34.竈(かまど)を作ろう(2)
なんか、こう、TVゲームのお使いをしてる感じだね。
本当の目的からどんどんずれていくような。
でも、ま、ユッカちゃんと一緒に冒険できるならいっか。
「ユッカちゃん、窯作りのご主人との話は分かった?」
「うん。洞窟行って、粘土を馬車2杯分とってくる」
「理解が速くて助かるよ」
「おねえちゃん、直ぐいくの?」
「どれくらい危ないか下見をしに行く。粘土が取れそうなら、次は馬車を借りて行くことになる」
「そしたら、洞窟の魔物を倒すために、おねえちゃんの狩りの特訓の再開だね」
「私がちゃんと魔物を倒せるようになれるといいね……」
ユッカちゃんにとって重要なのは魔物でも粘土でもなく、私の訓練が大事ってことね。
確かに、この先ユッカちゃんと冒険をするためには魔物を倒せる必要があるんだろうけどさ……。
ーーーー
キリギスの街を出て北西に向かう。
馬車で四半日っていうと、10kmぐらいの距離だと思う。
10kmだったら片道1時間もかからずに到着できる距離かな?
ただ、ユッカちゃんと<索敵>をしながら進むことにした。
一応、私にしては初めての狩りなのでナビにも頼ることにしたよ。
<<ナビ、約10km先の洞窟までの安全確認>>
<<8km先までは青○のみ。その先は黄色も混じり、個体数も多いです>>
<<ありがとう>>
「ユッカちゃん、エーテルつかってもいいよね?」
「うん」
「<索敵><隠密行動>もする?」
「うん。あ、それと、おねえちゃんは獣と魔物の違いを索敵で分かる?」
「気にしてなかった。わかんない」
「今日は狩りの練習だから最初から教えておくね。
獣は心臓のあたりに心臓があって、魔石は無いの。だからエーテルの索敵ではボヤっとしか反応しない。魔物は心臓の辺りに魔石があって、そこから強いエーテルの反応が返ってくるよ」
「そっか。ありがとう」
「獣は倒しちゃうとお肉がもったいないから、眠らせるね。魔物だけ倒して進もう」と、ユッカちゃん。
「眠らせる?」
「『脳の視床下部ってところに、疲れを感じる物質をたくさん送り込むと眠くなるの。獣なら大体そうなる。人間でエーテル作用を検知できる人とか、薬物を使ってると効かないことがあるから注意』っておかあさんが教えてくれたの」
「なんとなくわかった。やってみる」
「じゃ、獣は私がやるね。魔物は心臓部にある魔石の周りのエーテルの流れを止めるだけ。魔物ならおねえちゃんも簡単でしょ?」
「わかったとおもう」
「じゃ、どんどん進もう」
「はい、ユッカちゃんについていきます」
ーーーー
なんか、こう、激しいアクションとかないの。
単に止めるだけ。
索敵→光学迷彩→近づく→止める
→索敵して近くに敵が居なかったら光学迷彩解除。敵が居たら止める。
→魔石は拾えたら拾う。
このループ。
いや~~。
これは敵無しでしょ。
でも、ちゃんと心臓のあたりを、ギュッと掴んで止められないと魔物が苦しんで暴走するんだよね。こっちも危険だし、苦しんでる魔物も可哀想。ここはきちっと慣れるまで訓練を積んでおいた方がいいね。
魔物を倒したときにぽろぽろと落ちる小さな魔石を拾いながら進むと、あっという間に目的の洞窟が見えてきた。
見えてきたんだけど、入り口の両脇に一体ずつ、1つ目のデカいのがいるの。こん棒を持ってるよ。これ、危ないって。
「ユッカちゃん、あれ大丈夫?」
「今までと同じ方法で倒せるんだけど、2体以上が同時にいるのから危ないの」
「どう危ないの?」
「片方に気づかれると、もう片方が襲い掛かってくる。洞窟の中にも居ると、そっちも一緒に襲い掛かってくる」
「それでパニックになったら?」
「あのこん棒で死ぬまで殴られる。一回殴られるとエーテルを操作できなくなるから助からない」
「助からない?」
「うん。
おねえちゃんと二人ならいくつか方法あるけど……。ミスしても助かりやすい方法にしよ!」
「ユッカ先生、おねがいします!」
