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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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321/334

5-37.木こりの村を訪問しよう(2)

「「ヒカリさん、村長に会いに行きましょう」」


と、二人からの断りようがない説得力というか、圧力に押されて広場まで戻ることに。

広場に戻ると馬車というか、村外からのお客さんが珍しいのか、3-4人の奥様方が遠巻きに馬車を指差しながら何かを囁いている。無理して雑談に加わる必要は無いけれど、村長さんの住居は教えて貰わなくちゃね。


今日は村外からの客が多いだの、女神さまの知り合いが来てるらしいだの、そんな噂話を色々と聞かせて貰いながら、村長の住む家を教えて貰えた。広場の外れのちょっと大きめの一軒家らしい。早速行って見よう。


ーーーー


「すみませ~ん。村長さんはいらっしゃいますか?」


と、私が挨拶をする。


「う~ん。誰だい?村の外からのお客さんかい?」


って、例の帝都で露店を開いていたおにいさんが引き戸を開けて顔をだす。


「こんにちは。村長さんに用事があってお伺いしました」


「や、や、や・・。貴方は女神様でいらっしゃいますね?」

「あ、ああ、あああ。あれは……。嘘です!」


「ですが、衣装は変えても貴方は貴方です。そして後ろに控えていらっしゃるのは本物の<聖女様>ではいらっしゃいませんか?あのときと同じメイド服を召していらっしゃる」


「あ~。私が悪かったです。いろいろあって、この村を訪問させて頂きました。私が女神というのは嘘ですが、後ろにいらっしゃるのは本物の聖女様です。

今日はお忍びで村々を訪問されている中、村長さんに声をかけさせて頂いている次第です」


「我々の村のご神木に加護を与えに来ていただいたのでしょうか?」

「最初は露店で購入したアクセサリーが素敵で、みなで見学に来たんです。けれども……」


「何か、我々の作品に問題がありましたか?」

「いいえ。その<ご神木>について、少々相談したいことがありまして」


「やはり、一目で様子がおかしいことに気づかれましたか。ここの村人は大事に祀っているのですが、何をしたら良いかわからず、困っていたところなのです」

「ドリアードの加護を受けている聖女様も同様にお考えの様です。そして、エルフ族のステラ様もご心配の様子ですので、村長さんとお話をさせて頂ければと思いまして」


「つまり、ご加護を頂けるということでしょうか?」

「詳しくは、こちらのお二人から話を伺って貰えますか?」


って、シルビア様とステラに話を譲って、村長と3人で相談を始めるのを私は黙って見守る。


普通の村人にとっては、村長としての責任はあるものの、植物の加護があるわけではないので、神や妖精の加護を受けたり、伝説として名を馳せている人物の言うことは、信じるしかないよね。受け入れ難い現実と直面して、かなり焦燥しているよ。


「ヒカリ様、少々宜しいでしょうか」

「村長さん、なんでしょうか?」


と、村長さんは、私の名前を憶えてしまっている。

私の名前のことはどうでもいい。それよりシルビア様やステラの言うことを聞いた方がいいと思うんだけど?


「お二人のご助力により、村のご神木の最後を迎えさせてあげたいと考えたのですが、可能でしょうか」

「はい?」


「村長として決断が必要です。ですが、その決断をするタイミングを間違ってはいけません。お二人の助力が得られるなら、今からでも儀式を進めさせて頂きたいのです。

お二人がヒカリ様により導かれて、この村を訪問されているのは明らかです。ヒカリ様のご予定とご意向を確認する必要がございます」


「私は村の意向を確認した上で、最終決定をする必要があると思います。そして、シルビア様とステラは村の総意が得られれば、その意向に沿って、ご神木の処置に力を貸してくれると思います。

あとは、その儀式が終わるまで、どのくらいの時間が必要になるかを伺いたいのと、こちらでの宿泊が必要になる場合には、各所への連絡が必要になります」


「村の緊急集会は緊急事態を知らせる鐘を鳴せば、直ぐにでも開催できます。また、私から説明をすることで、村人達は現状と未来への方策を受け入れてくれるでしょう。

あとは、儀式の内容とそれに掛かる準備、終了時間がどのような内容になるかで、皆様のご都合が決まるかと思います」


そっか。そりゃそうか。

村長さん達だって、神木の最後を看取るような儀式は未経験だろうしね。シルビア様とステラにどういったことで、どれくらい時間が掛かるか直接確認した方が早いね。


「シルビア様、ステラ、どんな感じになるの?」

「儀式としてはシルビア様に伺った方が宜しいですわ。私はその儀式に必要なことを支援させていただきますわ」と、ステラ。

「ヒカリさん。ご神木をドリアード様の元に送るだけであれば、直ぐにでも済みますわ。

ですが、ご神木も村人たちへのお別れを伝えたいでしょうし、村人さん達もご神木とのお別れ会を開催したいと思いますわ」と、シルビア様。


「シルビア様、そのお別れ会とは、何週間にも渡って行われる儀式でしょうか。その様な場合には上皇様にその旨を伝えるか、あるいは旅支度をしに、一度お屋敷へ戻る必要があります」


