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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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5-48.上皇様の夢

「ウインザー国王ありがとう。さて、皆の夢を語って頂いた。最後にヒカリさんの夢を伺いたいのだが、その前に私の夢を皆に語らせて戴いても良いだろうか?」

「ハイ(ALL)」


「少々長くなるが、私の夢となる歴史的な背景を語らせて欲しい。


私の治めるストレイア帝国は約百数十年の歴史がある。その頃といえば、まだまだ獣人族やエルフ族の方達も多く、人族の立場も弱く、開墾や工業の発展を考えるよりも自然と調和した生き方を良しとして、妖精の力に依存した環境だった。


そのような環境で人族が生きていくには、魔物たちには力では敵わぬし、妖精との交流ではエルフ族の方達の方が上手く、人族の領地を確保し、子孫の繁栄をさせるに適した土地は限られていて、僅かな平原と荒涼とした砂漠しかなかった。豊かな森は獣による食料を得たり、木々の種子などから得られる恩恵を得ることが出来たが、人族は他の種族に比べて弱い。


そしてのその帝国の基礎を立ち上げるタイミングで、人族は<科学教>の助けを借りることになったのだ。体力にしろ、妖精召喚にしろ、人族は圧倒的に弱い。しかしながら、獣人族よりは真面目であり、勤勉であった。エルフ族よりは短寿命であるため、つねに豊かな生活を目指して、いろいろな改良を行った。


<科学教>は魔石を使うこともあるが、科学の力を技術として取り入れて、人手に頼らずに土壌を改善したり、灌漑をすることで、農地を広げ、生産性を豊かにすることが可能であった。


国としての生活基盤が出来てくると、人族は欲が出てきた。豊かな森林資源を占有している獣人族やエルフ族、そして鉱石が眠る山岳地帯への開拓者の派遣も行った。国の規模は開拓した領地により分割統治されることになり、小さな国々の集合からストレイア帝国が構成されることになった。


一方で、ドリアード様の加護を受けた女性を連れてくることで、砂漠の灌漑と乾燥地帯で育成可能な植物の育成が進められることから、小さな集落であった初期の領地が帝都と言われるまでに発展することができた。これは単に<科学教>の力だけではなく、領地を開拓してきた人々や砂漠の灌漑を行ってきた人々の力は大きい。


これが、ストレイア帝国が発展するに至った歴史であり、人族の努力の成果であり、自然や科学、妖精との係わり方である」


と、ここで上皇様は一息付く。

お茶をすすって喉を潤してから、再び語り始める。


「科学教の恩恵は大きかったが、負の面があった。それは技術料という名の徴税行為である。領地は拡大し、今まで開拓できなかった土地から収益を上がられるようになったのだが、その分が科学教を広めたアジャニアという国への納税額の増額へも繋がった。


すると、科学教の技術提供料は単純に農耕の改良だけでは達成できず、占領地を拡大したり、交易の名のもとに他の大陸から利益を徴収し、そしてこの地エスティア王国の鉱物資源に頼るようになっていた。


私の代では、帝都周辺では妻のシルビアのお陰で順調に灌漑と植林が進んだ。ロメリア王国ではナポルの港を中心に交易による収益が上がったと聞いている。ではあるが、ここのエスティア王国では、古来からの風土病があり、急速な発展が進まぬ状況である。かといって、占領した獣人族の領地は森林が深く、中々に人手で開拓が進んでおらず、そこからの税収も望めない。ではあるが、アジャニアへの納税も重くし掛かり、財政は非常に苦しい状況である。


そこに、約10年前に一人の救世主が現れたのだ。異国の地から来たトモコという。医療技術に大変優れていた。本人は『これは魔術ではなく、科学の力とこの地に住む妖精の力です』と申していた。