「うんとね。敵が2体いるときは、遠い方から近づいて、片方だけがこちらを気づく場所まで行くの。そうすると、私たちは攻撃してないのに、魔物の索敵能力で魔物がこっちにやってくるの」
「うん」
「そして、もう一体の索敵範囲外におびきだしてから、近寄ってきた魔物を倒すの」
「一体目が気が付かなかったり、二体が同時に反応したら?」
「一体目は、<隠密行動>を解除したり、遠くから石を投げたりして注意を引けばいいの。二体同時に反応しちゃったら、一旦逃げる。二体とも元の位置に戻るまで逃げて、逃げて、魔物が諦めるまで逃げる。元の位置に戻ったらやり直し」
「わかった」
「じゃ、見本をみせるから、おねえちゃんは見てて。二体目が釣られて動いたらおねえちゃんがそっちを止めてくれてもいいし、私と一緒に逃げてもいいよ」
「わかった。<隠密行動>のまま移動してみてるね」
「うん」
<光学迷彩>を纏って、敵に近づいていくんだけど、なんか目で追われている。ばれてる訳がないんだけど、なんだろ?一応ユッカちゃんに聞いておこう。
「ユッカちゃん、ちょっといい?」
「なに?」
「あの敵さ、こっちの方を目で追ってくるんだけど、なんかうまく隠しきれてない場所とかある?」
「ないよ。敵に姿は見えてないけど、私たちが移動する草の形とかの変化を捉えて、異常をみつけてるんと思う」
「そしたら、二人別々の方向から移動した方が、敵の注意も散漫になるし、ばれにくい?」
「うん。おねえちゃんが怖くないならそっちのがいいよ」
「わかった。そうしよう。がんばる」
「おねえちゃん、気をつけてね。転んで草が大きく動くと確認しに来ちゃうかも」
「わかった」
まず、念のためにサイクロプス以外が周辺に居ないかを確認する。洞窟のある山の裏手とかは判らないけれど、自分たちが逃げていく報告には獣も魔物も居ないことを確認した。
次に、左側のサイクロプスを釣ることにした。私は左側の奥へ予め移動しておく。ユッカちゃんが、左手前から近づきつつ、小石を投げた。すると一体目が小石が飛んできた辺りまで様子を確認しに飛び出してきた。<光学迷彩>を纏ったユッカちゃんが、キュッと一体目のサイクロプスを倒す。ピンポン玉サイズの魔石が落ちた。そして何故かこん棒も残った。
ドロップはその場で拾わずに、2体目のサイクロプスの処理にかかる。一度、右の方まで移動してからさっきと同じ要領で二体目を倒す。二体目を倒し終わってから、魔石2個とこん棒2個を回収する。
「ユッカちゃん、この<こん棒>は何かわかる?やたら大きくて重いし。魔物と一緒に消えていかなかったけど」
「魔物が拾ったり、作ったりしたものを使っている場合と、魔物の中の魔石が生成してる場合があるみたい。どっちも<ドロップアイテム>として魔石みたいに取引されるよ」
「このこん棒も売れるものなのかな?」
「わかんない。帰りに考えてもいいと思う」
「そだね」
洞窟の入り口の脇に二本のこん棒を立てかけておく。で、洞窟の中をエーテルの探索をすんだけど、結構魔物の反応がある。
<<ナビ、洞窟の安全確認をお願い>>
<<青=0、黄色=12、赤=1>>
<<ありがとう>>
「ユッカちゃん、なんだか中に一杯いるね」
「うん。魔物同士の距離が近いから、一体ずつ処理はできないかも?」
「私も止め手伝うよ」
「じゃ、おねえちゃんがサイクロプス級を止められるかやってみよう!」
「分かった。先に行くね」
洞窟の直線で見通しのいい部分にいる敵まで<隠密行動>で近づく。でゆっくりと心臓付近の魔石位置をエーテルでスキャンする。
え?これ、魔石の元となるエネルギーの流れなんだろうけど、大きさがすごくおっきい。ソフトボールサイズはあるね。あれをギュッと一撃で止めるんだから、見落としが無いように全体から包み込んで心臓の周りまで膜を覆うのがいいね。
エーテル利用はイメージが鮮明であれば、それだけ効果が具体的に発揮する。外からゆっくりとエーテルの膜で魔石を包み込むように、ゆっくり、着実に……。なんだか、まだ止めてないけど魔物の心臓部のエーテル反応が小さくなってる気がするね。よし、このままギューッと包み込む!