「ステラ様のお力を借りられれば、今晩中に終えることもできますわ。ただ、その余韻に浸る時間が欲しいのでしたら、我々は村人さん達の思いに沿って行動すべきだと思いますわ」


なるほどねぇ。

儀式には時間を過ごす意味があるもんね。

手順を踏んで、それでお仕舞って訳じゃない。

繋がった心を一度切り離して、その思いを互いに心に残すには時間が掛かるよ。ただ、今の関所とか帝国との状況を考えると、村人の気持ちに十分に寄り添うことが出来ない……。

これは、科学とか魔法では絶対に解決できない問題だよ。


「ヒカリ様、宜しいでしょうか?」と、再び村長さんから声が掛かる。

「村長さん、何でしょうか?」


「ヒカリ様が気にされていることが、我々村人の思いについではございませんか?

我々は聖女様の立ち合いや加護が得られることはこの先無いでしょう。ですので、出来る範囲で支援して頂けるのであれば、どのような内容であっても、それを大切に心にしまう準備をして、別れの儀式に臨むことができます。

如何でしょうか?」


「村長さん、分かりました。私はこの村の皆様の気持ちを大事にしたいと考えているのですが、残念ながら私にはこの村に長く留まる時間がありません。そして、聖女様に於かれましても、この村のご神木の為だけに、こちらへ長期間留まることは、帝国内の情勢において問題となるでしょう。

村長さんが村人の総意としてご理解頂けるのであれば、今晩中に儀式を完了する形で進めさせて頂ければと思います」


「承知しました。では緊急集会を開き、別れの儀式を依頼すべきかどうか村民の総意を確認することとしたい」

「ハイ(3人)」


ーーーー


村人たちの集会を眺める傍らで、シルビア様とステラで何やら準備の相談を始めてる。

私もそういった知識があればいいんだけど、科学や魔法というより、儀式の段取りや手順なので、地場の文化や伝承を知識として持っていない私が話に加わることで、段取りの邪魔をしちゃ悪いよね。一々説明してくれてたら手間ばかりかかるもん。


だもんで、私はレイさんとアルバートさんに念話を通して、帝国内の様子を確認することにしたよ。

直轄地としての経済特区に関しては、順調に書類を整えているらしい。この件は、上皇様とトレモロさんが念入りに確認してくれているらしいよ。

皇后さまがオーナーを務める装飾店に関しては、皇帝陛下の下で暗躍しているサンさん達に依頼がきて、事実確認と工房との関係調査を行ったらしい。装飾店に帳簿が綺麗に残っていたので、調査がスムーズに進んで、何軒かの贋作工房と、ロマノフ家の代理人と称する贋作工房の制圧と関係者が判明したんだって。一味全体を捕縛するために電光石火の動きで進めているらしい。


そっか~。

帝都では、逆恨みとか私への怨恨が起こらずに、事が収束に向かっているみたいで安心したよ。

あとは、関所の方だけども、モリスとフウマが居れば大きな問題にならないと信じている。精々、留守中にリチャード王子がタコを獲って帰ってきたり、エスティア国王がお妃様と一緒に訪問するぐらいかな?


なんて風に情報収集と整理をしていると、村人の緊急集会に結論が出たらしく、村長さんから私たち3人(ハシムさんも居るけど)に声が掛かった。


「村に住む大人40名、子供20名の同意が得られました。皆様のお力で別れの儀式を執り行っていただけますでしょうか」と、村長さん。

「ハイ(3人)」


シルビア様とステラに導かれて村人が列を作ってついていく。私とハシムはニーニャとアリアと合流しつつ、事情を説明しながら末尾を付いていくことにした。


ーーーー


「では、これからご神木から皆様へ別れの挨拶をして頂きます。

最後の力を振り絞って頂くために、これからドリアード様の加護を媒介として、魔力を注入します。村人の皆様は少し離れた位置からご神木の変化を見て、感じてください」


と、シルビア様がみんなに宣言をすると、ご神木に左手を当てて目をつぶる。空いている右手をステラがやさしく握りこみ、じっと傍に立つ。これは、神器の斧に魔力を注入したときと同じで、ステラが膨大な魔力をシルビア様に注入しているんだろうね。


