人で入念にチェックして、

罠がなさそうだということを確認した。

で、二人でいっせいのせ~ってなもんで掛け声をかけて開ける。


中身は……

・ボロマント

・ごつい斧

・金貨の入った革袋

・なんかの素材。粘土じゃない。


以上4点でした!

『砂糖は無かったね。ユッカちゃん、残念。

そもそも砂糖は鉱物じゃなくてさ、植物から精製してつくるし、

もし、宝箱に砂糖が入ってても溶けて無くなっているか、蟻が湧いて運ばれてるよ』

なんて、イジワルなことは言えないね

いつか本当の冒険に出るまで黙っておこう。


ーーーー


私が大きな斧を引きずって、ユッカちゃんに残りの魔石、マント、金貨、素材をランドセルに収納してもらう。またビショビショのドロドロになりながら、どうにか入り口まで戻ってきた。


「やった~!制圧~~!」

「やったね!砂糖は無かったけど面白かった!」


「そういってくれると私はうれしいよ」

「ほんとに楽しかったよ」


「じゃ、<粘土>と<こん棒>どうするか決めて帰ろっか」

「おねえちゃん。あのね?」


お母さんを浮かせて運ぶの?病気の奥さんを治したいの?

ユッカちゃんのお願いのスケールは私の思いつく範囲外だ。


「なに?」

「このカバンがおかしいの」


「壊れた?嫌なら捨てて行っても?」

「違うの。重さが無いの」


「さっきそんなこと言ってたね。まだ軽いんだ?」

「軽いだけじゃなくて、中身が無いの」


「はぁ?さっきの魔石とか、宝箱から出てきた金貨とかは?」

「どっかいった」


「え……。穴が空いてたってオチ?また洞窟の奥まで探しにもどるのか……」

「穴もなくて、カバンの中が無いの」


「ごめん。私も見ていい?」

「うん」


確かに無い。何にもない。

この感覚はあれだ。光学迷彩の基礎実験で木を移したときに、根っこから下が真っ暗で何もなかったのと同じ感覚。

む。もしやカバンが光学迷彩?


そ~~っと、カバンに手を入れてみる。

あ、あれ?何もない。

奥を探ってみるけど、何もない。

ていうか、ランドセルサイズのカバンに私の腕がすっぽり入るって、どういうこと?

わかった、これは<手品カバン>だ。マジシャンがステッキとか花だすやつ。

で、ユッカちゃんの肩から私の手がでているとか、そんなん。


お~い~!

そんな風にもなってないよ!

手品ですらないよ。

手を引き抜いて、ナビと相談だ。


<<ナビ、このカバンの機能、類するカバン、吟遊詩人の伝承含めて検索>>

<<同じ物ではありませんが、吟遊詩人の伝承の中に似たものがありました。


『あるとき、やる気と才能に恵まれた商人がいました。彼は、幾多の創意工夫を積み重ねて大商人になりました。商人の経営をすると、やはり荷馬車の道中の運搬が一番の問題であり、これをどうにかしたいと考える様になりました。

そこで、彼は伝説の魔術師を訪ねて、<なんでも入る魔法のカバン>を作ることお願いしました。商人はそれまでの稼ぎを湯水のごとく注ぎ、一方で魔術師も潤沢な資金と持ち前の才能を生かせる環境ということで、熱心に研究開発に取り組みました。その甲斐あってなんと20年もの歳月がかかって、背嚢型の1つのカバンができました。

そのカバンにはいろいろな物がどんどん入るのです。背嚢の口の大きさにさえ入ればなんでも入りました。水でも塩でも食料でも。取り出すときは、入れた人が入れたものを念じるだけで取り出せるのです。これなら盗賊がこのカバンを盗んでも中身は盗めないので、まったく問題ありません。そう、とうとう魔法のカバンができたのです。

ところが・・・。

その魔法のカバンは入れたら、入れた分だけ重くなるのでした。水を30Lいれたら30kg重くなる。1000L入れたら、1tの重さになってしまう。すると今度はそのカバンを背負って歩ける人などいないじゃありませんか・・。

その大商人は20年分一気に歳をとり、引退しました。伝説の魔術師は依頼主の商人の落胆を知ると、「言われた物を、言われた通りに作って何が悪い!」と、その作った魔法のカバンをとある山奥の洞窟に封印してしまったのでした。

あなたもどこかでなんでも入る魔法のカバンに出会えるかもしれません』


と、ありました。これがヒカリの現状に即しているかと>>

<<ありがとう。ほぼそれだ。最後は私とユッカちゃんで仕上げた>>


「ユッカちゃん、入れた物を思い出しながら引っ張り出そうとしてみて」

「う~ん。ボロマント、金貨の袋、魔石2つ、なんかの素材」


次々に洞窟の魔物を倒したときの宝箱に入っていたものがカバンからでてくる。


「砂糖の塊!」


なんの反応もない。


「おねえちゃん、このカバン壊れてる。砂糖が出てこない!」

「それ、ちゃんといれた?」


「入れてない」

「つぎは、入れた後で、出せる様に念じてみて?」

「わかった……」


ユッカちゃんは砂糖が出てこなくて残念そうだけど、

このカバンを上手く使えば粘土も楽に運べそうだね。

今日は粘土を入れる袋もないし、サンプルとして煉瓦2-3個分の塊を1個だけ持って帰って、

また明日こよう。


それより、斧とこん棒2本。

ランドセルに入らないんだよね……。

誤字などの修正のみです。本ストーリーへの影響はありません。

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