「ユッカちゃん、行けたよ!」
「うん。おねえちゃんの包み方がすごく丁寧だった。あれだと周りも気が付きにくいと思う。」
「ありがとう。これなら時間かければ進めそう?」
「つられて反応した敵がいたら私が止めるから大丈夫」
「じゃ、このまま私が前を進むよ」
……。
暗い。滑る。観光鍾乳洞と違う。
無理!帰りたい。
「ユッカちゃん、エーテル索敵で壁とかの形は分かるんだけど、足元がぬるぬるしてるとか判らないし、暗いと小石とかでつまずきそうなんだけど」
「灯りが無いなら、明るくすればいいじゃない?」
「明るくできないし、明るくしたら魔物が反応してこない?」
「ここは獣が居ない洞窟だから灯りで反応しないよ」
「そなんだ。そしたら、明るくしてくれてもいいのに」
「『雰囲気とか難易度設定』って、お母さんが言ってた。ヒカリおねえちゃんなら分かる?」
「わ、分からなくはないけど、私は簡単で明るいのがいいなぁ。
それで、明るくするにはどうしたらいいの?松明とか持ってきてないけど」
「他の道具は?」
「光の魔道具とか、そういうのも持ってきてないけど」
「他には?」
「ない」
「なら、おねえちゃんが考える」
「分かった。ちょっと休憩だ。外にでてご飯にしよう」
「うん」
獣は眠らせてきたから、小さめの一頭ぐらいは簡単に調達できる。それを食べちゃおう。問題は、灯りをどうやって作るか考えてごらんってことだよね。
1つは、洞窟の入り口から導波路とかで光を導けばいいよね。簡単なら鏡。日本の情報通信技術なら光ファイバーみたいな。でも、そんな材料も無いし、設置もできない。そもそも論でいうと、夜とか天気が悪くなったら見えなくなっちゃう。
なので却下。
2つめは、燃焼物によって、周囲を照らす方法だね。松明とか火の玉とか。松明は木+樹脂が燃えている。火の玉はプラズマだったり、メタンガスへに引火だったりする。プラズマの方はコントロールが難しいし、燃焼反応と違うから置いておこう。
3つめは、蓄光素材。光のエネルギーを波長を変えて徐々に放出する。これも作用に限りがあるし、元の光学的なエネルギーを供給できるなら、最初からそっちを使う方がいいね。
4つめは、お祭りの夜店とかコンサートで使うような2液混合型の発光材料を化学物質から作って混ぜ合わせる方法があるね。材料さえ出せれば、多少ごみがでるものの安全安定だ。
5つめ。そろそろ本気でエーテル活用による魔法行使で灯りを入手する方法を考えよっか。魔力で何かを作用させて、光子を出せればよい。LEDなんてのは、電気を光に変えてるに過ぎないからね。
<<ナビ、量子効率の高い物質。できれば天然で可視光がでるもののリスト>>
<<少々お時間をください>>
でもさ、よく考えると炎の魔法って、どうやって出すんだろうね?物が燃える条件は(1)可燃物(2)酸素(3)温度なわけじゃん。<熱波の魔法>なら分かる訳よ。ところが炎が渦巻くような描写あるってことは、あるいはフェニックスの形になったりしちゃうってことは、蚊取り線香や鳥が燃えてないと、炎は起きないわけ。敵にたどり着くまで、炎の形となる可燃物質が減っていくのだから、その形状は保てないだろうと。今回の照明に似た難易度があるんじゃなかろうか……。
<<ぴろろ~ん>>
<<あ、ナビ。ごめん。というかそのチャイム久しぶりに聞いたね>>
<<調査結果が芳しくなく、途中報告を>>
<<どした?>>
<<洞窟内で簡単に光を得られるための、量子効率または量子収率の良い物質。および蓄光性素材の検索に当たりましたが該当する物質がみつかりません。>>
<<何が不味い?>>
<<夜光性塗料は放射性物質でした。ラジウムとか。あとはイエローケーキと呼ばれるような核廃棄物の類です>>
<<それは探してないね>>
<<その時代の更に先にある技術が蓄光と言われる技術でして、各種元素を混合させて金属類、有機物などにより、光の放出を長く強くする材料が開発されています>>