さて、ご神木にどんな変化が現れるんだろうね?急に成長したり、葉が生茂ったりするのかな?まさか、喋ったりすることは無いと思うけどさ。


この状態で30分ぐらい待ったかな?幹や枝の表面に花芽のつぼみみたいのが出来始めたの。これだけ太くて、年老いた老木の表面に花芽とか付かないと思う。


だけど、それが、どんどん増えていく。木の太さや高さもあるから、てっぺんの方の変化は見えないけれど、きっとつぼみが付いているんだろうね。


かなり、激しく汗をかいてるシルビア様と、汗だけでなく、息もぜぇぜぇと切らしてるステラが木から離れて、再び挨拶をする。


「皆様、ステラ・アルシウス様のおかげで十分な魔力の注入が終わりました。

あとは、ご神木自身の力で皆へご挨拶を頂けるそうです。静かに見守りましょう」


と、シルビア様。


するとね?

花が咲き始めたの。丁度、日本のソメイヨシノ系の桜みたい葉っぱ無しで花だけが満開に咲き始めるの。

村人たちから、ため息と感嘆の声があがる。

ワーワー、キャーキャー言わずに、じっと見守る様子は、一瞬たりともこのご神木の変化を見逃さないために必死なのかもしれない。

子供たちはぽか~んと、口を開けて木を眺めるばかり。


うん。これはファンタジーだよ。

日本にも滝桜等々有名な桜がライトアップされたりしてあるけれど、木の幹までが花に覆われることは無いし、どうしても根本のそばとてっぺんでは開花時期にずれがあるもんで、どっちかが未開花だったり、枯れ始めてたりする分布があるからね。


でも、このご神木の最後は違う。

本当に花に包まれている。そして直ぐには散り始めない。

風が吹かないのはご神木の力なのか、周りの風の妖精さん達が気を遣っているのか判らない。だけど、静かに村人とご神木の別れのときを見守っている。



花が散り始めると、実のようなものが落ち始めた。

全ての花が実をつけた訳ではないから、無数の実の絨毯爆撃をもらう事態にはならなかったけれど、それなりに大きな実が落ちてきた。

私は、周囲を重力遮断させて、実をふわふわと落下させてることで、村人への打撃の緩和と、実の受け取りやすさを支援したよ。

私も何個かもらって、小袋に収めておくことにしたよ。


実の落下が終わると、木がサラサラと崩れ落ち始めた。

水分がなくなって、栄養もエネルギーもなくなって、ぼそぼそなんだろうね。

村人の目への混入を防止するためか、破片のようなものの状態で崩れてきて、粉末のような木くずは散らからなかった。高さが腰の高さぐらいまで崩れたら静かに崩れ落ちるのが止まった。


村人はここまでの変化を目で見て感じて、

ご神木の最後を看取って、抱きしめ合ったり、泣いたり、十人十色の様でお別れを噛み締めていた。


わたしはね?<索敵>が発動していたもんで、エーテルの流れを捉えることができたの。

このご神木から大きなエーテルの流れが立ち昇って、空へ吸い込まれていく。吸い込まれた先が雲に溶けるのか、主神に召されるのか、ドリアード様の魂と混じるのかは分からない。

けれど、ここまで大きな神木だと、魔獣の中にある魔石のように、大きなエーテルの滞留があったのかもね。


良く見ると、帝都から一緒にきたメンバーで<索敵>が使えるハシムさんやステラは私と同じものを感じ取ってるみたい。シルビア様はエーテルが見えているかどうか判らないけれど、天に向かって両掌をしっかりと組んで祈りを捧げているみたい。


本当にこれでお別れの儀式が完了するんだね。

シルビア様が祈りを捧げ終わって、皆に振り返って挨拶を述べた。


「皆様、お別れの儀はこれで終了になります。ご神木は皆様への挨拶を済ませて主神の元へ旅立たれました。

ご神木の子孫となる種を今後どのように育むか、そして、ここにあるご神木の亡骸なきがらをどのように奉り、保管や活用されるかは村人の皆様に委ねられます。


今日に限って言えば、ヒカリ様とお仲間による支援もいただけるかもしれませんし、私も微力ながら手伝わせて頂くことも可能です。

何なりとお申し付けください」


パチパチパチ!