息子のハンスと懇意になり、結婚し、エスティア王国の鉱業発展のためにも風土病の解明に向かったのが、おおよそ5年前のことだ。


これが、私の治めるストレイア帝国の現状と家族の話である」


軽くため息をつくと、今度はそのまま続ける。


「今朝、ハンスとトモコの墓参りをさせて頂いた。これは私にとって複数の夢が同時に壊れたことを意味する。


1つ目、皇帝の交代によるハンスの台頭と、アジャニアへの対抗措置

2つ目、トモコの特殊な医療技術による風土病の撲滅と鉱業の発展

3つ目、南の大陸との交易による収益の改善


ヒカリさんがこれらの全ての夢を奪ってくれた訳だ。」


「あ、貴方……」

「ああ、シルビア、待つが良い」


「それでも私はこの帝国を治める者の父として、この状況を打破しなくてはならない。これは現実だ。夢でも希望でもない。

ここには開拓中の農地があり、海産物が得られるそうだ。だが、それは住人の食糧の供給としては有効であろうが、帝国の交易を発展させるまでの金銭的な価値は無いだろう。


メイドの領地ごっこであれば、それで構わないであろう。だが金貨1万枚を毎年集めなくてはならないのだよ。まぁ、ここ数年はアジャニアからの使者が来ておらぬが、到着したときには数年分をまとめて徴収されることになるのだろう。


お主が先日、皇后陛下と取り交わした契約書であっても、あれはエルフ族のステラ・アルシウス卿とドワーフ族のニーニャ・ロマノフ卿の元へと貢がれるものであろう?それだけでなく、両種族の重鎮に各種おねだりをして借金を抱えている訳であろう?」


なになに説教なの?夢の話はなんなの?

ちょっとイラっとしてきたよ。


<<ヒカリさん、最後まで聞きましょう>>


と、見かねてフォローの念話が入る。


<<お気遣いありがとうございます>>


と、危うく短気な発言をしてしまうところをグッと堪えることに成功したよ。マリア様には本当に感謝するしかないね。



「であるが、私には新しい夢ができた。それはユッカを女帝として擁立することである。


ユッカは血筋としては誰も反対を唱えることはできないであろう。

武力では軍神と呼ばれるにふさわしい力を持ち、サーガにも現れぬようなオリハルコンの剣を所有していることから、騎士団は全て従うであろう。


ユッカであれば、アジャニアへ進軍し、この経済的に制圧された状況から解放し、帝国を新たなる時代に導いてくれるのではなかろうか。そのような時代であれば、税金も少なくなり、農業、商業、鉱業もよりスムーズに発展することが期待できる。


ではあるが、ユッカ自身がそれを望んでおらぬし、ヒカリさんもそれを望んでおらぬ様子の発言が昨日の夕食会で伺えた。


ここで改めてヒカリさんに伺いたい。お主の夢はなんであろうか?と」


う~ん。

マリアさんは大体全部知ってる。ユッカちゃんも大体分かってるけど、私の返事次第って感じかな。残りの人たちは上皇様の発言を噛み締めて、私の領地ごっこを甘く見てたと考えてるかもね。




さて……。




「上皇陛下、帝国の歴史をご教授頂きありがとうございます。私の存じ上げない過去の辛い歴史と現状の課題を帝国に住まう1人の者として共有させて頂きました。


誤解があるかもしれませんので、予め申し上げておきますが、ハンス王子とトモコ王子妃は私がこの地に来たときには絶命されておりました。そのことは、私よりもこちらのユッカちゃんがご存じでしょう。


そして、異国の地に来て何も知らない、何もできない私を救ってくださったのが、こちらのユッカちゃんになります。


この大前提に疑義がある方がいらっしゃったら、先にご質問頂けますでしょうか」


すると、上皇様から発言があったよ。


「ハンスの死については、もっと情報を集めないと詳細については分からぬ。とりわけ、ハンスとトモコはアジャニアからの横槍が入ることも想定に入れて、完全に身元を隠して、放浪する冒険者として活動をしておったはずであるからな。これまで音沙汰が一切なかったのは当たり前である。