<<それを探していたんだけど?>>
<<私は物質の移動や具現化はできません>>
<<あ。抗生物質のときと同じ話か>>
<<日本語文献で良ければダウンロードしますが>>
<<いや、ごめん。私が悪い。浅慮を指摘いただきありがとう。ちょっと考える>>
いかん。これは、あれか。
ファンタジーの住人の炎の魔術を科学したらえらいことになったってやつか。
電源があって光るってのは、電球、蛍光灯、懐中電灯、水銀灯、LEDランプとか。ああいう機材は全部電気ー光のエネルギー変換をしてるんだよね。電池がコンビニや100円ショップのような店で手に入らないのだから、電気や電池を元に光変換する方法は使えないってことになるね。
電源がないのだから、燃やす系だよね。するとさっきの炎の魔術の話になって、例えば自分の老廃物を吹き飛ばしつつ、そこに着火させるとかの話になるわけよ。高温にする必要があれば、あればあるほど、引火点が高くなるし、燃焼の持続性が厳しくなる。だから火薬とかの発明がでてくるんだろうけど、ちょっと脱線しすぎ。
悔しいから、ちょっとピュアして老廃物を燃やしてみよかな。
<<近くのエーテルさん、ピュアした後の私の老廃物をもやしたいから協力して>>
<<ピュア>>
<<舞い上がった物を超高温処理>>
<ボワン>
あ、なんか上空で光った。
「おねえちゃん、なんかやった?」
「ちょっとやってみた」
「灯りが作れる?」
「まだ、考え中」
そうだね。
可燃物があれば、それを燃焼させることは出来そう。当然物質に応じた炎色反応が起こるってことで。温度もだけど、物質が複数混ぜ合わさってれば白っぽくもなるね。
炎の魔術師とか光の魔術師とか出てきて教えて欲しいもんだね。どうやってそのエネルギー変換をしてるか。
あ。生体化学反応で電気起こせるのが居るね。
カツオノエボシは電気クラゲではなくて、毒由来らしいけど、電気ウナギとかああいうの。確か荒木飛呂彦先生の<バオー来訪者>なんかも発電してたね。こっちか!こっちを世の中の魔術師たちはやってるのか?
<<ナビ、生化学反応で発電に関する資料を調査して>>
<<了解>>
<<それぞれの細胞内にある原形質膜に蓄電されており、それの向きを揃えて放電させることで高い電圧や電力を出力できているとのこと>>
ふむふむ。てことは~~~?
雷の魔法使いってのは割と難易度が低そうだね。細胞の発電させる向きを何らかの方法で揃えればいいんだから。ちゃんと皮膚の末端を保護しておかないとボロボロになりそうだけど、私はそうならないように何か考えてから使うようにしよう。
電気→光の変換は随分難易度が下がりそうだ。エジソンは日本の竹を炭にして、電球のフィラメントに使ったなんてのは有名な話。そこいらの金属に電気流せば光るわけだから、効率も問題だね。昔の白熱電球は耐久性が悪いからタングステンとか使うんだけど、それはそれでおいておこう。
じゃ、こんなイメージだね。
細胞の中の蓄電エネルギーを必要数直列にして電圧と電力をとりだす。
つぎに、その電気エネルギーを頭の方に持ってって、発行体に流す。
う~ん、今日は考えるの面倒だから前髪の方の一部でいっか。
電圧調整して、少しずつ電気を流してみる。
ほら、メッシュいれたみたいに髪の毛が光った。
髪がボロボロになっちゃうような電圧かけないけど、ま、何本かはいっか。
念のため、電気流す髪の毛を身体強化かけておこう。
「おねえちゃん、できた?」
「うん」
「きれいだよ」
「ありがと」
「ユッカちゃんもやる?」
「ううん。私は手だけでいいの」
ユッカちゃんは手のひらを光らせる。
なんか、もう1クッション私の考えが足りてないんだね。
いともたやすく手のひらから光をだしてるよ……。
結構くやしい。
さぁ、魔物退治だ。
誤字などの修正のみです。本ストーリーへの影響はありません。