『聖女様、ありがと~』

『聖女様、すごい~』

『素敵なお別れ会をありがとうございます』


などなど、村人が夫々(それぞれ)の気持ちをシルビア様に拍手と一緒に伝えた。


「聖女様、我々のような小さな村のために自らご神木との別れの儀を執り行って頂き、大変感謝しております。村人を代表してお礼申し上げます。

また、ご神木の最後の木の実でございますが、我々村人で苗を育て、大切に奉っていきたいと思います。もし、差支え無ければ、聖女様達もご自由に収集頂きまして、お持ち帰り頂ければと思います。


最後に、こちらのご神木の亡骸に関しましてですが、我々はこのような大木を綺麗に切断する道具もなく、また特殊なコーティングによる保管の魔術を唱えることが出来る者もございません。もし、可能であれば、このご神木の切り株を年輪が残る形で何枚か板状に切断いただき、コーティングを施して頂ければ、子孫代々まで、皆様の名前とともに村で祭らせて頂ければと思います」


と、村長さん。


う~ん。

それくらいなら、ニーニャやステラなら簡単にやってくれると思う。

けど、みんなが良いって言うまで、私が勝手に返事をしちゃいけないね。


「ヒカリ、どうするんだぞ?」と、ニーニャ。

「ヒカリ様、助けてあげてください」と、アリア。

「ヒカリさん、私は切断はできませんが、コーティングはできます」と、ステラ。

「ヒカリさん、是非、村長さんのお願いを聞いてあげてください。」と、シルビア様。


「え?ええ?私なの?私が切断するの?」と、私。

「ヒカリ、神器の斧が無いんだぞ。切る道具があるのはヒカリなんだぞ。」とニーニャ。

「え?でも、ラナちゃんのコーティングのナイフならアリアも持ってるでしょ?」と、食い下がる私。

「ヒカリ様、私は小さなものを切断することは出来ますが、魔力をやいばとして、刃先から出して、刃が届かない物を切断することは出来ません」と、アリア。


「そう……。じゃ、他の木で練習させて貰ってからでも良いかな?」

「練習して上手く行ったら、ヒカリがご神木の切り株を切断するんだぞ」

「わ、わかった」


実際問題、生木なまきと、枯れ木の切り株では魔力の刃の流れが違うだろうし、私の魔力で出すやいばが、木の本体の切断面にどんなダメージを与えるか試したことないから、サッパリわからないんだよね。

ただ、まぁ、石切り場で10m角の石を切ることができたんだから、このサイズの大木なら切断自体は出来るんだろうけどさ……。


一方で、私がそういった切断方法をしないと、長手方向に2mもあるようなのこぎりを作って、それでジワジワと平らに切断を何回も繰り返すとなると、相当な手間暇がかかって、ご神木もどんどん傷むし、ステラにコーティングをお願いできなくなるから、正味の話で切り株の断面の板を保管するすべが無くなることになるね。


よし、やってみよう!

いきなり本番は怖いから、ちょっと離れたところにある直径50㎝ぐらいの木で試す許可を貰う。そいでもって、エイヤって感じで切断を試みると、あっけなく両断できた。そこそこな大木が倒れて来るもんで、慌ててみんなで逃げたよ。


次はご神木の本番なんだけど、失敗が許されないから、周囲のエーテルさんの協力もお願いしておこうね。


<<周囲に存在するエーテルさん達、これから光の妖精の長であるライト様によってコーティングされたナイフを用いて、魔力の刃によって、ご神木の亡骸を輪状に切断を試みます。

厚さ20㎝ぐらいで、きれいな断面になるように、魔力の刃のほとばしりを制御してください>>


と、目をつむって、念じてからエイヤって感じで、ご神木に向かって刃を走らせる。


でね?