トモコの死については、ユッカから今朝の墓参の際に聞いておる。元々方向音痴であったり、考え事を始めると普通では考えられぬくらい熱中してしまい、周囲のことが目に入らぬことはあった。それゆえ、不慮の事故が起こったとき、かたわらに助けられる者がおらんのであったならば致し方ない。


異国の地から到着したばかりのヒカリさんがトモコを殺害する目的も意図も無いはずであり、トモコを山中で見つけて殺害した上でユッカを頼るというのは全てに矛盾がある。


そこまでを疑うのであれば、神に喧嘩を売るようなものであろう。他の者に疑義がないようであれば、私はヒカリさんに話を続けて頂いて構わない」


と、上皇様。

ふぅ。ここの前提は信じて貰って良いんだね。それなら話は楽なんだけどさ。一応、みんなの様子を確認するけど、他の人も上皇様の意見に対して、黙って軽く首を縦に振るだけで、問題はないってことで良いみたい。


「それでは話を続けさせていただきます。


私がこの地に来るまでは、父母の教育もあり、自由に物事を考えたり、物を作ることができる環境にありました。こちらの国でいえば、宮廷魔術師や錬金術師といった存在でしょうか。直ぐにその場で役に立つものだけを作れるわけではございませんが、行く行くは皆の役に立つような学問を習得することを得意としておりました。


ところが、こちらに来てユッカちゃんとお会いすることで私の全てが変わりました。」


と、ユッカちゃんの方を振り向くと目が合う。

うん。短い間だったけど、いろいろ冒険してきたもんね。

皆をぐるっと見渡してから、上皇様に視線を合わせて再度語り始める。


「私は、この地でユッカちゃんに助けてもらいました。生きるためのすべを学ぶことが出来ました。これは、こちらに来る前の自分の生活からは全く考えられない事でした。


そのような意味で、この土地で私が生きて、皆様とお会いして、ここで会話が出来ているのは、ユッカちゃんのおかげの他にございません。私は私が出来る範囲の全てをユッカちゃんに捧げてでも、お礼としては足りないでしょう。


そのため、私の夢は変わりました。

1つ目は、ユッカちゃんを幸せにすること

2つ目は、ユッカちゃんを支えるための生活基盤を整えること

3つ目は、私とユッカちゃんを助けてくれたこの国と協力してくれた皆様の役に立つ何かを提供できる人になりたいこと


この3つでしょうか」


と、上手く表現できたか判らないけど、そして抽象的な内容にはなってしまうけれども、自分の思いを皆に伝えた。

すると、私の発言を聞いて、一拍置いてから上皇様から返事があった。


「ヒカリさん、私はお主の夢を否定しない。それどころか協力できると考えているのだが、話を聞いて頂けるだろうか?」


「上皇様、何でしょうか?」


「うむ。

先ほど、私の夢を語ったとき、『ユッカを帝位に据えたい』と申した。そして、私にはそれを可能にする力がある。


一方で、ヒカリさんの望むユッカを確実に支えることができる基盤も帝都において、私なら提供が出来るということだ。ユッカが帝位につくまで、帝都で何不自由なく暮らせるようになるだろう。


更には、今回の現皇帝から下賜された<経済特区>としての指令書があるため、この地はエスティア王国にとっても安泰の地となる未来が見えておる。


如何であろうか?」


まぁね……。

だから、昨日の夕食会で『今はその議論が出来ません』って、言ったんだけどね。ハンス夫妻のお墓を見て、増々確信したんだろうね。『ユッカを必ず引き取る』って。


当然、シルビア様もユッカちゃんと一緒に暮らしたいわけだから、上皇様に異を唱えるよりは、流れに任せて上手く進むことを望むだろうし、エスティア国王やリチャード王子は全面的に賛成するだろうね。やっぱ、封建制度の上位国なわけだし。


マリア様は私よりの中立だろうけど、最終決定権は持ってない。とすると、ここは私が遅延策を提示するか、完全に上皇様の意見を論破するしかないわけだけど……。

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