刃とか出ないの。

音もしないし、光も風も起こらないの。

不発なの?ってぐらい、何も起こらなかった。


「ヒカリさん、大丈夫ですか?」と、ステラが心配そうに尋ねてくる。

「あ、ステラ。多分上手く行ったと思ったんだけど、何も起こらないね。

一応、エーテルさんにもお願いして、綺麗な断面で切れる様にお願いしたんだけどね。」と、私。


「ヒカリ、達人が神技で切断すると、切断面が判らない場合があるんだぞ」と、ニーニャ。

「ええ?いや、エーテルさんにお願いしたけど、今まで通りに刃を出したつもりなんだけどねぇ。いつもよりは、丁寧かもしれないけど」と、私。


「ヒカリさん、ちゃんと切れてますわ」と、シルビア様。

「ヒカリ様、触ってみましょう!」と、何だか嬉しそうなアリア。


ま、いっか。

切れて無かったら、いつも通りに刃を出してもう一回チャレンジだ。


村長さんや村人たちが見守るなか、私達が平然とご神木の切り株に近づいていく。それでもって、ちょっと切り株の上を押してみた。


なんと、スルッて感じで滑らかに動くのね。

それも丁度上から20㎝ぐらいの所でさ!

ちゃんと切れてたって訳ね!


「ヒカリ様、凄いです~!」って、大はしゃぎなアリア。

「ヒカリさんが、ハシム卿とカシム卿の軍勢を止めた軍神なのかしら?」と、シルビア様。

「「ヒカリだから」」と、平然として言うステラとニーニャ。


そして、唖然として口が塞がらないハシムさんと村人たち。


いや、あの、そんなさ?

このナイフが凄いのと、エーテルさんのおかげだからね?

アリアとかでもちゃんと教えれば出来ると思うし、ユッカちゃんならもっと凄い事ができると思う訳。

でも、まぁ、ここにはユッカちゃんが居ないから私が武術の達人ってことでも仕方ないか。


切り株の高さがまだ50㎝ぐらいの高さで残っているから、あと2-3枚は切り出せそうだね。皆がぼ~っとしてる隙に、ちゃちゃっと、15㎝ぐらいの厚さのを3枚ほど切り出して、地面スレスレまでの高さまで切り株を平らにしておいた。


当然、直径4mもある木材の断面そのままの板なんか、いくら乾燥してると言っても、相当な重さがあるから<重力軽減>を施して、4枚を積み重ねて村長さんの前まで運んだ。


「村長さん、こちらがご神木の年輪を示す亡骸となります。ステラのコーティングを施せば、当分の間は村で保存できるかと思います。例えば、次世代のご神木が十分立派に育つぐらいの年月は大丈夫かと。」


「ヒカリ様は、やはり先日お会いしたときに紹介されていた通りの女神様なのですね……。」と、村長さん。


まず、疑問符が付かない。

次に、断定でもない。

もう、信じ切って、感嘆の意を示す感じね。


「村長さん、念のためですが、私は女神ではありませんし、シルビア様のような聖女様でもありません。

たまたま運に恵まれて、様々な人達と交流して、加護を戴いたり、魔術を教えて頂いたり、武器を貰っただけです。」


「ヒカリ様、承知しました。この村に女神さまが聖女様と一緒に降臨されたことは絶対に秘密とします。周知徹底させますのでご安心を。」


全然話が噛み合ってないし。

っていうか、この手の<絶対の秘密>が漏洩しない訳がないんだよ。尾ひれはひれ付いて、吟遊詩人が酒場で弾き語るんだろうね。

あ、でも、そんな伝説なら信ぴょう性がないし、私がやったって同定されることも無いか。何かあったらシルビア様とステラのせいにしておこう。


「ヒカリさん、『またステラのせいにしよう』とか、思ったりしませんでしたか?」と、だんだんと私の考えを読むようになってきたステラ。


「ううん。だって、サーガの主人公はシルビア様とステラでしょ?大木を輪切りにするぐらい、誰がやってもいいじゃん?大丈夫だよ。」


「ヒカリさん、私がエルフ族の元に戻った時に、要注意人物として入国禁止にされていたら責任をとってくださいますね?」


「大丈夫じゃない?ステラを止める方法が無いくらいの伝説になってるから、スルーされるよ。」


「もう、いいですわ。帰国する時は必ずヒカリさんに同行して貰いますわ」


「ステラ、わかった。そのときは宜しくね。

で、村長さんも村人さん達も待ってるから、このご神木の板を持って、村の広場にもどろっか。」


軽くしてあるから、村人さん達でも持てるね。

みんなで輪のように囲んで持って広場へ向かったよ。

広場へ向かう道が狭いから、広がったまま通るのが難しかった様だけど、まぁ、みんなの気持ちを尊重する方が良いしね。


広場に戻ってから、ステラが全ての板に念入りにコーティングを施した。

これで儀式も後片付けも終わりだね。

いつもお読みいただきありがとうございます。

マイペースで続けさせて頂きます。

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